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終末の麻雀譚15

荒廃した世界で麻雀と出会った少年少女。
上達を目指しただひたすらに打ち続ける。

第18話

「なぁ、俺らって上手くなってんのかな?」
コジローが皆に問う。

「もちろんなってるとは思うが、おっさんの求めるレベルってどんなもんなんだろうな?」
ムサシが答える。

モーさん(仮)こと髭のおっさんがここを去って2週間ほどが過ぎていた。
そのモーさんが「麻雀がある程度まで上達すればサンシティーに連れて行ってやる。」と、要約するとこんな事を言っていたが、ある程度とはどの程度なのだろうか?

ちなみにサンシティーとはムサシ達がいる場所から東へ2週間ほど歩いた所にある、多少の電気などがあるイカした街だ。モーさんはもはやだと言っていた。

「おじさんが求めるレベルはわからないけど、こないだみたいに皆で役満ばっかり狙ってたらダメだろうね。おそらく。」
トムも答えた。

「でも役満アガったことなくて、上達したって胸張れるのか!?」
コジローはまだ役満一番手にこだわっていた。

「別に役満じゃなくてもアガったことない役なんてまだいっぱいあるよ。アタシまだチャンタってやったことない。」
シェリーは他の者に比べアガリ回数が少なかった。その分アガったことのある役も当然少ない。

「つまりお前はそのレベルってわけだ。その点俺は純チャン三色をアガったことがある。」
コジローがドヤ顔でほざく。

トム「でもその分コジローは放銃が多いじゃん。」

ムサシ「しかも純チャン三色も強引に作ったせいでフリテンだったしな。たまたまツモれたけど、俺もトムもテンパってたし。」

シェリー「そうよ。アタシが言いたいのは『アガった役の多さ』では麻雀の上手さ?強さ?は計れないんじゃないの?ってことよ。」

コジロー「アガった役でレベル決めないで何で決めるって言うんだよ!?」

トム「・・・点棒でしょ。」

シェリー「・・・点棒よね。そのためにやりとりしてるんだから。」

コジロー「…あー…点棒ね。」

ムサシ「よし、わかった!今まで南場が終わったら東場に戻したりとかテキトーにやってたけどさ、これからはちゃんと半荘くぎりで点棒数えて順位つけてやろうぜ!1位が3点、2位が2点…みたいなさ。」

トム「3位が1点、4位が0点か。面白そうだね!それで10回くらい勝負してみる?」

ムサシ「そうだな。10回もやれば誰が強いのかはっきりするだろ。」

コジロー「おもしれぇ。お前らに30点差つけてやるぜ!」

シェリー「バカね…。ルール上全員に30点差はつけられないのに。」

ムサシ「でも30点取られたらさすがに認めざるをえんよな。だって10連勝だぜ?」

トム「まぁ途中でルール変更とかしたくなっても、10回までは変更なしでやろっか!」

ムサシ「OK!じゃあ始めよう!」

ついに順位点をつけた長期戦が始まった。

いや10回勝負なんて全然長期戦ではないのだが、彼らには初めての試みで皆真剣に取り組んだ。

第1期  終末リーグの開催だ。

1回戦

東パツから軽く仕掛けて2000点を連続でアガるトム。

トム「真剣勝負だと誰もイヤミを言ってこないからいいね!」

コジロー「まぁお前のリードなんて、俺のアガリ一発でかわしてやんよ。」

2回とも放銃したのはコジローだったのだが彼は余裕に満ち溢れていた。

親をかわされたムサシとシェリーは黙々と牌に向き合っている。

東三局、トムの親番でシェリーがリーチ。トムはリードしているので親だがオリた。

放銃したのはコジロー。リーチピンフドラ1で4000点だ。※1飜1000点。3飜は4000点となる。

次局はトムがタンヤオのみの1000点。

その後コジローがツモアガリなどして、オーラスにはこの点棒状況となっていた。

シェリ 28000
ムサシ 23000
トム     31000
コジロ 18000

オーラスはコジローが親。

点箱とかは無いので、皆自分の目の前に点棒を置いている。
ムサシ「えーっと、トムが31000って言ってたっけ?とすると8000差か。満貫で同点。同点の場合どうする?」

コジロー「じゃんけんとかでいいんじゃね?」

ムサシ「じゃんけん!?麻雀の強さを競ってんのにじゃんけん?…まぁいいか、今回は。あとで解決策考えてみよう。」

シェリー「アタシは3000点差かぁ。現実的ね。」

コジロー「俺はアガリ続けるだけだぜ!」

トム「これさー、親ってトップになった時点で終わりでいいんじゃないかな。」

コジロー「なんでよ!?とことん親やりたいよ!」

トム「どうせどんなに点差をつけても貰えるのは3点なんだ。だったらすぐ次の回に行った方が良くない?」

ムサシ「だな。そうしよう。オーラスの親番はトップになったら終わり!」

コジロー「うーん、まぁいいよそれで!ホントはお前らが泣くまでやりたかったけどな!はっはっは!」

ムサシ「お前はまだラスなんだよ!!!」

コジロー「はっはっはっは!リーチだ!!!」

8巡目の親リーチだ!

「ぐっ…」全員が安牌を切る。

そしてコジローが牌山に手を伸ばし、一気に手繰り寄せた!

ダンっ!!

「一発ツモ!!!裏が…1枚!!!リーチ、一発、ツモ、ドラ…で…満貫か!!!」

トム「満貫だから…4000オールだね…。」

コジロー「はい、どうもどうも。あれ?これって…あートップになっちゃったかー。もっとやりたかったなー。」

ムサシ「うるせぇ!リーのみじゃねえか!!うまくいきやがって!!!」

コジロー「おや?ラスの子が何か言ってるなぁ。まぁしょうがないか、1点も貰えないんじゃあプリプリしちゃうよね。はっはっは!!」

ムサシ「うるせんだよ!早く次行くぞ!点棒よこせ!」

点棒をまた25000点に戻し、2回戦が始まった。

絶対に巻き返してやる!と意気込んだムサシだったが、似たような展開でオーラスを迎え、今度はシェリーが捲りトップを取った。

コジロー「ちっ。3着になっちゃったか。ん…?あれ?ムサシくん?君は…あれれ??」

ムサシは連続ラス。

しかもノーホーラのラスだった。

ムサシは立ち上がり
「明日だ!見てろ!明日こそ巻き返してやる!!」
そう言って帰って行った。

辺りはほんの少しだけ暗くなってきていた。

コジロー「いつもならまだやってるよな。これぐらいなら。」

シェリー「連続ラスがよっぽどこたえたんでしょうね…。」

トム「ムサシ…。」

三人は遠ざかる寂しげな背中を見送っていた。

連続ラスってこんなに人の背中を煤けさせるんだなぁ……、ああはなりたくないなぁ…と。

〈現在のポイント 2回/10回〉
コジロー  ・・・1着3着、4点
トム ・・・2着2着、4点
シェリー ・・・3着1着、4点
ムサシ ・・・ラスラス、0点 ノーホーラ

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