終末の麻雀譚18
荒廃した世界で麻雀と出会った少年少女。
彼らの行く先に光はあるか──
第21話
順位点を変更して始まった第2期終末リーグ(本人たちはこう呼んでいないが)。
前回の後半の勢いそのままに、ムサシが先行。
そこにトムの追い上げが入り最終戦までもつれるもムサシの優勝となった。
そしてすぐに第3回が行われ、連覇に燃えるムサシだったが最下位に終わった。優勝はシェリー。
「よおし!順番に優勝してるから次は俺の番だな!」
そう吠えるコジローだったが、第4回の優勝はトムとなった。
「なんでだよおおおおお!!」
コジローは悔しがったが、トムはこう言った。
「何回かやってみてわかったけどさ、やっぱ10回くらいじゃ分からないね。実力なんて。コジローが勝ってもおかしくないよ。」
「だろぉ?おかしいよなー。俺だけ勝てないなんて!」
コジローは下に見られてることに気づいていない。
しかしムサシは気づいていた。
トムは常に上位にいることに。
(結局トムがナンバーワンってことかよ・・・!!)
「ん?あれ・・・」
シェリーの声につられて皆がそっちを向いた・・・
人影が2つ、こっちに向かってくる。
「おーい!」
人影はこちらに手を振っている。
「あれ…モーさんじゃないか?」
「あの荷物とあの髭…間違いないな。」
「でも言ってたのより早くない?」
近づいてきた影は間違いなくモーさんだった。
その脇には髪ボサボサの少年。
「よう!お前ら!元気にしてたか!?」
一同「モーさん!!!」
「ん?そんな呼び方してたか?」
ムサシ「あ、いや。名前聞き忘れたからさ、盲牌のモーさんに決まったんだ。」
モーさん「はっは、そうか。俺の名前はモンジローってんだ。仲間からはモンジとかモンさんとか言われるな。」
ムサシ「近いじゃん!じゃあ俺らはそのままモーさんて呼ぶわ。」
トム「と、ところでこ、こちらは…?」
シェリーの後ろに隠れながらトムが言った。
久しぶりにおどおどするトム。決してその設定を忘れていたワケではない。
「ワイか?ワイは炎の麻雀打ち、エースっちゅうもんや。よろしゅうな。」
ボサボサはふてぶてしい態度でそう言い放った。
ムサシ「炎の麻雀打ち?それにそのしゃべり方…」
モー「ああ、西の方の言葉だな。態度は…まぁお前らに舐められないように背伸びしてんだな。」
モーさんはエースと名乗った少年の髪をさらにグシャグシャに撫でた。
トム「んで、おじさんはなんでこんなに早く?」
モー「ああそれが途中でこの子と会ってな、聞けば麻雀できると言うし、元々いた集落では一番強かったと言うんだ。」
コジロー「まさかこんな変なヤツの言葉を信じたのか?」
エース「おい!ワイが嘘ついとる言うんか!?」
コジロー「じゃあ麻雀で勝負するか?」
モー「まあまあ、強いかどうかは置いといて、この子がいた集落は麻雀打てる人間が結構いるらしくてな。行ってみたかったんだが、遠くて期限内に戻ってこれなそうだったんだ。だったらもういっそお前らを育てる方向でいこうかと。」
トム「なるほど。じゃあこれからしっかりと教えてもらえるんだね!」
ムサシ「おっさんがいない間もしっかり考えて切磋琢磨してたんだぜ?10回区切りで成績つけたりしてさ。」
モーさん「ほう、それはいい傾向だな。んで、誰が勝ってるんだ?」
ムサシ「今のところ4回やってトム、オレ、シェリー、トムが優勝かな。」
エース「なんや、俺に勝負ふっかけてきたコイツは勝っとらんやないか。」
コジロー「うるせー!お前なんかどうせその性格のせいで追い出されたんだろ!」
エース「な!?あほぅ!俺は…アレや!強すぎて追い出されたんや!う、嘘やないで!」
コジロー「追い出されてんじゃねーか!」
モーさん「ということで、時間がない。点数計算なんかもどんどん教えていこうと思うが、とりあえずサンシティーに向かいながらやろう。」
ムサシ「え?ということは…」
トム「全員合格…?」
モーさん「ああ。みんなで向かおう!」
コジロー「うおおおおお!!!」
全員でサンシティーに行けることに喜ぶムサシたち。
今日は準備をして、明朝出発ということになった。
そして明朝…
モー「よし、みんな揃ったな。出発する前に一応なぜ俺が麻雀できる人間を探していたか教えておこう。」
コジロー「麻雀できる仲間がほしかったんだろ?」
モー「ただそれだけならサンシティーの人間に教えてたさ。まぁ結局同じ事になってしまったがな。」
なんか難しい話になりそうだなとみんな感じた。
モー「実はサンシティーでも遊戯が求められててな、何かを『国技』にしようという動きがあるんだ。」
ムサシ「国技?」
モー「その国の代表的な競技ってことだな。スポーツとか。」
トム「それを決めることに意味があるの?」
モー「その競技者には生活保証がある。」
シェリー「生活保証?」
モー「つまりその競技をしているだけでお金なり、食糧や家なんかも貰えるってことだな。」
コジロー「すごいじゃん!」
モー「問題はその競技をどう決めるかだが、サンシティーには『王』と呼ばれる権力者がいるわけだ。その王様の前で競技を披露する。王様が面白いと思ったものが国技となるのだ。」
エース「てことは花札とか他の競技がライバル言うことやな。」
モー「そうだ。他にはポーカーとかトランプだな。国技と呼んではいるが、一つに決まるとは限らない。今後も追加されていくかもしれない。先のことはわからないが、俺はそれを麻雀にしたいと思ってる。設備や環境が整えば、必ず運動スポーツ系が食い込んでくる。運動系のスポーツは分かりやすくアツいからな。今はまだその環境にないから、狭い空間でできるものが求められているのさ。今回がチャンスだ!」
トム「王様の前で披露するんだよね。見てて面白いのかなぁ。」
モー「絶対に面白い。今度から5人になるから抜けてるヤツは周りをぐるぐる回って見てみろ。麻雀は見てても面白いから。その為にエースを連れてきたんだ。」
トム「でも王様に伝わるのかな?」
モー「だから伝える役、『解説』は俺がやるんだ。お前らの中の4人に打ってもらい、俺が王に説明する感じだな。」
トム「なるほど…。打つ方も説明もどっちも大事だね。変なことやると説明困っちゃうし。」
モー「そう。だからお前らにはどんどんレベルアップして欲しいわけだ。俺が思考を拾えるくらいには。」
ムサシ「なるほどねー。じゃあ外れる候補はコジローってことになるか。」
コジロー「なんでだよ!!!」
ムサシ「説明できないプレイは御法度だからな。」
モー「いや、そうとは限らない。アクロバティックなプレイも時には人の心を打つものさ。誰を代表にするかはこれから見ていって俺が最終判断するさ。」
その言葉に皆は燃えた。
モー「これからビシバシ鍛えていくからな。覚悟しろよ。」
一同「おうよ!!!」
モー「よし!じゃあ出発だ!!!」
モーさんの目的も分かり、またはっきりとした目標を持った少年少女。
この終末世界に麻雀は人々を照らせるのか───
彼らの挑戦は始まったばかりだ。
第1章 完
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