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終末の麻雀譚5

荒廃した世界で麻雀と出会った少年少女。
まだ入り口の段階ながら、その魅力に取り憑かれようとしていた──

第8話

ついにリーチを教わることとなった4人。
リーチ棒を出すために、点棒に代わるものを探していた。

「点棒って言うくらいだから、元々は棒状のものだよなぁ」ムサシは麻雀牌を見つけた場所の近くまで行こうとしたが、「とりあえずコレでいい?」とトムがポケットから何か取り出した。

ネジだ。

いろんなネジがあるが、4人分には全然足りなかった。

「まあいいだろう。練習だしな。もしお前らがコレ(ネジ)でやるのならもっと用意しなきゃな。」

「どれくらい要るの?」

「一人25000点持ちだ。」

!!!!???

「そんなに用意できるわけねえよ!!!一人25000?てことは4人で…いっぱいだろ!!」

コジローの反射神経にはたまげる。

「ん?何か勘違いしてるな。1万点棒と5000点棒、それに1000点棒と100点棒だ。500点棒もあると良いな。」

「あーなるほど。1万点棒2本と5000点棒1本でも成り立つ?」

「いや、麻雀の点数は1000点から48000点まであるんだ。その間には3900やら5800やら存在する。だから100点棒は必要なんだが…」

髭は少年たちの顔を見回し、続けた。

「まあそうだな。じゃあ1万点棒1本と5000点棒2本、1000点棒5本でやろう!細かい点数は無しだ!」

そしておっさんはネジに目を落とした。

「一人分はありそうだな。じゃあこの太いのが1万点、これが5000点、このちっこいのが1000点としよう。あとで全員分探すといい。」

そして再びみんな自分の場所に戻った。

さあ、話は戻ってシェリーの番だ。

「え~っと、リーチ?だったっけ。」

シェリーはおっさんに促されるままリーチ!と発声し、牌を横向きに置いた。

「さて、ここでリーチの説明をするが、リーチをかけると今後何を持ってきても手牌と替えることは出来ない。アガリ牌じゃなければツモ切りしなくてはならないんだ。」

「え?じゃあもう変化のない最終形でするってこと?」

トムは鋭い。

「そうとは限らない。最終形でかけるのは勿論いいのだが、さっきも言った通りリーチというのは役になるんだ。麻雀とは誰かのアガリが出たら終わり。最終形を待たずしてアガることも大事なんだよ。もたもたしてると他の人にアガられちゃうからな。」

難しい顔の4人。
それもそのはず。リーチ判断は麻雀に慣れてても難しいもの。そもそもリーチの仕組みを把握できてるかも怪しいが。

「リーチの話に戻るが、とりあえずこの娘(シェリー)はテンパイしてるってことだ。つまりこの娘が待ってる、欲しい牌をお前らが切ってしまうとこの娘のアガリになってしまう。と言ってもまだ『待ち』なんか絞れないだろうから自分都合で進めるんだな。」

「一つヒントをやろう。これはリーチの有無は関係ないのだが、フリテンって言うのがあって、自分が切ってる牌ではアガれないルールなんだ。つまりこの娘が切ってる東とか一とか8なんかはセーフってわけだ。」

「自分が欲しい牌切ってるわけないもんなー」

コジローは言う。

「それがそうでもないんだよ。上級者でもフリテンになることはよくある。これは後々わかるさ…。」

シェリー手牌
五六七②④12334599 リーチ

「そして僕だね。あっ。」

トム手牌
一二三五五五②③③⑧⑨南南  ツモ⑦

「これってテンパイってやつ?どうすればいい?」

「うーん、2択なのは分かってるよな?何を切れば何待ちか分かるか?」

「②か③ってことだよね?えーっと、その、待ちの枚数的には③切った方が良い。合ってる?」

「合ってる。あとは打点だな。南が役牌なのは分かってるよな?②を切って南でアガれれば点数が高い。麻雀ではこんな局面ばかりだ。アガリ易さを優先するか、打点を優先するのか。しかも今回の場合は他の人が先にリーチしている状況だ。どうする?」

「えーっと、リーチが入ってるからアガリ易さ優先の方が良い気がする。てことは③切り。これってリーチしないと役無し?」

「そうだな。役無しだ。」

「よし!リーチ!!!」

トムは元気よく発声した。

河に放たれた③。

シェリーがそれを指差しうろたえる。

「あ…えっと…アガリ?」

おっさんはニコリと笑った。

「そうだな。他人が切ったものでアガる時は『ロン』と言うんだ。ツモってきてアガった時はそのまま『ツモ』でOK。言ってみ?」

「ロン!!!」

「そして手牌を開く。そしてリーチして一巡内にアガると『一発』という役が付く。」

一発

そういえばジジイの言葉にも入ってた気がするな…

そういやツモも…

ムサシはあのじいさんの言葉を思い出していた。

シェリーが手牌を開いた。

確かに③待ちだ。

「それと慣れてから言おうと思ってたんだが、実は『ドラ』というものがあって、それを持っていると一役分の価値がある。こんな言い方をしてるのは、ドラそのものは役扱いにならないからだ。とりあえず捲ってみよう。この、親が取り出し始めた、逆側の3番目を捲る。2が出て来たな。ということはドラは『3』てことになる。出て来た牌の次の牌がドラだ。数字は1~9。9が出たら1がドラ。字牌は風牌と三元牌で分かれ、東南西北の順で北の次は東。三元牌は白發中の順番で中の次は白に戻る。今回はこのタイミングで捲ってしまったが、本来は開始時に捲るんだ。」

ドラ…

また難しくなってきた。

「じゃあ親のアガリを見てみよう。役はリーチと一発。そしてドラが2枚。さらにリーチの特典で裏ドラが見れる。さあ、ドラ表示牌の下の牌を見てみよう。」

シェリーは恐る恐る裏ドラを捲ってみた。

出て来たのは8。

つまり
五六七②④12334599  ロン③ ドラ3裏ドラ9

リーチ一発ドラ4

キョロキョロと落ち着かないシェリー。

呆然とするトム。

よくわからずにヘラヘラ笑うコジロー。

ムサシもヘラヘラしてみた。

「いきなりすごいな!これは跳満(はねまん)といって親は18000点だ!」

18000点!!!

いきなり衝撃の点数が出た。

呆然のトムに髭は言った。
「いや、仕方ないさ。君の選択は間違いじゃない。麻雀にはこういうのは少なからずある。というか、よくある。」

よくある、とはなんと極悪な遊戯なのか。

間違ってなくてもひどい目に会う。

そうか。麻雀とは人生なのだな。

ムサシがそんなことを考えながら、ふと横に目をやると、そこには涙を浮かべたトムの姿があった──

〈現在の知識〉
リーチ・・・役。手牌替えれない。裏ドラ見れる。

ドラ・・・持っとくとなんか良い牌。

親っパネ・・・人を泣かせることが出来る。

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