終末の麻雀譚13
荒廃した世界で麻雀と出会った少年少女。
今日も今日とて麻雀だ。
第16話
「あれから本当にアガれなくなったな。」
ムサシがコジローに話しかける。
「まぁなー。でもやっぱ高いテンパイが入るとワクワクするよな。結局アガれなくて悔しいんだけど。」
コジローは今の打ち方を気に入ってるようだ。
「でも手役の見逃しみたいなのは減ったね、みんな。」
トムが口を開いた。
「もちろん全部は追えないし、裏目もあるけどな。」
ムサシの言葉に皆頷く。
「そういえばさっきこんなのがあったんだけど、皆どうする?」
トムからのどうする?問題だ。
1246789二二五六④⑥
「ここに②とか⑧を引いたら?」
「え?一通だから要らないだろ?ツモ切りじゃね?」
コジローはもう手役派だ。
「もちろんその手はあるよね。」
トムが答えた。
いやそれ以外ないでしょ?これ何の問題?という表情のコジロー。
「いや、他にも手はあるな。タンヤオに向かうんだな?」
「いやいや、一通は2飜でタンヤオは1飜だろ!一通の方が良いでしょうよ。どうせカンチャンばっかりだし。」
「どうせカンチャンばっかりだから、鳴いていくことも考えるのさ。鳴いてしまうと、一通もタンヤオも1翻だろ?」
「あー、鳴きねー…」
基本、ツモは気合いでなんとかなると思っているコジローは鳴きを意識していない。
「そうなんだよねー。実はこれ本当は上家から3が出たんだ。②とか⑧のこと聞いたのはみんなの意識というか考え方?を聞いてみたくて。」
1246789二二五六④⑥ 出る 3
「これどうする?」
「いや鳴くという考えがないわ。」
「コジローはそうだろうね。実際それも一つの選択だよね。」
「トムは確か123で鳴いてたよね?」
「そう、姉さんよく覚えてるね。僕も一通に意識が引っ張られてて、特に何も考えずに123でチーしたんだ。」
「まぁ別にいいんじゃねえの?」
「別にいいんどけどさ、鳴いたあとに234で鳴く方法があったなぁって。その方がアガりやすそうだなぁって。」
「確かに鳴くならそっちの方が良いかもしれないな。自分でツモったんなら、まだ一通見たいけど。」
「ムサシの言う通り、自分でツモった場合と他から出て鳴く場合じゃ、同じ牌でも打牌選択が変わることもあるんじゃないかな?って思ってみんなに聞いてみたんだ。」
「なるほどなー。俺は鳴かないからよくわかんねぇや。」
「鳴かなくても思考の準備は必要さ。コジローはこれ、⑤引いたら何切るの?」
1246789二二五六④⑥ ツモ⑤
「そっちでメンツが出来ちゃったら五六切るしかないだろ。」
「それはまずいな。」
「まずいわね。」
「うん、非常にまずいね。」
「なんだよお前ら!みんなして!まさか二切るの?嘘でしょ?」
「いや1を切るんだよ。」
「はあ?一通なくなるじゃん。タンヤオも確定じゃないぜ?」
「いいんだよ。」
「何がいいんだよ?役が見えるのにリーチのみを打つ気か?」
散々愚形リーチのみを打ってきたコジローの物申し。
「あんたバカね。リーチのみになんかならないわよ。ちゃんと考えてみて?次に何を引いたらテンパイするのか。」
「ああん?1切ったらこの形だろ…?」
246789二二五六④⑤⑥
「あーそうか。四七引いたら9切ってタンヤオにするってことだ。でもそれだったら一通の方が良くないか?」
「四七を先に引いたらそうだね。でも35を先に引いたらリャンメン待ちだよ?」
「でも5だったら結局タンヤオなくなるじゃん。」
「でもその分三色が出来るかもしれないよ。」
「!!?」
コジローは驚きを隠せなかった。手役を見落とすまいと励んでいたはずなのに。。。
「だから四を引いた時も、2を切って三色にするか、9を切ってタンヤオにするか選べるのよ。」
246789二二四五六④⑤⑥
「僕が思うに、後々まで選択肢が残っているというのがかなり重要だね。」
皆トムの言葉に耳を預けている。
「色々考えてても何も引けず、やっと引いた頃には状況が変わってたりする。その時に、状況に合わせてどうするかを選べた方が最後まで戦えると思うんだ。」
「そうだな。コジローみたいに一通とかに決め打ちするのも上手くいけば武器になるだろうけど。今回の選択はまずかったな。」
ムサシが諭す。
「た、確かに一通に拘るのは良くなかったかもしんねー。でもそもそも俺の話じゃねーだろ。トムも3を123で鳴いたんだよな?」
「う、うん…」
「そしてどうなったんだ?」
「確か四もチーして、その後ムサシに満貫打ってたわね。」
「ぎゃはは!トムダメじゃん!」
他人の放銃にはしゃぐコジロー。いや、お前も見てたはずだが?
「うるさいな!失敗から学ぶこともあるんだよ!」
トムは顔を真っ赤にして言い放った。
〈現在のみんな〉
トム・・・鳴きを解禁されるも失敗続き。色々試している。
コジロー・・・門前中毒。気付き力低め。迷子。
シェリー・・・アガリも放銃も少なめ。局面をよく覚えている。
ムサシ・・・バランス型。という名の半端型。
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