終末の麻雀譚14
荒廃した世界で麻雀と出会った少年少女。
麻雀は再びこの世界に根付くのか。
第17話
「役満っていつ出るんだろうな。」
ムサシがふと呟いた。
「確かにねー。まだテンパイにすらなったことないや。」
正直トムはあまり意識したことがなかった。
「俺は白と發はよく来るんだけどな。中がなかなか来ないのよ。」
コジローらしい意見だ。
「さすが最高役ってとこね。誰が一番最初にアガるかな。」
シェリーのこの発言で、男たちの心に火が点いた。
一番・・・!!!
「よぉし!俺は今日は役満しか目指さない!」
コジローが宣言した。
トム「無理に目指したって無理でしょうよ。結局タネがないとできないんだから。」
コジ「いいや、役満って結構種類あるからな。何かしら目指せるっしょ。」
ムサシ「まぁ、好きにしたらいいさ。最初にアガるのは俺だけどね。」
「「「よおし!勝負だ!!!」」」
3人が声を合わせて勝負が始まった。
「ア、アタシはやらないからね!むしろ周りが役満狙いだとどんな感じなのか体験するわ!おそらく普通にやってればアガリやすいはず!」
ナイスシェリー!こういうのが一人いれば、この日も得るものがありそうだ!
始まった東一局。
「ポンっ!!」
勢いよく仕掛けたのはトムだ!白のポン!
「ポンっ!!!」
こっちも元気にポンだ!ムサシが南をポン!
そこから膠着状態が続く。
それもそのはず、男どもは字牌を集め、普通に進めて字牌から切っていたシェリーもかなり行きにくくなってきた。
結果は流局。
全員ノーテンだった。
次の局も似たような感じで流局。
「なるほど…。こうなりますか。ちなみにだけどさ、君たちは何の役満を目指しているんだい?」
ムサシの問いかけに目を合わせるトムとコジロー。
トム「まぁ大三元とか字一色とか。字牌集まるとキレイだもんね。」
コジ「俺も字牌系だな。てか他に何があったっけ?」
ムサシ「俺も字牌系だわ!全員でやったらさすがに無理だろ!配牌をちゃんと見て、近いやつを目指そうぜ!」
コジ「そうだな。で?他に何があったっけ?」
トム「おじさんが役満の中では出来やすいって言ってたのは、大三元、国士無双、四暗刻だったと思う。」
コジ「あー、はいはい。思い出しました。国士無双と四暗刻ね。そーゆーの得意です。」
一回もやったことないのに得意とは。
ムサシ「シェリーには普通に打ってもらうとして、ね、字牌とかあんまり絞らないでね?」
シェリーは「はいはい勝手にやって下さい」という態度で頷いた。
そして再開。
「カンっ!!!」
親のコジローがいきなり1巡目から白を暗カンした。
「早々に誰かの国士無双を消しとかないとな。ふはは!」
コジローはみんなの役満を潰したつもりでニヤニヤしている。
するとシェリーが…
「あれ…?これ…?」
手牌をパラパラと開いたシェリー。
一三234567⑤⑤⑤⑧⑧ ツモ二
なんと最初のツモでアガっている。
「これってアレじゃない?なんだっけ!?最初にアガるやつ!」
先程と打って変わってハイテンションのシェリー
コジロー「地和ってやつだ!!!すげー!!!」
ムサシ「こりゃすげー。まさかシェリーが一番乗りとは…。無欲の勝利ってやつか?」
シェリーはキャーキャーはしゃいでいる。
トム「いや、これって確か…」
そう、自分のツモ番の前にカンなど鳴きが入ると地和にならない。つまりこれは地和ではなく、ツモのみの300,500となる。
「おいこらテメー!!!何してくれとんじゃ!!!」
コジローの暗カンに激ギレのシェリー。
ツモった二をコジローに投げつけた。
トム「姉さん、気持ちは分かるけど道具は大事にしよう。」
ムサシ「そうだぞ、麻雀牌は貴重なんだ。それに正式には地和じゃなくても、地和が出ることは証明できたじゃんか。すごいよ。」
「そうだぞ!麻雀牌は貴重なんだぞ!」
飛んで行った二を取りに行っていたコジローが帰ってきた。
「まぁこれでまだ役満一番乗りのチャンスはあるな!ナイスカン俺!!あ、ほらよ、1000点。」
1000点をツモアガった場合は親の1000点払いとしていた。
親だったコジローが1000点相当のネジを差し出した。
「ほれほれ」
「キエー!!!」
シェリーはそれを奪い取り、思いっきり放り投げた。
「道具は大事に…」
と言おうとしたムサシとトムだったが、「ネジならいいか」と思った。
コジローはキエー!!!と言いながらネジを取りに行った。シェリーはさらに石を投げた。
〈現在のみんな〉
コジロー・・・役満狙い
ムサシ・・・役満狙い
トム・・・役満狙い
シェリー・・・もう役満狙い
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