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終末の麻雀譚16

荒廃した世界で麻雀に出会った少年少女。
ついに勝ち負けを記録し始めた──

第19話

次の朝、いつも一番手のトムがいつもの場所に行くと、すでにムサシがそこにいた。

よっぽど昨日の2ラスがこたえたのだろう。
麻雀牌を並べ、一人麻雀をしている姿は哀愁が漂っていた。しかしながら早めに来て牌理の勉強をするムサシには安心感を覚えたのだった。

一緒に高みを目指してくれる仲間だ、と。

トム「おはよう」

ムサシ「ああ、おはよう」

トム「一人で勉強?」

ムサシ「まあな。今日は昨日みたいにはいかねぇよ。」

ムサシの対面に座るトム。

トム「あれ?昨日あんまり寝れなかった?」

よく見るとムサシの顔にはクマができていた。

ムサシ「う…。まぁな。ずっと色々考えてたんだ。アレが良くなかったのか?それともアレが…ってね。だけどわかんなかった。」

トム「難しいよね。モーさんも言ってたと思うけど、こっちが間違ってなくても理不尽な結果になることあるって。でも本当に間違ってなかったのか考えることはとても大事なことだと思う。ムサシがもし変なことしたら、遠慮なく指摘させてもらうよ。そっちも宜しく。」

ムサシ「だな。それが切磋琢磨だよな!」

二人は目を合わせニヤリと笑った。

そこに残りの二人もタイミング良くやってきた。

コジロー「やぁやぁ諸君、お集まりかね。おや?早く来て勉強かい?精が出るねぇ。」

シェリー「この時間から始めたら今日中に10回終わっちゃうかもね。」

トム「そうだね。もしかしたら終わるかもね。そしたら第1回目のチャンピオンが決まるわけだ。」

初代チャンピオン…

良い響きだ。

コジロー「ムサシ君は頑張らないとなぁ。だってまだ0点だもんなぁ。ぷぷぷ」

ムサシ「…」

ムサシはコジローの挑発を無視して瞑想していた。

シェリー「あんたのそのキャラはなんなのよ。昨日たまたまトップ取れただけのくせに。」

コジロー「おやおや、面白いことをおっしゃいますなぁ。まぁ10回勝負が終わる頃にははっきりとしているでしょう。俺が一番だとね!!」

トム「いいよもう。早く始めよう!」

ジャラジャラ…。

ムサシはいつになく真剣だった。
ある種この麻雀会の発起人である自分が、こんなに不甲斐ない結果でいいのかと。
いや、いいはずがない!!!

しかし麻雀とは残酷なもの。

ムサシの想い虚しく、苦しい展開が続いていた。

トム「ツモ」

シェリー「ツモね!」

コジロー「ツモだぁぁあああ!!!」

三人にツモられまくり、オーラス。

親はコジローだ。

コジロー 32000
シェリー 29000
トム         28000
ムサシ     11000

一人だけ蚊帳の外状態。
跳満をツモってもラスのままという始末。

配牌も悪い…。

一三六七13②⑧⑨東白發中

ムサシ「くっ…(国士無双でも狙うしかないのか・・・!?)」

第1ツモを取ってみると中だった。

その次は白。

その次は…

ムサシ「(んん…?)」

しばらくしてシェリーが白を切った。

それをムサシが「ポン!」

トム「(ほとんど条件のないムサシがポン…?)」

コジロー「最後だけでもアガっておこうってか?」

コジローがそう言いながら發を切る。

ムサシ「ポンっ!!」

白と發。2つ鳴かれるとさすがに皆気づいた。

コジロー「え?まさか…」

ムサシがツモ牌に力を入れる。

特に盲牌が出来るわけでもないのにグリグリと。

ムサシ「ツモだぁぁあああ!!!」

力強くツモった牌は八だった。

一一六七中中中 ツモ八   ポン白 ポン發

ムサシ「大三元!」

トム「おおおおお!!!」

シェリー「すごい!」

コジロー「すっげぇぇえええ!!」

初めて見る役満に皆が興奮していた。

ムサシ「いやもう配牌が悪くてよぉ。しかも倍満以上じゃないと意味なくてよぉ。」
ムサシは上機嫌でしゃべり出した。

トム「確かにこういう状況だったからこそ、かもね。ムサシは大きくアガらないといけない。僕たちはトップ争いで気にせず急ぐ、みたいな。」

ムサシ「なるほどなぁ。みんなで狙ってた時には全然出なかったもんなぁ。」

3回戦はムサシの大三元ツモで幕を閉じた。

ムサシの嬉しい初トップ!そして初アガリ!

さらには役満一番手の称号まで付いてきた。

トム「ムサシがトップで3点…と。そして姉さんが2位で僕が3位。コジローがラスだね!」

コジロー「やってらんねぇ!! 」

コジローはオーラストップ目だったにも関わらず、親かぶりでラスに落ちた。

トム「でもやっぱりアレはコジローのミスだと思うから仕方ないね!」

コジロー「なんでよぉ!?」

トム「ムサシは倍満以上をアガらないと意味ないのに、白をポンしたんだ。それを考えたら發は簡単に切ってはいけなかったのさ。どうせテンパイでもないでしょ?」

コジロー「な!?て、テンパってっし!!こっちだって役満だったし!」

コジローは明らかな嘘をついた。

トム「まぁでもおめでとうムサシ!大三元すごかった!これで面白くなってきたね!」

第1期 終末リーグ、あと7回。

〈現在のポイント 3回/10回〉
シェリー ・・・3着1着2着、6点
トム ・・・2着2着3着、5点
コジロー ・・・1着3着ラス、4点
ムサシ ・・・ラスラス1着、3点



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