エリオは密かに他の2人の女性に子供を産ませ、大家族を作り上げた ー 今明かされるグレイシー一族誕生秘話

この記事は、2021年12月29日付、MMA Fighting掲載の記事、『Rickson Gracie explains how infidelity — and a well-kept secret — helped build Gracie’s ‘clan of fighters’』の抄訳である。

ホーレス、ヒクソン、ホイス、ホイラー、ホリオン・・・あの世代のグレイシー一族がいなければ、現在のMMAは少なくとも今の姿にたどり着いていなかったかもしれない。

しかし、ヒクソン・グレイシーは、あれだけの「格闘一族」を築くことは、不貞が行われなければほぼ不可能だったと明かす。

カーロス・グレイシーは、7人の女性との間に21人の子供をもうけた。弟のエリオ・グレイシーは、妻のマルガリーダとの間に9人の子供をもうけた。これが、これまで何十年にもわたって世間に伝えられてきた公式ストーリーである。

ところが、一族が輩出した最高のファイターの一人であるヒクソンは、昨年発表した自伝『Breathe: A Life in Flow』の中で、マルガリーダが妊娠できない身体だったため、自分の産みの母親は実はイザベルという名の乳母(うば。住み込みの子守)だったことを明らかにした。MMA Fightingのポルトガル語版ポッドキャストTrocação Francaで、ヒクソンは自分の家系について語っている。

「おじと父は格闘一族を作ろうと計画していたが、それは妻1人、子供2、3人という通常の核家族の枠内では無理な話だった」とヒクソンは明かす。そのため、「カーロスは 6回結婚した。父は1回しか結婚しなかったが、密かに他の2人の女性に子供を産ませ、大家族を作り上げた」。

「どこかの時点で明らかにされるべき真実なんだと思う」とヒクソンは付け加えた。「生まれたときの自分はそんな事実は知らなかった。私にとってはいつもマルガリーダが母親だったし、それ以外のことなど思いもよらなかった。16歳まではそんな具合だったんだ。でも、点と点をつなげて物事を理解することができるようになると、本当の母親は、父が長い間雇っていた乳母だということを悟るようになった。マルガリーダの合意の上で、父とイザベルは3人の子供を作るという計画を立てていたんだ」。

出生証明書やその他のあらゆる書類では、あくまでマルガリーダ・グレイシーが母親として記載されていた。「ところが実際には、それは事実ではなかった」

UFCの共同創設者であるホリオンとその弟のエウソンも、マルガリーダではなくイサベルの子供である。しかし、ホイスやホイラーら、エリオの他の6人の子供たちについてはそうではない。

「私が12歳の頃、父から、もっと兄弟が欲しいかいと聞かれた。私は、はい、ほしいですとと答えたが、思えば奇妙な質問だった。」ヒクソンは述懐する。「フラメンゴの自宅から車でボタフォゴにあるアパートに行った。6階の部屋の扉が開くと1人の女性が現れ、その後ろから子供たちが姿を見せた。その時は4人いた。ホウケル、ホイラー、ホイス、そしてへリカだ。リッチとホビンはまだ生まれていなかった」

その女性とは、リオデジャネイロのグレイシー・アカデミーで働いていたヴェラである。

エリオとヴェラ、出所 http://emiratesone.blogspot.com/2007/03/helio-gracie.html

エリオが、「この子たちはみんなお前の兄弟だ」と私に言った。私は驚いたけれど、それは嬉しい驚きだった。しかしマルガリーダにとっては、その4人(後に6人になる)の子供のことは合意もしていなかったし、知らされてもいなかったんだ。」

当時、エリオはすでに格闘技業界でもブラジル社会でも、広く尊敬を集める存在だった。マルガリーダは夫の不貞行為を隠すために、最初の3人の子供について、枕をお腹に入れて妊娠したふりまでしていた。ヒクソンは、ヴェラとの間にできたほかの子供たちがマルガリーダをどれほど傷つけているかに気づき、父エリオに失望した。

エリオとマルガリーダ 出所 https://valentebrothers.com/blog/2009/12/11/brazilian-senate-will-pay-tribute-and-honor-helio-gracie/

「マルガリーダはとても落ち込んでいた。さぞかしトラウマになったと思うよ。父に対しては、軽蔑とまでは言わないにせよ、それに近いザワザワした気持ちになった」とヒクソンは語る。「母は歳を重ねるに連れ、気難しくなり、憂鬱になっていった。自分が夫を満足させられなかったことへの悲しみ、結婚生活に失敗したとの思いが募ったのだろうと思う。自分はそんな関係性のパートナーをつくるまい、と心に決めた。私が何をしているのか、妻が知らないような弱い絆ならいらない。このことは、私の将来にわたって反面教師になった。私は概ね父を自分の見本にしてきたし、才能あふれる人だと思っているけれど、母との関係においては、人間的に欠如していたように思う」

真実を知った後もヒクソンは、産みの親であるイザベルと連絡を取り合っていたというが、イザベルも事実を公にするのは気が進まなかったようだ。

「唯一、私からそのことをイザベルに話してみたのは、私がすでに結婚していた2006年か2008年のことだったと思う。イザベルは、自分の家族もまだ誰もそのことを知らないと言っていた。彼女が事実を伏せたがっているのだから、何も今さら自分が新しい息子だと申し出ることもないだろうと思っていたんだ。だから今、そのことを明らかにするのは、イザベラに対してちょっと申し訳ない気持ちもある。これで我々の間にいい距離感ができることになるだろうと前向きに考えているんだ」

(訳注)イザベルの写真は検索しても見つけ出すことはできなかった。イザベルは黒人であるとされる。



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