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子どもの頃、夜空にはたなびく煙のような天の川が流れていた

 都市部では見ることができないけど、夜空には2,000億個の星々が流れる河がある。そして、その中の明るい星々が形作る星座がある。
星座にまつわる物語はいっぱいあるけど、その大半はギリシャの神々を主役にした物語だ。しかたない、星座をつくったのが古代ギリシャの人びと、ヒポクラテスとかプトレマイオスとかだから。

 今年の夏は終わってしまったけど、ボクらにとって身近な星の物語に「七夕」がある。「星まつり」とも言う。
 東アジアの国々に古くから伝わる祭りで、国や時代によっていろいろな物語があるんだろうけど、これはそのひとつ、中国の南北朝時代、5世紀頃のお話だ。

 その昔、機織りに励む織姫と働き者の牽牛がいた。二人のおかげで人びとは衣食に満たされ豊かな日々を送っていた。天帝はそれを好ましく思い、ふたりを結婚させることにした。ところが…

「恋」は、労働を凌駕する

 結婚した途端に二人は機織りも牛飼いもやめてしまった。衣食が満たされず、人びとの暮らしは貧しく荒んだものになってしまった。
 困った天帝は、二人を川の東と西に離れて住まわせることに。そして、年に一度だけ、カササギがつくる橋を渡って逢うことを許した…。

東洋の神は優しい

 これがギリシャだったら、織姫はとめどなく糸を吐く蚕に、牽牛は終わりのない鋤を引く牛にされてしまっただろうね。
 例えを幾つか挙げるとね、織女アラクネーはアテナーとの織物競争に勝ったけど蜘蛛にされてしまったし、髪の美しさを競ったメデューサは髪を蛇に変えられてしまった。

ヨーロッパの神々は嫉妬深く残忍だ

 先に紹介した七夕の物語は、中国の古い習わしがモトになってる。「乞巧(巧になることを乞う)」つまり、器用な手先を得て良き縁に恵まれることを織姫に祈ったという風習だ。ものすごく現実的な人生観が背景にはあるんだけど、それがいつしか星々に想いを託して語られるようになった。

 こと座のベガ(織姫・織女)、わし座のアルタイル(彦星・牽牛)、白鳥座のデネブ。天の川を挟んで「夏の大三角形」をつくる一等星たちだ。都市の夜空でも見ることができる数少ない星だよ。
 星々は変わらずいつもそこにあるから、天空の住人たちのアバターとしては最適だよね。

日本では、短冊に願いを書いて笹竹に結ぶ

 折紙で作った人形(ヒトガタ)に願いを書いて川に流すとか、地方によっていろいろな祈願のカタチがあるようだけどね。ボクが子どもの頃を過ごした町では、願いごとを結んだ笹竹を集めて七夕の夜に燃やした。
 願いごとが空に立ち昇って、天の川の織姫や牽牛に届く…、そんな意味が込められていたんだろう。

 梅雨明け間近の夏の夜、夜空を横切る天の川、闇を照らす大きな焚き火、水飴や綿菓子の屋台、親公認の夜遊び…、ボクの七夕は、願いごとよりそんな記憶で満たされている。

遠い夏の日の思い出だよ。


#星まつり  #七夕 #天の川 #織姫 #彦星 #夜遊び

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