東京都渋谷区 市川房枝記念展示室
こんにちは。今日は市川房枝さん(1893年-1981年)についてお勉強します。展示室がある建物は婦選会館といい、場所は新宿駅南口から徒歩10分ほど。大通りから小さい道に入ったつきあたりにありました。
「婦選」とは女性の参政権のこと。市川さんは大正時代から女性の参政権の実現を訴え、戦後は国会議員となり女性の地位や権利の向上に尽力された方です。この方(↓)。26歳から87歳でお亡くなりになるまで活動されました。笑顔と真顔が両方素敵です!
展示室に入ると市川さんの演説が聞こえてきます。市川さんが婦選運動の拡大を目指して制作したレコードです。1931年に「婦選の話」としてオデオンレコードより発売されました。7分ほどの演説がほんとすばらしい!!力強い声にひきこまれてしまいます。ぜひ聞いてほしいのですが、youtubeには見当たらず。。。おっしゃっていたのは例えばこんなことです。
・婦人がいくら家の中を掃除をしても、一方で町がきたなければしょうがない。
・婦人がいくらよい子を育てても、一方で芸者宿や遊郭を作られてはしょうがない。
・男性のみで法律を作ると、知らず知らずに女性や子供に不利なものができる。
・婦人が参政権をもてば、これまで家を守ってきた婦人が国を家の延長と考えて国を守るようになる。
・だから、婦人が参政権をもつことは重要である。婦人参政権とは、1 国会議員の選挙権をもつ狭義の参政権、2 地方自治体の議員等になる婦人公民権、3 政治団体を立ち上げる婦人結社権からなり、その中で最も重要なのが国会議員の選挙権である。
なるほど!、って感じです。ただやっぱり文字だけだとあの説得力が伝わらない。。。ので、youtubeにあったTBSの市川さんのインタビューを載せておきます。ほんといい声なので(市川さんの声を推したいわけではないのですがあまりに印象的でして、、)聴いてみてください。
(↑)「権利の上に眠るな」。女性の参政権を訴え続けた市川さんならではの言葉です。市川さんは戦争反対にも尽力していて、「戦争の最大の被害者は婦人」「平和なくして平等なし、平等なくして平和なし」と訴えています。短い言葉で本質を言い当てるってすごいな!って思います。
さて、展示のひとつに1967年12月16日に発行された「婦人に対する差別撤廃宣言記念集会」というチラシがありました。(↓ 展示室内写真撮影禁止なので、いただいた目録より。右上に写っているのがチラシです。)
1967年11月、国連は差別撤廃宣言を採択。これを記念して開催された集会です。「宣言」は79年、「婦人に対するあらゆる形態の差別撤廃条約」として国連総会で採択され、日本は1985年に批准しています。条約の前文と第二条には以下の記載がありました。(長いのでお急ぎの方は第二条の(f)だけ読んでいただけますと幸いです。)
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(前略)女子に対する差別が依然として広範に存在していることを憂慮し、女子に対する差別は、権利の平等の原則及び人間の尊厳の尊重の原則に反するものであり、女子が男子と平等の条件で自国の政治的、社会的、経済的及び文化的活動に参加する上で障害となるものであり、社会及び家族の繁栄の増進を阻害するものであり、また、女子の潜在能力を自国及び人類に役立てるために完全に開発することを一層困難にするものであることを想起し、窮乏の状況においては、女子が食糧、健康、教育、雇用のための訓練及び機会並びに他の必要とするものを享受する機会が最も少ないことを憂慮し、衡平及び正義に基づく新たな国際経済秩序の確立が男女の平等の促進に大きく貢献することを確信し、アパルトヘイト、あらゆる形態の人種主義、人種差別、植民地主義、新植民地主義、侵略、外国による占領及び支配並びに内政干渉の根絶が男女の権利の完全な享有に不可欠であることを強調し、(後略)
第一条
(省略)
第二条
締約国は、女子に対するあらゆる形態の差別を非難し、女子に対する差別を撤廃する政策をすべての適当な手段により、かつ、遅滞なく追求することに合意し、及びこのため次のことを約束する。
(a)男女の平等の原則が自国の憲法その他の適当な法令に組み入れられていない場合にはこれを定め、かつ、男女の平等の原則の実際的な実現を法律その他の適当な手段により確保すること。
(b)女子に対するすべての差別を禁止する適当な立法その他の措置(適当な場合には制裁を含む。)をとること。
(c)女子の権利の法的な保護を男子との平等を基礎として確立し、かつ、権限のある自国の裁判所その他の公の機関を通じて差別となるいかなる行為からも女子を効果的に保護することを確保すること。
(d)女子に対する差別となるいかなる行為又は慣行も差し控え、かつ、公の当局及び機関がこの義務に従つて行動することを確保すること。
(e)個人、団体又は企業による女子に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとること。
(f)女子に対する差別となる既存の法律、規則、慣習及び慣行を修正し又は廃止するためのすべての適当な措置(立法を含む。)をとること。
(g)女子に対する差別となる自国のすべての刑罰規定を廃止すること。
(第三条以降省略)
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(↓ こちらが全文)
特に第二条の(f)が気になりました。『慣習及び慣行を修正し又は廃止するためのすべての適当な措置(立法を含む。)をとること。』。立法するのは国会議員、ということは女性の国会議員が多いほうがいい、そうか婦選は今、重要なんだ!!!!
ちなみに、内閣府男女共同参画局によると、世界経済フォーラムが、経済、教育、健康、政治の分野毎に各使⽤データをウェイト付けして算出したジェンダー・ギャップ指数において、日本の順位は146か国中で118位だそうです(2024.6.12発表)。
今年は戦後80年の年ですが、1945年12月17日に衆議院選挙法が改正され、女性参政権が実現してから80年の年でもあります。婦選が実現して80年たったのに、日本における女性の地位や権利の向上が進んでいないのは悲しすぎます、恥ずかしすぎます。。。
市川房枝さんっていうと、市民運動の草分け的な方で、昔の人っていう漠然としたイメージがありましたが、今こそ思い出すべき方ですね。勉強になりました。ありがとうございました!(おわり)