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【保存版】カテゴリーブランディングのすゝめ ~市場を生み出すブランディング~
世の中には本当にたくさんのブランディングの会社があります。私自身、9年間マーケティングやブランディング業界で仕事をしながら、色々な会社を見てきました。
ですがその中で、「本当に効果のあるブランディング支援ができる会社はどこ?」と聞かれると、実はかなり少ないのではないかと思っています。
たくさんのブランディング企業が、綺麗で整ったクリエイティブを制作したり、商品やサービスを魅力的に見せるコピーづくりを得意としています。ですが、どれだけ表面的に美しいものが作れても、本当に意味のあるブランディングとは言い切れません。
少しブランドという言葉の語源に立ち返って考えてみます。もともと、自分が所有する牛と他人が所有する牛を区別するための目印としてつける「焼印」をブランド(brand)と呼んでいました。そこから転じて、自社の商品やサービスを他社のものから差別化するための名称、言葉、記号、シンボル、デザイン、あるいはそれらの組み合わせをブランドと呼称するようになりました。
ここで大切なのは、「なぜブランドによって差別化したいのか?」です。
「顧客から選ばれて、売上を上げたいから。」
これがブランドの一番の目的ではないでしょうか。だからこそ、この目的から逃げてはいけない。いくら美しいデザインが制作できても、売上に繋がっていなければ効果のあるブランディングとは言えないと思っています。
特に現代はものにあふれ、先進諸国においては、生活上の基本的なニーズは満たされきっています。ひと昔前であれば、ちょっと気の利いたデザインやコピーで顧客の気を引けたかもしれませんが、多くの商品が同質化(コモディティ化)している昨今、差別化するのは容易ではありません。
このブログでは、そんな現代においても、本当に売上につながるブランディング手法について扱いたいと思います。
私はそれを、「カテゴリーブランディング」と名づけました。後の文章で詳しくお話しますが、これは新しい市場(カテゴリー)をつくるという事業創造の手法そのものです。
本文では、少しでも内容が分かりやすくなればと思い、キャンプ・グランピングの事例を取り上げました。(私自身、キャンプ好きというのもありますが。)
この文章が少しでも多くの方に届けば良いなと思っています。
1.カテゴリーブランディングとは
カテゴリーブランディングのカテゴリーとは、市場のことを指しています。
カテゴリーブランディングという言葉を改めて定義すると「自社の強みや独自性をもとに、新たなカテゴリ(=市場)を創造することで、顧客の第一想起をとり、売上をあげるブランディング手法」です。
この「顧客の第一想起をとる」というのが、様々な商品・サービスがあふれる現代において、顧客にものを買ってもらうために大切なポイントです。顧客が何かを欲しいと思った瞬間に、まず一番に思い出される商品・ブランドになれるかが、大きく売上に影響します。
そしてマーケティングの観点に立てば、顧客の第一想起をとるためには、自社オリジナルのカテゴリ(=市場)を創ってしまうのが一番です。今までにないオリジナルの市場であれば、競合が存在せず、顧客に思い出されるのは必然的に自社だけだからです。
まさに、このオリジナルの市場を創るブランディング手法が、カテゴリーブランディングです。
エンタープライズにとっては、この手法によって新規事業をつくることが、飽和した市場の中で売上を伸ばす勝ち筋になります。同時に中小企業やベンチャー企業にとっても、大企業と競合しないユニークな市場で戦う有用な方法だと思っています。
2.どのようにカテゴリ(市場)を創るか
「新しいオリジナルのカテゴリ(=市場)をつくる」
言葉にするとシンプルですが、実行はそう簡単ではありません。
先ほど触れたとおり、現代はものにあふれている時代。ひと昔前であれば、便利な家電製品や生活用品など、次々と新しいニーズを満たす商品が登場していましたが、現代においては新市場を切り拓くような商品・サービスを発想するのは困難です。
そんなカテゴリ(市場)の創造を、カテゴリーブランディングではどのように実現するのか。その方法が、新しいコンセプト(行動原理)を顧客に提示することです。
「新しい商品を生み出そう」と考えるのではなく、「顧客に新しい行動の提案をしよう」と発想するのです。
言葉だけでは分かりにくいと思いますので、例を挙げましょう。
例えばグランピングです。グランピングとは、リゾート感覚で快適に楽しむキャンプのことを言います。本来キャンプといえば、テントを張るなど自力で様々な物を用意して、大自然を満喫するという形式が当たり前でした。一方グランピングは、自分で物を準備する必要はありません。ラグジュアリーな施設で、快適に自然を楽しめます。
グランピングも「キャンプ」の一種であるという点では、従来のものと変わりません。変わったのは「自分では何も用意しなくていい快適空間でキャンプをするのはどうですか?」という新しい行動の提案を顧客にしていることです。
他には、スターバックスの「サードプレイス(第3の居場所)」も、カテゴリーブランディングの一例です。スターバックスは、ストレスの多い現代社会において、「自宅とも学校・職場とも違う、ほっと一息つくために立ち寄る場所」として自身を位置づけました。カフェであることに変わりはありませんが、新しいコンセプト(行動原理)を提示することで、市場を生み出したのです。
3.カテゴリーブランディングのステップ
ここからは、どのように新しいコンセプト(行動原理)をつくればよいのかを紹介します。
⑴ 自社の強みを理解する
⑵ 顧客のインサイトを理解する
⑶ 社会のインサイトを理解する
⑷ 業界の常識に対してアンチテーゼとなるコンセプトを考える
それぞれのステップについて、先に挙げたグランピングの例を踏まえて説明していこうと思います。
⑴ 自社の強みを理解する
新しいコンセプト(行動原理)をつくるといっても、闇雲な思いつきではうまくいきません。まず、他社とは違う自社の強みや、今までやってきた事業の文脈を踏まえながら考える必要があります。
国内でグランピングが一般的に認知されはじめたきっかけは、2015年10月にオープンした星野リゾートのグランピング施設「星のや富士」だと言われています。星野リゾートがグランピングというコンセプトを切り拓くきっかけとなった強みとは何でしょうか。
『星野リゾートのおもてなしデザイン(日経デザイン)』によれば、星野リゾートが手がける施設の数々には「日本旅館メソッド」と呼べる手法が使われているといいます。これは、その土地ならではの魅力を発見し、磨き上げ、お客様に提供することで、非日常のおもてなしをするという手法です。
この考えが根底にあったからこそ、自然豊かな土地を最大限に活かしつつ、非日常が味わえる空間がつくれないかと考え、グランピングというコンセプトにたどり着いたのだと私は思っています。実際に「星のや富士」では、その土地ならではの薪割り体験が人気アクティビティーになったり、問題となっていた害獣問題を逆手に取りジビエを提供して人気を博すなど、土地オリジナルの魅力が活かされていました。
⑵ 顧客のインサイトを理解する
新しいコンセプトをうみだすためには、顧客のインサイトを起点に考えなければいけません。
ここでいうインサイトとは、顧客自身も気づいていない欲求のことです。そして深いインサイトは、しばしば矛盾した2つの欲求としてあらわれます。
多くの人がアウトドアできれいな景色を楽しみたいという欲求をもっています。同時に、キャンプの知識もないし、山の中の汚いお風呂やトイレ、寝具を使うのは嫌だなという気持ちも多くの人が持っているはずです。つまり「自然を楽しむキャンプはしたいけど、汚いのは嫌」という訳です。
まさにこれが矛盾した2つの欲求です。
2つの欲求が矛盾しているからこそ、それを解決するグランピングというコンセプトは画期的であり、深く顧客に刺さったのです。
⑶ 社会のインサイトを理解する
いくら画期的なコンセプト(行動原理)であっても、社会的なインサイトに逆らうとうまくいきません。逆に社会のインサイトにはまれば、爆発的に受け入れられる可能性があります。それだけ重要なポイントです。
グランピングが広く普及したのは、コロナ禍以降です。家にずっとこもっていたので外出して自然にふれたいという欲求と、三密は回避しなければならないという社会のトレンドにうまく適合していました。
⑷ 業界の常識に対してアンチテーゼとなるコンセプトを考える
深く顧客に刺さるコンセプト(行動原理)は、業界の常識に対してアンチテーゼになっています。今までの常識を覆すものだからこそ、従来のサービスでは解決できなかった矛盾する2つの欲求を同時に満たすことができるのです。
グランピングも、「キャンプ道具を自分たちで用意しなければならない」という常識を壊すコンセプトです。
この⑴~⑷を満たした結果、2020年までの5年間でグランピング市場は5倍以上に拡大し、一大市場をつくりました。
これがカテゴリーブランディングの全体像です。
もちろんこの手法も完璧とは言えませんし、今後も探究を続けるつもりです。
ですが、ひとまずまとめたこの内容が、本当に価値のあるブランディング支援が増えるきっかけになれば嬉しいと思っています。
▼カテゴリーブランディングについて話しませんか?
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