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カテゴリーブランディング事例:ビール業界

こんにちは、塩口です。
株式会社EXIDEAという会社で9年間マーケティング・ブランディングの仕事をしています。

今までのnoteでは、商品の差別化が難しい現代においても、効果のあるブランディング手法として、カテゴリーブランディングという考え方をご紹介してきました。
(もしまだnoteをご覧になっていない方は、ぜひお読みください。)

今回からは、このカテゴリーブランディングの考え方を使って、身の回りの商品を分析しようと思います。

▼カテゴリーブランディングとは?
自社の強みや独自性をもとに顧客に新たな行動様式や文化を提案し、カテゴリ(=市場)を創造することで、顧客の第一想起をとり、売上をあげるブランディング手法

まず扱うのはビール業界です。ビール業界はコモディティ化の激しい業界で、味や品質によって商品を差別化するのが非常に難しいと言われています。そんな厳しい環境で、各ビールメーカーがどのように生き残ってきたのかを探ると、単純な商品としての違いではなく、飲酒に伴う新しい行動様式を顧客に提案してきたことが分かります。
これはまさにカテゴリーブランディングの考え方そのものです。

アサヒビール、サントリー、ヤッホーブルーイングの3社を取り上げながら、それぞれの会社がどのように顧客のインサイトを掴み、新たな行動様式を提案してきたのか、考えていこうと思います。


事例1:アサヒビール「アサヒスーパードライ」(1980年)

1970年代に寡占市場を握っていた朝日麦酒株式会社(現アサヒビール)ですが、1980年代には、サントリーなどの全国進出に伴いシェア率10%を切ってしまいます。
この状況を打破するためにリリースされたのが、ロングセラー商品「アサヒスーパードライ」です。

革命的だったのは、なんといっても「辛口」というコンセプト。苦味が強く重たいビールが主流だった当時、どんな料理にも合い、何杯でも飲める辛口は衝撃で、ドライビールブームを巻き起こしました。

ただ本当に画期的だったのは、「辛口」の裏にある行動様式の提案でした。
「若い人たち、もっと気楽に食事と一緒にたくさんビールを飲みませんか」
という提案です。
洋食や肉料理が一般化してきた時流にも適合し、1987年当時、頭打ちだったビール消費量は10年ぶりに前年比10%以上の伸びを記録したと言われています。

事例2:サントリー「ザ・プレミアム・モルツ」(2003年)

サントリーのプレミアムモルツは、プレミアムビール市場と呼ばれる新たなカテゴリ(=市場)を切り拓いた商品です。

当時、市場には少し高額なビールとして「ヱビスビール」が存在しました。ヱビスビールの売り上げが最も上がるのは、お中元などのギフトシーズンや年末年始。いわゆる「ハレの日」需要に応えるビールがヱビスビールでした。

それに対してプレミアムモルツは、こんな新しい提案を行いました。
「ハレの日だけでなく、普段の週末から高級感あるビールで楽しみませんか?」

この提案は「特別感を味わいたいけど、年数回では我慢できない!(毎週楽しみたい!)」という顧客のインサイトをわしづかみにしました。その結果2005年には「モンドセレクション」最高金賞を受賞し、2006年には、対前年比440%となる550万ケースの売り上げを達成しました。

事例3:ヤッホーブルーイング(2008年)

日本人のビール離れが叫ばれている中で、第三次クラフトビールブームの火つけ役となったのがヤッホーブルーイングです。2008年から売上を伸ばし、11年連続増収増益を達成しました。

この達成の背後にあるのも見事な行動様式の提案です。
例えば、「水曜日のネコ」というホワイトエールという小麦を原料としたビール。
この商品の提案は、お酒が大好きな働く女性に対し「週の中日(水曜日)に、リラックスしながら自分へのご褒美としてビールを飲みませんか?」というものです。

大手が手を付けてこなかった「普段はビールを選ばない人」に、新たな行動様式を提案することで着実にファンを増やしていった事例です。

このようにビール業界のようなコモディティ化した市場では、カテゴリーブランディングによって市場を創造し、顧客の第一想起をとることが勝ち筋になることが分かります。

次回以降も、身の回りのカテゴリーブランディング事例をご紹介するつもりですので、ぜひご覧ください。

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