高い階段


知らない街で揺れる電車は
当時の私には効果覿面だった。

花のある生活はどうも似合わず、
ハウスダストはどうにも馴染まず、
所狭しと飾った仇に
貴方の言葉が響くから。

さほど暑くもない季節に
内見しないままはんこを押した部屋に来た。
名前だけ書いてある免許しか持っていないし、
助手席に乗せるような友達もいないから、
名前も聞いたことのない業者に
私の全てを任せることにした。

ピカピカのシンク以外は
全てが整って、
入れ替えた新品のパーツみたいな
そんな日だった。

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