忘れていた。 長いこと忘れていた。 だから、気がつかなかったんだ。 気がついてしまったからこわくて、柄にも無く不安で。 響かなかった歌が響いてきて、ずっと繰り返し響き続ける。 雨の中でも走れるくらいに。 ほんとの事はわからないから、 1人で膨らむ言葉達が、 どこへも行かずに狂わせる。
私の大事な計画を どこにしまったか分からない。 窓枠のアルミは 白く濁っていたはずなのに あなたの小洒落た背中のせいで 私の靴が急に汚れる。
世界は 誰もが迷う様に 作られているから。 まあるい背中 湿った足 濁った 皮膚の内側で 誰にも言えない 私の未来。
馴染みの店が無くなって、 なんだかぽっつりかなしいね。 きっと今夜は難民が、 溢れてみんなかなしいね。 汚い路地のあの店を、 馴染みの店と思っていたのは、 きっと私だけだろう。 独りよがりと思うけど、 それでもやっぱりかなしいね。
炊飯器捨てて 叩く背中。
私の親友の親友は今日も無口で、 簡単には変わらないね。 新しく見つけた古本を 机の下に積んで寝る。 クラクションを数えても 喜ぶ姿は見えないから。 私の本当の本当は今日も無口で、 ただこれからを更新するだけ。
目を瞑って 私のこれまでを考える ふーっと息を吐いて、 私のこれからを考える。 あなたにはわからないでしょうが、 何処にでもあるありきたりな夏休み。 台風が来るから、 随分早めにでたらはずなのに、 京王線はいっぱいなのね。 出来ることはちっぽけな一杯 見逃せない未来にリーチをかけてる。 走る私は雨の中、 どうか神様、照らしておくれ。 私は強い。強いから。
かなり うるさい話ばかり キンキンわかったわかったよ。 頭がぼやけて溶けだして、 とりあえず降りる事にするよ。 全て飲み込んで仕舞えば、 青い湖、出口はなくて。 ピクニックにはまだ早いから 知らない曲を聴いてごまかす。 時計はぼんやり揺れ出して、 兎にも角にももういやよ。 トドメを指してくれさえすれば、 その先は、私に任せて。
老人ホームの夢を見た わたしはひとり、車椅子で 赤い揺れる花 窓の外を見てた。 どうしようもなくダラダラと息をして 京王線は揺れるだけ。 遅く咲く花は 何も残せず、 あめをまつだけなのかしら? 乾いていないからきっと 繰り返しの日々 私の嫌いな人になってしまいそう 日々を終わらせるのは私だけだから 私の全ては私が作ったものじゃなく くだらない話だね 誰にも語れず、赤くなる頬をちぎる。 馬鹿な私のただの物語 宇宙は揺れて、 私は小さな蟻のまま 私は全てを捨てて見た
雨上がりの2時 光るのは調整中の時計だけ 夏なのに風は冷たく ぼやける煙と 黄昏の空気 油っぽいおでこに気がついて、 今日はもうここで終わりにしよう 明日は晴れそうな天気 星のないグレーの空と ブーツのせいで痛む足 汚れたレンズに気がついて、 今日はもう一回休み。
知らない街で揺れる電車は 当時の私には効果覿面だった。 花のある生活はどうも似合わず、 ハウスダストはどうにも馴染まず、 所狭しと飾った仇に 貴方の言葉が響くから。 さほど暑くもない季節に 内見しないままはんこを押した部屋に来た。 名前だけ書いてある免許しか持っていないし、 助手席に乗せるような友達もいないから、 名前も聞いたことのない業者に 私の全てを任せることにした。 ピカピカのシンク以外は 全てが整って、 入れ替えた新品のパーツみたいな そんな日だった。
閉まりかけてる自動ドアに 走れば良いのに走らない よゆうがあるわけじゃ無いのに よゆうな顔だけしてる 誰が見てるわけじゃないのにね。 よせば良いのに毎日は 喜びさがして終わるから、 昼下がりの屋上の煙草 空気が高くてどこまでも。 楽しくて、無意味な夢を見たい。 誰の許可もいらないし、誰も見ていない。 エアコン付けっぱなしのままで漂う、 私の家のにおいと、私の指のにおい。
他人の引っ越しは不思議だね。 知らない誰かの知らない営み。 踊れないダンスは踊らなくていい。 耳を傾けるだけで、踊るんだ。 心を軽くする為に、 積み上げた本を読まなくちゃ。 好きな本なのに、読む気がなくなるのは、 冬に備える為かしら。 本棚の隅の知らない言葉、不思議だね。 誰かに話す訳でもなく、 それは私だけの秘密の旅だから。
救われた気がした。 救われた気がしたんだ。 そんな気がしたんだ。 嫌な事、すれ違い 回り道、無駄な話 肌寒い朝、わざと薄着で迎えに行くのが好きだった。違いを感じて、世界を感じて、繋がっていると思えたんだ。 空は低く、空気は自由で、伸びる心。 不安そうにする君は、それでもこんな事が好きな私を好きでいてくれた。
他人の貧乏ゆすりが許せない。 ニンニク臭い私の手が許せない。 少し嫌な事があっても、 帰りの電車でラジオを聞けばいい。 頭を使わなければ、 何も考えずに済むから。 かかとを擦って歩く人が許せない。 明日に任せる私の憂鬱が許せない。
オレンジ色のニットを買った日を思い出す。 光の入らない湿った部屋に 長く過ぎているせいで。 知りたかった砂漠の話は 後回しのまんまにしてた。 肌寒くなった気がした。 どんな事があったって、変わらないつもりなのは どうしたって変えられない。 後ろ向きに走る電車の中で 揺れるたびに右耳が 少しだけほんのすこしだけ あるのか不安になる今日に。 知らなかった日々を思い出す。 止まらないのは知っているから お洒落なパンはいけすかないから だから付けっぱなしにしてた。