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不安だから。逃げずに、数字で考える 【お金の話、聞かせてください】

山﨑美津江さんに聞きました

ガス代が払えず、火元をとめられたこともある新婚時代。
苦しいときも、予定外の支出も、そのままを記録する家計簿は、〝ほんとうにしたいこと〟を、選びとる目を養いました。

やまさきみつえ
家事のノウハウ、お金と時間の使い方の工夫を重ねて40年余り。各地友の会やメディアで住のアドバイザーを務める。現在は夫とふたり暮らし。相模友の会会員。

高くても安くても、「もの」を価値高く使う

 「学生時代、父親から特別にもらった5千円。トルストイ3冊を買って帰ると、〝もう使ってしまったのかい!〟と驚かれました」。ときには〝欲しい〟と感じたものに、潔くお金を出すこともあったという山﨑さん。

 学生結婚をしたあとは、家庭教師のアルバイトで下宿代を支払ったり、「はじめてお風呂のある部屋に住めたときはうれしかった」など、お金のありがたさをかみしめる経験も多かったとか。「給料が出たらまず値の張るみそを買い、くだものなどは買えなかった」、そんな日々の中でも、気に入った調度品を少しずつ集めたりと、暮らしの質を上げる楽しみも忘れませんでした。

 「この値段ならと、中途半端な気持ちで手にすると、愛しさが半分になってしまうものもあります。使うところと、使わないところ――たわめてジャンプする力が、お金にも必要だと思うんです」。

1. アンティークのコーヒーカップ[1客約1万円] 自分のための贅沢品。「同じコーヒーでも、格段と美味しく感じます」。 2. バウハウスのガラスケース [5,000円] 北欧雑貨を扱う家具屋さんで手に入れたもの。バターケースや、保存容器としても利用。 3. 卓上ほうき [8.000円] デザインも使い勝手も気に入った一品。デスクまわりに、出したままでも気にならない。 4. 牛乳パックの仕切り [0円] 引き出し整理の必需品。飲み終えたら、洗って開き、重ねておく。家じゅうに約50枚使うので、年に2度ほど総とりかえ。  5. そうじ用手袋 [108円] 毎朝、手にはめて家具や照明の拭き掃除。終わったらほかの雑巾類といっしょに洗濯。  6. 白いタオル [1枚158円] タオルは清潔に保てる白と決めて。洗面所で使い古したあとは雑巾に。

費目にそった収納棚

約20年続けているオープンハウスでもおなじみの山﨑さん。「持ちものを家計簿の費目ごとに収めると、探しものがなくなります」。

住の棚。住まいの手入れや修繕に必要な道具、電化製品の保証書なども。
衣の棚。型紙や布、洋裁の道具など。ロックミシンは3台目。
食の棚。買いもの後は一時的にいっぱいになるので、スペースにゆとりをもって。
クローゼットはひと目で見渡せる配置に。

古道具店で出会った時計

家賃1万5千円の下宿に住んでいたころ、2万5千円で購入した振り子時計。
「文字盤がきれいだったので、ていねいに扱われていたものだと分かります」。

“これは”というものにお金を使うため
毎日のものはシンプルに――

 ふたりの娘の子育て時代は、食事も洋服も、極力手づくりに。「今ほど既製品が安価でなく、手づくりすれば半値で済みました。お金がないから工夫する、それが楽しくて、技術も上がります」。

 月に一度の外食で子どもたちのテーブルマナーを身につけたり、毎夏の車旅行では九州以外すべての都道府県を訪れたりと、家族の思い出も多い、メリハリのある家計だったことがわかります。

 「ない袖はふれないけれど、自分たちだけにお金を使うのを“野暮ったい”と思うのは、分け合って暮らした下町育ちのせいかしら」。と話すように、娯楽費を上まわる公共費の支出も、山﨑さんの家計の特徴です。

 「“なるようになる”では、お金の都合にならされてしまう。もっともだいじな“自分がどうしたいか”を、見極めるための家計簿です」。そう話すいっぽうで、「衝動買いも、そのままに記帳して。プラスマイナスゼロに調整するのは、主婦の腕の見せどころ」。

 家計簿によって生活の方向性を決め、実際を正直に記録する――蓄積した数字は、家族の足跡を、ありのままに示しています。

 「時間はすべての人に平等ですが、お金は人によって持ち分がちがう。だからこそ、マネージメントの力が大切になってきます。わが家の支出に責任をもって、生活の舵とりができたとき、自分本来の輝きが発揮できると感じています。子育て中の人たちにがんばってほしいな」。

節約のしどころ

デイリーにはお金をかけず、簡素に暮らすのが山﨑さん流。「いざというときのジャンプ力を、日々の暮らしでためておきます」。

器は買い足せる白がメイン 和も洋も、料理が映える白。「お客さまのときも、ふだんと同じ器です」。洗いやすさ、重ねやすさもポイント。
「つくりおき」は経済的 買ってきた材料は、ひと手間加えて冷蔵庫へ。使い残しがなく、平日の食事は短時間でできあがる。保存容器を1種類に決めると、冷蔵庫がすっきり。
まとめて買って、使いきる 買いものは夫の担当。ふだん買う食品や消耗品は決めているので、収納スペースにも定位置が。鶏むね肉は2,4キロ、ツナ缶は16缶1パックのものを購入。

小は小なり、中は中なりに生かせたとき、お金の価値が達成されます

1977年、長女1歳のときからはじめた家計簿と主婦日記(小社刊)。引越しを経ても大切に保管してきた。

山﨑さんのルーティン

迷うより、たんたんと“続けること”。その効果は、生活のあちらこちらに。

毎朝体重を測る 起床後すぐ体重計に乗るのが、夫と自分の習慣。毎日記録すると、食生活の乱れや体調の変化に気づきやすい。
使ったら記帳する 「家計簿は、お金の日記。そして、安心設計の保険みたいなもの」と山﨑さん。現在は、長年愛用の家計簿とクラウド家計簿 kakei+を併用して。
気持ちを空っぽにする 15年前からはじめたクラシックギターは、好きな曲を奏でて楽しめるほどのうで前。友の会のセールでは生演奏のBGMを。

40年のデータから

数字の蓄積は、日々の記帳とはちがった形で、家族の暮らしをもの語りま
す。

[ 食費 ]
総計3.200万円という数字に驚きますが、月平均では67.000円。「昔も今も、よく使う食材は変わりません」。

[ 教育費 ]
ふたりの教育費のあった期間は27年間、総額は3.288万円。

[ 公共費 ]
「年金生活に入ったら抑えていかざるを得ないけれど、できるだけ予算をとりたい費目」。月平均では44.000円。

出典:『かぞくのじかん』(休刊中)2017 秋 Vol.41

山﨑美津江さん 著書のご紹介

山﨑美津江さん愛用の 『クラウド家計簿 kakei+』 


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