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歯が生えるころ

歯が生えそろうまでには3年以上かかる

 子育て中の親御さんにとって、子どもの発育は大変気になる問題ですね。発育の指標には身長、体重、胸囲などがありますが、歯の生える時期や順序もそのひとつです。
 乳歯は、最初の歯が生え始めてから約3年をかけて20 本が生えそろい、しっかりとものが噛めるようになります。

 2018 年の日本小児歯科学会の全国調査によると、乳歯の生え始める時期と順序の平均は、下の【図A】になります。

図A

30 年前の調査結果と比べ、生えるのが早い子と遅い子の差は広がっており、特に奥歯に関しては19 ~ 45 カ月と約2 年もの個人差がありました。その理由のひとつには、低出生体重児の増加が考えられ、これは、母親の喫煙や痩せ、社会的ストレスなどが関わってきていると言われています。
 新生児の平均出生体重は、ここ40 年で200g減少、また2500g 以下の低出生体重児の割合も40 年前よりも、9%~ 10%増加しています。これらが、口内をはじめとする身体全体の機能の発達にも影響を及ぼしていると考えられます。

乳歯の生える順序

 全般に乳歯は、下の真ん中の歯から生えてきます。皆さんもお子さんの口の中に白い小さな歯を見つけた時のことは、鮮明に記憶されているでしょう。最初の歯が生える平均時期は、生後5 ~ 9 カ月で、これも30 年前の調査と比較すると、男児で1.4カ月、女児で1.7カ月早くなっています。歯が早く生えると、虫歯が発生する問題や、授乳中に乳首を噛まれる母親の負担などがあります。早く生えてきた子は虫歯ケアをしっかりとしましょう。

 あくまでも目安ですが、1 歳のお誕生日ころには上下の前歯が4 本ずつ生えます(写真1)。

写真1

1 歳3 カ月を過ぎても、歯が1 本もなく、歯茎がふくらんでいない場合は、小児歯科専門医に相談してください。最後の上の奥歯(第2 乳臼歯)が生えてくるのは大体2歳半〜3歳ごろです(写真2)。

写真2

 最初の歯が生えるのは早くなっている一方で、最後の乳歯が顔を出すまでの期間は長くなっています。つまり生えそろうまでの時間が長くなっているのです。これについては個人差が大きくなっているので、個々に小児歯科で定期的にチェックしてもらいながら、正常な範囲なのか異常な状態なのかを診てもらうことが大切です。また、歯の生え方に合わせた離乳食の進め方や口の機能育成の指導を受けることもおすすめします。

乳歯に異常なケース
歯が生える前の「おやっ?」

  • 萌出性嚢胞(ほうしゅつせいのうほう)
     歯が生えるころに歯茎が水ぶくれのようになることがあります。歯を包んでいる袋の中に液がたまることからできるものです。歯が生えてくるとしぜんに治まるので心配いりません。血液が混じるとこのふくらみが黒く見えます。

  • 上皮真珠(じょうひしんじゅ)
     歯が生えていないころに歯茎のところに直径数ミリの白い塊が1 個から数個見られることがあります。これは歯ができる時の部品が吸収されずに一部残ったためにできるものです。歯が生えてくるころにしぜんになくなります。

歯が生えてきたけど「おやっ?」

  • 先天性歯(せんてんせいし)
     生まれてすぐから生後2、3カ月までに生えた乳歯を一般に先天性歯と言います。下の前歯のことが多く、形成不全や、ぐらぐらするなどが多く見られます。授乳の時に母親の乳首を傷つけたり、乳児の舌の裏側を傷つけたりする場合は、先を丸めるなどの処置をします。歯の動揺が大きく、誤って飲み込まないか心配な時は、抜くこともあります。

  • 癒合歯(ゆごうし)
     2 つの歯の芽がくっついて育って生えたものを言います。程度により少し大きめの1本の歯に見えたり、先が分かれていたり、真ん中にくっついた筋が残っているものもあります。その溝が深いと虫歯になりやすいので、時期を見てシーラント(歯の溝を埋める予防処置)をしてもらいましょう。発生率は2 ~ 5%と言われ、下の前歯が一番多く、半分くらいの割合でのちに生えてくる永久歯がないことがあります。5、6 歳になったら一度小児歯科でレントゲンを撮り、永久歯の数を確認しておいた方がよいでしょう。たまに、多数の永久歯が欠損している場合もあります。

 歯の生え方ひとつをとっても、いろいろなことがわかります。元気な笑顔の子どもたちをひとりでも多く育てましょう。

外木徳子 (日本小児歯科学会 専門医指導医)
出典: 乳幼児だより 第697号 2020年8月

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