夢幻星#23
プラネタリウムなんて生まれて初めていくなぁ。ってか近所にプラネタリウムなんてあったんだ。
目的地までの道のりが示されているナビを見ながらぼんやりと考えていた。
到着予定時間まで残りは15分と記されている。
「真珠はプラネタリウムって行ったことあるん?」
「ないよー。わざわざ行かなくても見れるからね、行ったことある?」
「俺も初めて行くわ」
まぁそうだよな。わざわざ行かなくても夜になれば星なんて自然と見れるもんな。
「なんでまた急にプラネタリウム行きたくなったん?」
「だって、プラネタリウムに行かないと星の名前なんてわかんないし、自然の星を見たって何が何だか分かんないじゃん」
確かになぁ。特別星座に詳しいわけでもないし、星空を見たってオリオン座くらいしかわからない。
「うちらって星の名前が由来だから、お互いの由来になった星くらいは覚えておこうと思ってね」
そう言うと、助手席でウインクしながらグッドポーズを向けてきている。
「ってか、真珠っていう星の由来教えてもらったっけ?はぐらかされたような気がするんだけど、、、」
「そうだったっけ?」
助手席で悪戯に笑う姿がチラリと視界の隅に入ってくる。
「麦くんの星の由来は覚えてるよー。麦星は別名アークトゥルス星。星言葉は確か、、、独自の世界観と精神力!」
「さすが真珠!よく覚えてたね」
「星言葉の意味、麦くんそのものだもん」
「で、真珠っていうのはどういう星で、星言葉はなんなの」
「うーんとね、、、スピカっていう星があるんだけど、その星の和名が真珠っていうんだって。星言葉は確か、、抜群のセンスと直感力だって」
スマホを片手に言っているから多分今調べながら話しているんだろう。
それにしても抜群のセンスと直感力か。羨ましい星言葉だ。
「うちに抜群のセンスと直感力はあるかな〜」
当の本人はこの星言葉にあまりピンときていないらしい。まぁ言っちゃ悪いが俺もあまりピンときていない。
そうこうしているうちに車は目的地へと到着した。
辺りは暗くなり始めているが、幸いまだ星は出てきていない。きっとプラネタリウムから出てくる頃には星空になってるはずだから、星座の復習もできるだろう。
「うわーすごーい。プラネタリウムってこんな感じなんだー」
隣で子供みたいにはしゃいでいる真珠に、抜群のセンスと直感力があるとは思えないけど、かわいいから別にいい。俺たち以外にお客さんがいない様子だから周りの目を気にせずに星を堪能できる。最高じゃないか。
とりあえず俺は真珠星であるスピカっていう名前の星を探してみる。真珠はきっと麦星であるアークトゥルスを探しているのだろう。
「あった!」
「あった!」
同時に見つけて同時に声を上げた。
「アークトゥルス見つけたよ」
「俺もスピカ見つけた。あそこにあるよ」
俺はスピカがある方を指差した。
おとめ座で最も明るい星という説明がされているスピカは比較的見つけやすかった。
数ある星の中で一際青白く輝いている。これなら自然の星空の中でも見つけることができそうだ。
「わぁ、、すっごい輝いてる。綺麗な星でよかったぁ、、、」
「アークトゥルスはどこにあった?」
「びっくりしたんだけど、スピカの近くにあるよ。しかもめっちゃ目立つよ。探してみて」
なるほど、、、スピカの近くを探してみるとすぐに見つかった。
うしかい座に属しているアークトゥルスは確かにスピカの近くに位置していた。そしてかなり明るい星だ。
「なんかこうやってみるとうちと麦くんが出会ったのも運命感じるなぁ、、、」
「確かにこんなに近くにあるなんてね」
確かにこんな近くにあるんなら、偶然出会ったのも運命なのかもなぁ、、ってあれ?
しばらくアークトゥルスとスピカを眺めていると、あることに気がついた。
「スピカとアークトゥルスって春の大三角ってやつじゃない?」
星空の中で一際輝いて見えるアークトゥルスとスピカは、もう一つのデネボラと呼ばれる星を合わせて春の大三角として星空に君臨していた。
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