夢幻星#12
さっき行った鉄板居酒屋で似たもの同士だってことで意気投合はしたけれど、まさかここまで似たもの同士ってことあるのか?
どうやら真珠っていう名前も、親が星言葉から引用してつけてくれた名前らしい。
偶然にしては出来過ぎだろ。
「名前の由来になった星言葉ってどんな言葉?」
そう言って真珠さんは俺の顔を覗き込んでくる。
俺は必死に昔の記憶を引っ張り出した。記憶力はいい方だ。
「アークトゥルス星っていう星の別名が麦星っていうんだけど、その星から引用したんだって。星言葉は何だったっけなぁ、、確か独自の世界観と精神力だったっけ」
名前の由来は親から聞いて覚えてたけど、流石に星言葉までは正確には覚えていない。けど確かそんな感じだった気がする。
俺が昔の記憶を頼りに導き出した星言葉が合っていたとするならば、ずいぶんと星言葉通りの男になったもんだ。と自分でも思う。
「独自の世界観、、、麦くんにピッタリじゃん」
「まぁね」
なんか真珠さんならそうやって言ってくれると思っていた。
となると気になるのは真珠っていう名前の星だ。
「真珠さんはどんな星言葉?」
「わかんない」
「わかんねぇのかよ!気になったりしない?」
「うーん、気になるけど変な星言葉だったら嫌だし」
「変な星言葉の名前を子供につけんだろ普通」
まぁね〜と言いながら真珠さんは俺の隣を歩いている。その目線の先にはポツポツと姿を現し始めた星が広がっている。
お酒で少し頬を紅く染めながら俺の隣を歩くその姿は、初めて会った時の美人で大人っぽいという印象じゃなくて、見かけによらずすげぇ子供っぽい。
そうこうしているうちにどうやら目的地の駅に着いたようだ。
「この駅だっけ?」
「うん」
「今日は撮影ありがとね〜」
「こっちこそありがと!楽しかった」
そう言って真珠さんは頭を勢いよく下げている。あーこれ完全に酔ってるな。ポケットからスマホを取り出し、そんな真珠さんの姿をカメラに収めた。
「ちょっと今、写真とったでしょ〜」
口では真珠さんはそう言っているが、嫌がっていないのは顔を見ればわかる。むしろちょっと喜んでないかこれ。
「いや、もしかしたら動画に使えるかもしれないと思って撮っちゃった」
「何それっ、本当は?」
「うーん、可愛かったからつい撮っちゃった」
真珠さんをおちょくるの半分、本音半分で答えた。
「へへへ、ありがとっ」
そう言って、照れ隠しなのか舌を出しておどけた表情をしている。
やべぇ、もうちょい一緒にいたいかも。
ピークエンドの法則っていうやつで、1番盛り上がったタイミングで解散するのが1番次に繋がりやすいって聞いたことあるけど、今がまさにそのタイミングなんだよなぁ。
だけどもうちょい一緒にいたいんだよな。
心理学を信じるべきか、今の自分の感情を信じるべきか、、