月の女神が家にやってきた
朝、洗濯物を干しに出たら家にでっかい虫が貼り付いていた。蝶?蛾?どちらかわからないけど、とてもキレイな子だった。
次女に、お庭にチョウチョがいるよ!と伝えたら張り切って虫取り網を持ってきて捕まえた。大きい。ほんとに大きい。
でも体はふわふわで、とてもかわいい。
家で飼うわけでもないし、逃がそうと言ったのだけど幼稚園バスの先生に見せたいと言うので少しの間虫取り網に入れておいた。バタバタ羽ばたくたびに、羽根がちぎれ、足がちぎれた。
可哀想だから早く逃がしてあげたかったけど、先生に見せたいという次女の気持ちもわかるので出来るだけ負担をかけないように網を広げて持ちバスを待った。
バスが来て、意気揚々と虫取り網の虫を見せたら、先生は「蛾じゃん!おっきい!怖い!」と言った。
綺麗で可愛いのに…。
バスに乗ってる子どもたちは大盛りあがりで、みんな立ち上がって騒いでいた。
バスが走り去ったあと、ごめんね、飛んでいきなと声をかけて虫取り網をひっくり返したけど、蛾は飛んでいかない。もしかして羽がちぎれたから飛べないのか。
申し訳なくなった。
直接触ると鱗粉が取れて良くないって聞くし、網に入れっぱなしも可哀想だし、どうしたものかと大きな葉っぱの上に網を下ろしてみたら、蛾はおもむろに蛾は葉っぱの上に歩いていったかと思うと高く飛び上がって家の屋根を超えていった。
そっか、飛べたんだ。良かった。
蛾だか蝶だか知らんけど、白くて大きくて、初めて見たなぁ、きれいだったなーと思って朝は終わった。
で、夕方、洗濯物を取り込もうと思って庭に出たら、また、同じ子がいる!!!
同じ種類の別な子かな?と思ったけど、ちぎれた羽の形から見るに同じ子だ。戻ってきたのだ。
あれだけ高く飛べたんだから、もっと遠くに行けたのに、戻ってきたのだ。
何かのメッセージかな、と思ってgoogleレンズで虫の名前を調べてみたら、オオミズアオという蛾だった。
そもそもの個体数も少ないのに、成虫になってからたった1週間しか生きられないので、なかなかお目にかかれない貴重な蛾らしい。
幼虫のときにあった口が成虫になるとなくなっちゃって何も食べられなくなるから交尾だけして子どもを残して死ぬんだって。
…口がなくなる!?
なんて切ない…!!
とりあえずもう捕まえたりはせず、そっと見守ることにした。
今日は、1週間生きられる命の何日目なんだろう。あの子は飛べるようになった代わりに口がなくなって、1週間で運命の相手を探して、子を成して死ぬ。
確かセミも成虫になって1週間で死ぬけど、ビジュアル的により儚さを感じる。
もしうちの庭でそのまま死ぬなら、せめて家庭菜園のキャベツの近くにでも埋めてやろう。木の葉っぱを食べると書いてたけど、家にある木は松しかないので…
ちなみにこのオオミズアオという蛾、本当に短い期間しか飛び回らないこともあって見つけられたら良いことがある幸運の使いなんて言われているらしい。
夜に飛び回る白身がかった黄緑色の蛾の学名。今は変わってしまったけど、昔「アルテミス」月の女神の名を冠していたそうだ。
朝、家にやってきて、逃がしてもなおまたうちの庭に戻ってきた月の女神。
我が家に何か伝えに来たのかな。
家の庭に見慣れない虫がいることに、何だか少し幸せな気持ちになった。
(虫画像貼ります、苦手な方はここで閉じてね)