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食品製造副産物を利用した       飼料コスト低減方法

 現在飼料価格が高騰しており、どうにか出来ないかと悪戦苦闘している方が多いのではないかと思います。私にも安い飼料はないか?という問い合わせが増えてきています。そんな中、食品製造副産物などを利用した飼料コストの削減方法を紹介します
 こんな記事が飼料コスト低減のヒントになれば嬉しいです。

 まず、食品製造副産物や未利用資源などを利用する際の注意点として以前紹介していますので、こちらを見てください。
 内容が重複しますが、食品製造副産物だからといって特別な知識や給与方法があるわけではありません。配合飼料や大豆粕、とうもろこしなど一般的な飼料で飼料設計が出来れば問題なく使いこなせます。

不安

ひとつ躊躇してしまう理由があるとすれば、『不安』ではないかと思います。意外にこのハードルは高いです。しかし、自信がつき不安がなくなるといろいろな飼料を問題なく使うことが出来ると思います。

 では、どのうに飼料設計をし、コスト削減をしていくのか。正直内容は全くもって当たり前のことですので、がっかりしないようにお願いします(笑)
 牧場の情報はもちろんですが、飼料のそれぞれの分析表や計算値が必要です。分析表はその飼料の分析表を使って下さい。同じ飼料名でも全く違う栄養価のものがたくさんあります。これを同じ飼料だと販売しているところもあったりしますので注意してください。  

 飼料販売業者に必ず飼料の分析表や計算値をもらって下さい。どのような栄養価なのか分からないのに購入することはおかしいと思いませんか?少しでも農家の経営のプラスになるために紹介しているのに、プラスになるのかどうか判断が出来ません。どんなものなのか分からなければ飼料設計も出来ません。  

醤油粕
これ同じ飼料名で販売されるのはありですか? 

 私も昔は「使ってみて判断して下さい」などと言いながら営業していましたが(そんな売り方して本当にすいません)、今は使う前に科学的に判断できる数値があります。すべては判断出来ないかもしれませんが、かなり精度が高い情報を得られます。分析表や計算値がないよりも間違いなくあったほうが良いですよね。 

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 先日、飼料のメーカーがころころ変わってしまい非常に使いづらいけど何とかならないか?と相談を受けました(ちなみに、これは弊社が納品している飼料ではありません)。メーカーが変わってしまうことは最悪仕方ない場合がありますが、変え方を飼料販売業者が考えて提案するべきです。こういう経験をすると、副産物ってこの程度か!という誤解が生まれます。この程度ではないです。ちゃんとした飼料です。販売側が商品の質を誤解させてしまうようなことをしてはいけません。自分で自分の商品を売れなくしてしまいます。誤解している方が見えれば少しでもその誤解が解ければと思います。

 前置きが長くなりましたが簡単な使用例をあげます。

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 上記の価格の飼料を給与した場合、一般的な配合飼料を中心にとうもろこしや大豆粕、ビートパルプを使用した場合と酒粕や澱粉、おからを使用し飼料コストを削減しようとした場合では1日1頭あたり59円の飼料コストの削減ができる計算になります。
 もちろん配合飼料や大豆粕の価格がもっと高ければ更にコストは削減出来ます。逆に酒粕や澱粉、おからの価格が高ければコスト削減には繋がらないかもしれません。

 大豆粕よりナタネ粕のが安いからそちらを使おうと飼料変更するときと全く同じ手順を踏んで飼料変更していけば、ほぼ問題ないと思います。今回の飼料変更で少し心配になる点は澱粉の消化スピードが速いことです。そこは飼料変更後の観察による微調整で対応出来ると思います。これも精製された澱粉は消化スピードが速いという情報が大切です。こういった情報があればどのような飼料でも問題なく使用出来ます。 

 ここで注意することは何度も言いますが、その飼料の分析表や計算値を使うことです。飼料設計は飼料の名前を変えないことが大切ではなく、科学的な栄養価を変えないことが大切です。これはどこの農家も実は行っています。粗飼料のバンカーが変わったり、購入粗飼料のロッドが変わったりしたときには、飼料設計の変更を行っていると思います。粗飼料の名前が変わらなくても当然栄養価が変わればそれに応じて調整をしていると思います。このようなことと同じです。
 もっと言えば飼料名が変わっても科学的な栄養価が変わらないことが大切だと思います。
 当然ですが、栄養価は同じでも嗜好性が悪くなってしまっては同じとは言えません。

無題
肥育の飼料設計ソフト(自作)

 肥育牛でも同じことが言えます 当然、繁殖牛でも同じです

 このようにいろいろな飼料を使えるようになった背景には分析機関の進歩や家畜栄養学の進歩があるからです。昔は『経験と勘と観察眼』が鋭い方しか使えなかった飼料でも今では誰もが使えるものになっています。使用経験がない方でも使いこなせます。
 ただこれは、家畜栄養学を理解し飼料設計が適切に行えること(実はここが一番ハードルがたかいのではないでしょうか)と、正確な情報を得られることが大前提です。

 副産物やエコフィードをどのように使ったらよいのか?使い方が分からない。といった声をたまに聞きますが、本当に特別な使い方や技術はありません。それぞれの家畜栄養学を理解し、適切な飼料設計が出来れば使えます。
 配合飼料や一般的な単味飼料を使って飼料設計が可能であれば、あとは『不安』を取り除くことが出来れば大丈夫です。

 配合飼料であれ単味飼料、エコフィードであれ、分析表を要求することは絶対に必要なことです。中には配合飼料の分析は知らないという方もいます。これでは飼料設計は成立しません。どんな飼料であってもその飼料の正確な情報があれば使いこなすことは可能です。逆に情報がなければ使えません。

『不安』によって使用しない、もしくは使用していても使用をやめてしまうというケースが散見します。
農家に対して不安を煽るのではなく、「大丈夫!」といことを伝え正確な使用方法を提案し背中をそっと押してあげながら寄り添うことが私の仕事のひとつではないかと考えています。

 こんな情報発信が農家のために、農家の利益につながることがあればありがたいです。

最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
疑問や質問あればいつでも受け付けています。 

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