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食品製造副産物飼料の養豚での使い方や思うこと①

  養豚業界では飼料価格はコストの大分部を占め、非常に苦労されている方もいると思います(今まさに値上がっています)。その際にコストダウンをするひとつの方法として、食品製造副産物や食品の賞味期限切れなどの未利用資源を有効活用して、飼料コストの低減を図っている農家もたくさんみえると思います。
 養豚に食品製造副産物などの未利用資源を給与する際に気を付けることや、思うことなどを紹介します。

 まず、必ず行なわないといけないことは飼料分析に出すことです。ここで問題になるのは養豚専門の飼料分析機関がないということです(私が知らないだけであったら是非教えて下さい!)。牛はありますが、豚はありません。ここで日本食品標準成分表や一般食品分析、日本飼養標準などを使用することはオススメしません。
 なぜかというと、これらは平均値をとっており、分析項目も少ないために、折角、家畜栄養学が進歩しているのにも関わらず、それを活用出来ないからです。日本食品標準成分表では糖質と食物繊維を区別していませんでした。単に炭水化物量に4kcal/gを乗じていました(過去形なのは本当につい最近発表された八訂ではかなり改善されてはいますが、それでも家畜栄養学の知見を使った方が私は良いと思います)。牛の飼料分析機関での数値を活用することは可能ですので、私はCVASやDairy One、十勝農協連に分析を出して、その数値を参考に飼料評価をしています。しかし、あくまでこの飼料分析は牛へのものであって豚ではありません。この数値を活用出来る項目もありますが、TDNやDE、MEといったエネルギーは分析表の数値をそのまま使用することは出来ません。これは牛に対しての計算値で算出されているものなので、豚の計算式で計算をしなおす必要があります。単胃動物と反芻動物では消化吸収のメカニズムが全く違うからです。

TDN(%)=DE/4.41/10 
GE(kcal/kg) = 4143 + (56 * % EE) + (15 * % CP) - (44 * %Ash) (Ewan,1989)
DE(kcal/kg) = 949 + (0.789 * GE) - (43 * %Ash) - (41 * %NDF) (Noblet and Perez,1993)

 私は上記の式を使っていますが、いろいろな式があり何を選択するかは難しいです(この計算式の方がリアルに近いよ!というのがあれば是非教えて下さい!)。
 養豚のかたが、このようにNDFの分析値を出すことは少ないと思います。NDFを出していないとNDICPやADICPが考慮出来ずにエネルギーだけではなく、蛋白質の充足率にまで影響が出ます。現在養豚ではCPではなく、アミノ酸の充足率といった考え方になっています。有効蛋白質を把握しておかないとアミノ酸の充足率にズレが生じます。これは私個人の意見ですが、豚はADICPはもちろんのこと、NDICPも消化吸収出来ないのでは?と思っています(詳しくご存じの方いれば教えて下さい)。食品製造副産物や未利用資源といった飼料はNDF含量が高いものも多く、よってNDICPやADICPが高いものも多いので注意が必要です。
 NEを知るには澱粉の値が必要ともなっています。澱粉の分析も出している方は少なく、飼料設計にさえ参考にされていないケースが散見されます。

分析表

 これらについては、購入業者に分析表が必要で、無いと飼料設計が出来ない旨を伝えたほうが良いです。分析表があって農家が得をすることはあっても、損をすることは絶対にありません(分析表があるのが当たり前ですが・・・)。これは当然、配合飼料にも同じことが言えます。必要であればアミノ酸組成や脂肪酸組成も養豚では非常に重要であるため要望しても良いと思います。
 とはいっても、栄養学が進歩すればするほど、飼料分析が大切になってきますが、どこまで飼料分析をすれば良いのか悩むことがあります。当然細かい飼料分析を行えば行うほどコストが掛かります。このコストは当然ですが商品単価に上乗せされます・・・これが非常にモヤモヤすると共に、新たな問題が発生してしまう可能性があるからです(これに関してはまたいつか書きたいと思います)。

 以前にも食品製造副産物飼料の使い方やら注意点やらメリットやらデメリットやらetc.にて書きましたが、食品製造副産物や未利用資源を使用することは、配合飼料やとうもろこし、大豆粕といった単味飼料を使うのと栄養設計上は全く変わりありません。決して特別な飼料で特別な扱い方があるということはないです。よって普段より飼料設計が出来ていれば問題なく使いこなすことは可能です。

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しかし、実際の現場では使用することに躊躇してしまうことも少なくありません。それはなぜなのか?

 使いこなせるかどうかという技術的な問題よりも実際には「本当に使って大丈夫なのか?」という精神的な不安が大きく影響しているケースがたくさんあるのではないかと思っています。周りで使っているケースを知らないので不安。現在、豚の調子は悪くないので、コストダウンのために飼料変更をして調子が悪くなったらどうしよう?など複雑な感情があるのではないかと思います。
 本来であればこういった原因を私のような販売側の信用や信頼により受け入れて頂けるようにするべきですが・・・私の信用や信頼のなさを実感したりします・・・
 今までいくつもの食品製造副産物や未利用資源を扱ってきて思うことは、しっかりとした情報ほ得て、しっかりとした飼料設計が出来れば、どのようなものでも(嗜好性が悪くて食べてもらえないのは別ですよ)問題なく使うことが出来ます。飼料変更した際は、飼料変更後の観察により微調整は必要になることはあります。これはどんな飼料でもあることで、特別なことではありません。このように特別な技術は必要ありません。
 このような私からの発信で、少しでも飼料コストの低減に役立ててもらえることが出来ればありがたいです。

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 次回はどのように食品製造副産物や未利用資源を飼料として使うのかを具体的にこんな風に飼料設計していますよというようなことを紹介したいと思います。

食品製造副産物飼料の養豚での使い方や思うこと②

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