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里帰り出産と、ホームシック。

里帰りする気なんてさらさらなかったのだけど、
夫の転勤・転居のタイミングにより、やむを得ず地元での出産を選択。
妊娠34週から実家で暮らし始めた。

実家は最高だ。
3食お風呂つき。個室もある。
両親は毎週の検診や有事に車を出せるよう仕事も調整してくれている。
こんなに恵まれていて、文句の一つも言える立場ではないとわかっているのだけど、私はホームシックになった。

里帰り初日、自宅に戻る夫を涙で見送った。
そこから数日は、毎晩泣いた。
帰りたい、と思った。
父の呑気な一言も、母のアドバイスも、すべて棘を持っているように聞こえて、何を話しても苛立つから、ひとり、部屋に引き篭もった。

電話越しに「帰りたい」と泣く私に、「もう帰っているしょ」と夫は言う。
確かにここは大好きな実家で、生まれ育った場所だけど、
私が帰る場所は、帰りたい場所は、夫と暮らす家なんだ。

結婚してまだ1年未満。
引っ越してすぐに実家に戻ったから、今の自宅には数日しか住んでいない。
それでも、私の”家”はそこにある。
そう気づかされて、私はますます夫と過ごす時間を愛おしく思うようになった。

実家での生活リズムに慣れて、暇との付き合い方を習得しつつある今ならわかる。
仕事を辞めて、車に乗れなくなって、できることが限られるようになったことへのストレスが、心を不安定にしていたのだ。

夫との他愛のないラインや、仕事終わりの長電話、週末に会いにきてくれる約束が栄養になって、ホームシックはするんと解消された。
「実家脱出大作戦」と銘打って自宅で過ごした2泊3日の旅も、心を整理してくれるよい機会になった。
夫と二人で生活する時間は幸せだったけど、臨月の身体を思えば怖さもあると、冷静に思えたのだ。

今は、家族に守られ、身体を労わる時間。
小さな命が生まれたら、また忙しく動き回ればいいさ。

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