Wish Upon a Star(メイドと主人の恋心)

*今回はセリフのみで構成しています。あえてト書きなども入れていませんので、二人の心境や行動をセリフから読み取っていただくとより楽しめると思います。

登場人物

星見 ルナ(16歳)メイド               本編(ル)と省略
大宮 ツバサ(17歳)ルナが仕える屋敷の一人息子    本編(ツ)と省略

あらすじ

母親がメイドとして仕事をしていた大宮家、ルナは幼少の頃から母の付添で大宮家に出入りしていた。
しかしある日、急な病に倒れるルナの母。
身寄りのないルナを大宮家が引き取るが、ルナは養子になることを拒否した。
養子ではなく、住み込みで働くメイドになりたいと言い出したのだ。
その真意は明かしてはいないが、何やら事情があるのだろうと、ルナを住み込みのメイドとして迎え入れた。

それから5年の月日が流れたある日の出来事

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『ウィッシュ・アポン・ア・スター』

【大宮家屋敷】

ル「あら?」
 「ハンカチを落としましたよ」

ツ「あぁ、悪い……」
 「いつもありがとな」

ル「いえいえ! これが私のお仕事ですから、どうかお気になさらずに」
 「それでは、私はこれで!」

ツ「あっ! そういえば、今日はミコトさんの命日だったか?」

ル「えぇ、母が亡くなってからもう5年も経つのですね……」

ツ「早いものだな」
 「今年も行くのか? 墓参り」

ル「えぇ、これから向かうところです」
 「あっ……何か急ぎの用事でもございましたか? でしたらすぐに!」

ツ「いや、用事ってわけじゃないんだけどさ」
 「えっと、邪魔じゃなければ、俺も行っていいか?」

ル「えっ!? はい! 母も喜ぶはずですっ!」
 「いえ! 絶対に喜びます!」

ツ「それはよかった」
 「じゃぁ玄関先で待っているから着替えて来いよ」

ル「いえ、このまま行きますので大丈夫ですよ」

ツ「は? その服で行くのかよ?」

ル「はい。何かおかしいですか?」

ツ「いや、おかしいとかではないんだけど……」
 「まぁいいか」
 「さっ! 行こうか」

ル「はい!」

【ルナの母ミコトの墓石前】

ル「お母さん、そちらの調子はどうですか? 私は相変わらず、バタバタと           流れる日々を過ごしています」
 「私のメイド姿はどうですか? 立派なメイドになってるかな? 私もお母さんの様なメイドになりたいけど……」
 「私はダメなメイドかもしれません。だって……仕えているはずの人に……ううん!  なんでもないです」

ツ「おーーい! そろそろいいか? すっかり冷えちまったよ」
 「お前、そんな格好で寒くないのかよ? ほら! 俺のコート貸してやるよ」

ル「そ、そんな! 御主人様のお召し物を貸していただくなんて!」

ツ「いいから! ほらっ、遠慮するな」

ル「あ、ありがとうございます……」

ツ「ミコトさんには挨拶できたか? 思い残すことがあるなら待っているから、済ましてこいよ?」

ル「いえ、大丈夫です。お気遣いありがとうございます」

ツ「そうか、いい機会だから、ルナに伝えておきたいことがあるんだ。気を               悪くするかもしれないけど、最後まで聞いてほしい」
 「俺はミコトさん……いや、お前の母親を少しだけ憎んでいる」
 「妹のように可愛がっていたルナ……お前を俺から奪ったんだから」
 「ミコトさんが亡くなって、お前が家に来たあの日から、お前は俺に対して他人行事になった」
 「いや、それ以上だ……お前はメイドで俺は主人で……俺はお前がそうやって俺に接するたびに辛いんだ」

 「俺はお前がずっと好――っ!『ダメです!』」

ル「ダメです……」
 「それ以上は……言っちゃダメです……」
 「ごめんなさい……」
 「それ以上先は言わないでください。お願いします」

ツ「なんでだよ! 俺はずっと苦しんで! 何なんだよ!」
 「お前に俺の気持ちなんてわからないよな!」
 「母の後を継ぎたいのか知らないけど……メイドなんかになってさ!」
 「あの時! メイドにならずに、家の養子になっていれば、お前は何も苦 労しなかっただろ! 俺とお前の距離もこんなに遠くなかったはずだろ! なんでメイドなんだよ! なんで! わけが分からねぇよ! 今からでも遅くない! 親父には俺から言ってやるからさ。メイドなんてやめ……」

  「パンッ!」

ツ「っ――」
 「何するんだよ! いてぇな!」

ル「私にあなたの気持ちがわからない?」
 「馬鹿言わないで! 私だって辛いよ! あなたから距離をあけて接するのがどれだけ辛いと思っているの?」
 「私だって……私だって、ツバサ君の事が好きなんだよ……」
 「あなたから好きって言葉を聞けば私はもう耐えられなくなるから、だから言わないでって言ったのに……」
 「ぅっ……ぁぅっ……」
 「ほら……っ……もう、ぐっ……ぁぐっ……ダメ……っ……ぐすっ……」
 
ツ「だったらなんで! なんで、お前は自ら辛い道を選んだんだよ! メイドにならなきゃ、距離を開ける必要もなかっただろ!」

ル「私とツバサくんが……兄妹になったら……私のこの気持ちはっ!!!」
 「この気持ちは……一生叶わない……」
 「いくらお星さまにお願いしても……叶わない夢になっちゃうんだよ……」
 「だから……っ……! だから私は! 数年我慢すれば、あなたと一緒になれる道を選んだの!」
 「お星さまに……我慢すれば……気持ちを伝えられますようにってお願いしながら……ずっと我慢してたんだよ……」

ツ「はっ? メイドと主人だとそれよりもっとひどいだろ? わけわかんねぇよ」
 
ル「私は……今年でメイドをやめようって思ってた……」
 「おじさまにはもう話してる……」
 「私がツバサくんには言わないでってお願いしたの」
 「普通の女の子に戻ったら……ツバサくんに気持ちを伝えようと思ってた……」
 「後少し……後少しだったのに……」

ツ「ルナ……」
 「お前が、メイドじゃなくてルナに戻ったら、一番に俺のところに来てくれ」
 「とびきりのドレスを用意して待っているから、一緒にでかけよう」
 「その時、俺はお前に気持ちを伝える。だからそれまで、一緒に頑張ろう」

ル「うんっ! 私、頑張れそう!」
 「後少しだけど、よろしくおねがいしますっ! 御主人様!」

ツ「ったく! こんな話をした後だとなんか恥ずかしいじゃねぇか!」

ル「あははっ」

ツ「さてと、それじゃぁ、帰ろうか!」

ル「はいっ!」

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