天使の奏でる狂乱曲

桜の花びらが舞う国道沿い
人気の多い国道沿いには不釣り合いな少女が立っている。

舞い散る桜のようにきれいなピンク色のロリータ服
彼女の周りだけがまるでタイムスリップしたような不思議な雰囲気を出していた。

異様な光景に見える人もいるだろう。
だけど、俺には彼女が天使に見えた、国道沿いの天使とでも呼んでおこうか。

しかし……まさか彼女が……天使ではなくて、悪魔だったなど誰が想像できただろう。

不思議な雰囲気を出す少女に見とれてしまっていた俺は、長い時間、彼女のことを見つめてしまっていた。

気づいた頃にはもう遅い。

少女が俺に駆け寄ってきて「私になにかご用ですか?」と可愛らしい声で話しかけてきた。

想像通り、透き通るようで少し弱々しい声。まさに天使だ!

「あっ……いや……その……」
頭をフル回転させて言い訳を考えている俺を見て「ふふっ」と口に手を当てながら控えめに笑う。

それにつられて俺も「ははっ」と頭を掻きながら笑った。

「可愛い衣装だね」
やっと絞り出せた言葉がこれだった。
しかし彼女にはうれしい言葉だったようで
「ほ、ほんとですか!? うれしい、みんな変な格好って言うから……ちょっと恥ずかしかったんですよ」

笑顔を満面の笑みに変えて、両手を使いながら嬉しさを表現するその姿はまさに天使!
俺は完全にこの天使に心を射抜かれた。
「ほんとにかわいいよ。天使かと思ったからね!」
嘘偽りのない本音。
初対面の人間、しかも随分と年上の俺が言うとただのやばいやつだと思われる。
けど、そんな事どうでもいいと思えた。

俺はただ彼女に本音を伝えたかった。
彼女が喜ぶ姿をもっと見たいと思っただけだ。

「ありがとうございます。私……お兄さんに褒めてもらえてすごく嬉しいです」
汚れのない無邪気な笑顔と言葉。
この子は本当に天使なんじゃないのかっ!?

「お兄さんはこの後、用事でもあるのですか? 良ければ……良ければですけど! もっと私の姿を見てほしいなって思って! 会っていきなりで……こんな事、言って良いのかわかりませんけど……家に遊びに来ません……?」

「えっ!?」
と間抜けな声を出してしまう。
無理もないだろう。自慢じゃないけど、女の子の家に遊びに行くなんて……初めてのことなのだから。

「ダメ……? ですか……?」
俺の間の抜けた返事に気持ちを落として上目遣いで返してくる

「いや! いく! おねがいします!」
よくやった俺! ここで彼女の誘いに乗れたのは人生で最高の判断だ!
心のなかで自分の功績を大げさに称える。それほど俺はこの子に心を掴まれていたのだ。

「やった! それじゃ、行きましょう」
そう言うと俺の手を掴み早足であるき出した。

つづく

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