バァバがタクシーに乗らせてくれた話
みんなが林間学校で楽しく過ごしてる間、私は自宅でまだ少し遅れをとっていた勉強に励んだ。
ジッとしているとみんなのことを考えてしまい、気がおかしくなりそうだったから忙しなく家の中を動き回ったりもした。
ようやく、私の出発する日が来た。
こうなると問題になるのが妹の世話を誰がするかだった。
この時まだ妹は年長さん
幼稚園の延長保育を最大限に利用してもタイムリミットは18:00
今でこそ、パパは年相応の役職についているけど当時はまだ下っ端。
18:00に幼稚園にお迎えに行こうと思えば仕事場を最低でも16:30には出発しないと間に合わない。
そんな時間に出発できるわけがない。
朝はなんとか早朝保育で送り出せてもお迎えは無理だった。
同居していた父方の祖母も現役でフルタイムのパート中、悩んだ挙句母方の祖母に2泊3日の間泊まり込みでいてもらうことになった。
初めから頼ればいいじゃないかとなるかもしれないけど、母方の祖母はリウマチを患っていて足の関節が痛む時があった。
そんな祖母に頼むのは心が痛んだが、祖母も快諾してくれたのでお願いした。
そして、もうひとつの問題は超絶山奥にある宿泊所までどうやって行くかということだった。
どの交通手段を使っても結局かなりの距離を歩かないといけない。2泊3日分の荷物と酸素ボンベをもって長距離をママと2人で歩くのは不可能に近い。
でも、腹を括って歩くしかない。
出発前日の夜、母方の祖母は私とママに結構な額の入った封筒をくれた。
『明日から2人とも体力を使うんだから、行きしはタクシーを家の近くまで呼んで宿泊所まで行きなさい。』
と行ってくれた。
ママは泣きながらお礼を言っていた。
当日の朝、もちろん妹は行かないでと泣いた。
申し訳なかったがパパはママに縋り付く妹を力づくで引き離し、出発した。