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人を魅了する美
人をはっとさせる美しさは、何も、持って生まれた容姿の良さだけではなく、もっと身近でわかりやすいところ、たとえば、流れるような美しい所作や、人を包み込むような優しい眼差しでも十分に人を惹きつける。それは、その人がこのようにありたいと志向する内面の美が、姿勢となり態度となって表れるからだ。
逆に言うと、どんなに外見やスタイルがよくても、内面を磨くことに意識が向かなければ、真に人を魅了する美しさとはならないだろう。それは水面に映る自身の姿に見とれるナルキッソスと同様、実際に触れようとすれば消えてしまう幻想美に過ぎないのだから。
人は他者と関わって様々な体験をしていく中で磨かれるという。魅力的になりたければ、人と傷つけ合うのを恐れずにしっかりと関わる必要がある。その際に、他者の中に何かが見えたら、安直に批判したり、疎んじたり、うらやんだりせずに、全部が自分の写し鏡だとして、じっくりと観察する。そうすれば、自分を見つめ直すための気づきや発見がたくさん得られるはずだ。
何もわざわざ自分探しの旅に出かけなくても、日常の人間関係のあれやこれらに自身がしっかりと映しだされている。それを自分事として取り入れたり戒めたりする試行錯誤によってこそ、自分の考え、趣味、志向、センス、美意識などが培われていくのだ。他者や事象から自分をモニタリングしてセンタリングすることを何度も繰り返して習慣化することによってのみ、芸術的な感動領域にまで人を魅了しうる美の本質が養われるのであろう。