サードアイⅡ・グラウンディング ep.6「魅了する力」
会の後半は、都市開発にまつわる関係者や開発チームのスピーチが続いた。男が先ほど示したアリフらしき人物がいつ登壇するかわからなかったので、見逃さないように注意していると、最後のゲストスピーカーとしてその男が登壇した。ひときわ大きな拍手で迎えられる。男は場慣れた感じで気さくに語り始めた。「過去と未来を繋ぐもの」というタイトルで、どうやら、この街の遺構を活かしたエコシステムで街を再生していくという案は、彼を中心に策定されたものらしい。
あの古い煙突が活かされ、高度な建築技術によって自然空調が実現されて、ビルや地下通路には夏は涼しく冬は暖かい空気が対流するそうだ。素人の俺からすると、雨漏りが心配になるのだが、当然そのあたりも万全なのだろう。
スクリーンに映し出された資料の説明が終わると、男は話の締めくくりとして、プロジェクトの意義と未来展望について声高に語り始めた。
「世間じゃ、このエコプロジェクトのことを、新しい金儲けの仕組みなんじゃろうとか、コストが逆にようけかかるんじゃなかろうか言うて、好き勝手に批判する声もある。じゃけど、企業の利益が絡もうが、どっかに矛盾が出ようが、そんなんは結局、どうでもええんじゃ。大事なんは、なんらかの結果じゃのうて、何かをするその過程、そこにこそ意義があるんじゃけぇ」
男は、そこでいったん話を区切って、会場を見渡した。彼が視線を動かすことで場の空気が波打つように揺れ、観客の意識は自ずとその視線に集まる。
「わしらぁ、例外なく全員、この地球の上に足つけて暮らしとるんじゃけぇ、この地球っちゅうのは、わしらみんなのホームなんよ。自分らの庭を大事にするように、この地球を思いやって、いたわって、環境をようしていくために、試行錯誤しながら何でもやってみりゃええんじゃ。ただ、それだけのことなんよ。なんも大層なこと言うとらん」
男は、マイクを手に持って壇上からステージに降りてきた。鍛え上げられた肉体にぴったりと沿ったスーツ姿の出立ちは、それだけで何かしらの影響力をもたらすようだ。ゆっくりとステージを横切りながら客席を満遍なく見渡し、うっすらと笑みを浮かべて話を続けた。
「そのためには、自分の枠をな、こう、自己から他者、地域社会、地球環境、さらには宇宙空間へと、ぐいぐい広げていくんじゃ。その視座に立って初めて見えてくる景色っちゅうもんがあって、そうすりゃあ、これまでとは全く違う世界観が手に入るんよ」
ステージ中央に立つと、男はホール全体のエネルギーを吸い寄せるかのように片手を大きく掲げた。そして、よく通る声で言い放つ。
「まずは自分が変わるんじゃ!そうしたら宇宙の波動もばっちり連動するはずじゃけん。そうすりゃあ、この地球の住人全員が、宇宙に飛び立てる日も来るじゃろう。わしらの力で、その日を引き寄せてやろうじゃないか!」
観客が一斉に湧いた。
こいつがアリフに違いない。俺はそう確信した。