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サードアイⅡ・グラウンディング ep.5「次世代アートシティー」

 ゴージがあんなに冷たいやつだったとはと、昔の自分に幻滅しながら、二階の指定されたゲスト席に着く。大きなスクリーンが左右にあって、会場の様子が映し出されていた。いったい、この会場には何万人くらい入るんだろうか。この規模の宗教団体なら結構な勢力じゃないかなどと思いながらいると、アナウンスが流れて開会式が始まった。
 今日はこの団体の年次集会で、宗徒が全国各地から集まってきているそうだ。会の主催者から挨拶があり、関係各位に向けて活動報告と今後の方向性が示された。それから、何人かの来賓の挨拶が長々と続き、最後に、渡された紙にある文言を皆で一斉に唱えあげた。
 小休憩を挟んで、いよいよパネルディスカッションとなった。区長や議員、民間企業のトップなど、お偉いさんたちが並ぶ中に、先程の男が言っていたアリフらしき人物もいた。
 話を聞いていると、どうやら、このエリアは次世代アートシティとして、このメンバーたちが連携して開発チームを作り、未来のモデル都市を創造していくということらしい。近代史における負の遺産となった荒れ果てた工業地帯を、現代アートの町として復興させる計画ということで、スクリーンにはこれからのアートプロジェクトや様々な催しの意義、現代建築の構造や役割などが映し出されて、プレゼンターたちはそれらについて熱心に語っている。アート優遇というと、四次元世界でヒノエがアリフと協同して行っていたプロジェクトもそうだったと思い出す。
 先ほどから話をしている人物だが、俺の見る限りでは、イメージしていたアリフ像とは少し違うように感じる。白いひげをたくわえて、身体を使って大きく身振り手振りで熱く何かを訴えかける様子は、情熱的で説得力もある。確かに、言っていることは的を得ているし、浮足立たずにしっかりと実現可能な未来を見据えているのだが、残念ながら、その場で人を魅了してその気にさせるようなエネルギーの強さは感じられなかった。
 司会進行に従って、しばらく討論が続いたが、その中のメンバーでアリフらしき人物は見当たらなかった。
 また休憩が入った。今度は長めの休憩とあって、イートインコーナーは人でごったがえしていた。先に食事をすませてきて正解だったと思っていたら、先程の男がこちらに気づいて近づいてきた。
「どうですか、集会は。楽しめてますか」
「ああ、内容の濃い討論で、未来の都市構想について考えさせられたよ」
「それは嬉しいです。ところで、あのパネリストはお探しの人でしたか?」
「残念ながらオレが探している人物とは違うようだ」
 男は自分の責任でもあるかのように申し訳なさそうな顔で、他に候補がいないかと何人かの顔を思い浮かべているようだったが、ふと心当てが浮かんだようで、
「もしかして、お探しの人物はアレイさんかも。次のスピーチの最期のほうで登壇予定ですので、ちょっと注意してみていてください。ここにのっています」
と言って、信徒用のパンフレットを見せてくれた。
 それを見ると、見事なグレイヘヤーだが顔つきは若々しく、よく鍛え上げられた体躯はがっしりとしている。
「団体の人なのか?」
「いえ、この方はわすれじの3区開発総合プロデューサーです。普段はあまり表にはお出になられませんが、今回は特別に後半の部で登壇されます」
 今度こそアリフかもしれないと期待して、男に礼を言うと、先ほどの席に戻った。


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