ウルグアイ戦の余韻に浸りながらガウーショの街で肉を喰らう〜コパ・アメリカ取材異聞〜
6月14日からコパ・アメリカの取材でブラジルに来ている。この原稿はウルグアイ戦が行われた翌日、ブラジル南部のポルトアレグレで執筆している。周知のとおり、日本は初戦のチリに0−4で敗れたものの、続くウルグアイ戦に2−2で引き分け、ノックアウトステージ進出に望みをつないだ(参照)。試合会場のアレーナ・ド・グレミオは、まさに完全アウェイ。それもそうだろう。ポルトアレグレは、ウルグアイの首都・モンテビデオからは車で10時間ほど。実はサンパウロ(同14時間)よりも近いのだから。
ゲーム以外で印象的な出来事があった。試合前、ウルグアイのサポーターが美味そうな牛肉を焼いていたのである。よくバーベキューパーティーをやる方ならご存じだと思うが、外で肉を焼くとなるといろいろ準備が大変である。しかも隣国とはいえ遠征先で! どうやらウルグアイでは、フットボール観戦と肉を焼くことは不可分なものとなっているらしい。この写真を撮った直後、おすそ分けの肉をいただいたのだが、これが何と美味かったことか! この経験が、試合翌日の行動の重要な伏線となる。
ウルグアイ戦の翌日も、開催地のポルトアレグレに滞在。ポルトアレグレといえば「ガウーショの街」として知られる。ガウーショとは、当地からアルゼンチン、ウルグアイまで広がるパンパ(草原地帯)で牧畜に従事していた、いわゆるカウボーイのこと。当然、肉は美味い。ホテルから歩いて行ける肉料理レストランはないかと探したら、この店がヒットした。しかもウルグアイ風ステーキが食べられるらしい。これは行くしかない!
南半球のブラジルは、今が晩秋なので17時を過ぎると空が暗くなる。ホテルを出発したのが21時20分。周囲はどっぷりと深い闇に包まれている。店までは徒歩で21分。十分に歩ける距離だが、この時間帯は人通りが少ないので注意が必要だ。
ポルトアレグレの街はそれほど治安が悪い印象はないが、それでも銀行の警備は厳重だったし、路上で寝ているホームレスもあちこちで見かける。危険度の目安として、壁に描かれた落書きは一定のバロメーターになる。私の経験則では、イラストのレベルが低い地域は、いささか危ない。このレベルは「注意していれば大丈夫」といったところか。
目的地に近づくにつれて、店の数が多くなってきたので少し安心する。そしてついに『El Tonel』に到着したのが21時40分。すでに混雑のピークは過ぎたようで、空いたテーブルがいくつか見える。店内に入ると、そのうちのひとつに案内された。
店内は、フォーマルとカジュアルな内装に分かれていて、こちらは後者。中央に赤々と燃える薪のしつらえがいい。そして店内のあちこちに、紙製のウルグアイ国旗が飾られている。お店のオーナーはかの国の出身なのだろうか。
こちらが店員から渡されたメニュー。英語版はなかったが、何となくわかる。今回は左下にある「File Mignon」をチョイス。日本でいうところの「ヒレ」だから、まあまあちゃんとした肉であるのは間違いなかろう。値段は42レアル、日本円で1200円弱である。
まずはビールを注文。ハイネケンやアムステルといった欧州ブランドもあるが、ここはご当地ブランド一択である。ブラジルの店でビールをオーダーすると、このようにボトルを保温する樽が付いた形で出てくる。当地では、料理に冷えたビールは不可欠のようだ。
ようやくひと心地ついたので、店内の客層をじっくり観察する。たいていは家族かカップルで、ひとりで肉を待っているのは私だけである。そこはかとなく漂うアウェイ感。いやいや、昨夜の試合と比べたらはるかにマシだろう。そんなことをつらつら考えているうちに、ついに待望の肉が運ばれてくる!
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