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言葉を考える メタファー

言葉はメタファーである、、、、、、ジョージ・レイコフ

正確には覚えていないし、レイコフが日本語で言ったわけではないw.と思うが、我々の使う言語は、狭義の意味でメタファーでは無い場合でも、概念メタファーとしての語彙が多く、これらの概念メタファーを無視しては言語が成立しない、、だから「言語はメタファーである」と言うほどの意味だったと思う。このレイコフの意見を知ったときの新鮮な驚きは、その後の言語や言語学への興味のスタートラインなったようだ。

大学院ではチョムスキーに直接師事した福井直樹先生の講座も受講したが、どうもチョムスキーの生成文法仮説には違和感を感じてしまうタイプだったので、大学で本格的に研究したことはないけれどジョージ・レイコフの方が私の性に合っているのだと思う。


概念メタファーのネット
「香川大学一般教育研究」第46号より

前振りとは異なるが、今日は狭義のメタファーの話w.

彼女は僕の太陽だ!

「ヘエ、アナタの彼女は人間デハナイノカ?」
などと言ってはC‐3Po以下だ。
ここでは太陽がメタファーだからね。

寒くて長い冬を耐えるピレネー山脈の北側、つまりドイツ語圏を中心とする欧州の北の国々では、
暖かな日差し、明るい陽光を与えてくれる太陽は望ましいく、母の様な優しい存在なのだから女性名詞!
冷たく暗い月夜の月は厳しくも冷徹な知性を彷彿させるので男性名詞だ!
などという根拠が怪しい説があったが、でも、die Sonne とder Mondの名詞の性を正確に覚えるには役に立った気がする。

ところがイタリア語では、
il sole e la luna
つまり、太陽は厳しく辛い環境をもたらす男の連想で男性名詞で、月は優しく包んでくれる(幻想上の)女性を連想して女性名詞!!

インドヨーロッパ語族に属するドイツ語とイタリア語であっても基本語彙の名詞の姓が逆なんですねぇ。

つまり、ここからメタファーが面白くなる。
私はイタリア語ができないので、一層の事、この駄文を読んでくださる読者はだれもできないと措定さられるアムハラ語(注1)と日本語を比較してみよう。

日本語:彼女は僕の太陽だ
アムハラ語:彼女は僕の雨だ。 (እሷ የኔ ዝናብ ናት። - "Iswa yene zneb nat.")
(アムハラ語は知らないので、ここではChatGPTの力を借りました)

つまり、アムハラ語が公用語の一つとなっており、しかも、アフリカ諸国では例外的に欧州の言語(英語やフランス語、スペイン語)やアラビア語を公用語にしていない、言語独立性の高いエチオピア(注2)の人々に、日本語の「彼女は僕の太陽だ」という意味を伝えるには「彼女は僕の雨だ」と言わねばならない。特別に強く愛している場合は「彼女は僕の線状降水帯だ!」と言ったらもっと良いのかどうか、知らないが、、、。

灼熱の太陽に照らされて、乾燥しきったエチオピア高地に久しぶりに降る慈雨。これこそが自分の彼女をポジティブに形容するメタファーとして最高なのかもしれない。

さて、レイコフに戻りましょう。
言語はメタファーだ!

では、私たちは自分たちの言語に依存した思考・思想をどのように汎言語化できるのだろうか?

カントやショーペンハウウェルの著作を日本語訳で読んだことのある人は、これらの本を読んで、最終的に意味が分かる人がどれほど居るのか?と疑問に思うのでないだろうか。ところが彼らが書いたドイツ語の原文を読むドイツ人やオーストリア人の大学生は(高校生でも)その意味を十分に理解し、内容を紹介したり、内容に対する自分の意見を言ったいるすることができるそうだ。

じゃあ、ドイツ人やオーストリア人の大学生は日本人の大学生よりもとんでもなく頭が良いのか?

数学の理解度、応用度などを調べると、ドイツ人、オーストリア人の学生の能力が日本人の学生(大学進学者の割合が異なるので、同世代の上位10%を「大学生」とみなして、、、)の数学能力よりも著しくすぐれ居ているわけでもないと思われる。

つまり、言語はメタファーであり、メタファーはその言語圏の気候風土や文化や宗教観などに依存するので、翻訳は容易ではなく、とくに関係代名詞が多用される言語から関係代名詞が無い日本語に翻訳する場合には、文章構造上ストレートな翻訳ができない事と相まって、翻訳者の脳内での各種変換作業が多重に交錯して、忠ならんと欲すれば孝ならず、孝ならんと欲すれば忠ならず、出力された翻訳文は日本語学者や日本語の物書きなどが見たら、とても合格点に至らない「ひどい日本語」になってしまう事が多いのではないか、、、。

私たちは、言葉を発するときに、それがどの程度メタファーを含んでいるか、そのメタファーの翻訳可能性はどの程度か、などを一考してみるのも一興ですね。

注1)アムハラ語(アムハラご、አማርኛ IPA: [amarɨɲːa] アマリニャ)は、エチオピアの事実上の公用語。アフロ・アジア語族セム語派に属する言語としては、アラビア語に次いで話者人口が多い。表記はゲエズ文字(アムハラ文字)。話者数は1500万人以上と推定される。

注2)エチオピア連邦民主共和国(エチオピアれんぽうみんしゅきょうわこく、アムハラ語: የኢትዮጵያ ፌዴራላዊ ዲሞክራሲያዊ ሪፐብሊክ)、通称エチオピアは、東アフリカに位置する連邦共和制国家。首都はアディスアベバ。アフリカ最古の独立国であり、現存する世界最古の独立国の一つである。また、インド・ヨーロッパ語族言語とアラビア語のどちらも公用語となっていない、アフリカで唯一の国である。


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