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「あぶなーい!!」を連呼して14年、うちの愛犬は乗り物嫌いでここまで来ました。
最近、とても寒いので老犬となった我が家の愛犬”ミロ”は散歩に出なくなってしまった。朝も夕も以前はグイグイと私を引っ張って散歩に出かけていた。体のあちこちに出来てしまった脂肪瘤や糖尿病のせいで気分が滅入った時には動きたくないのだろう、朝などは玄関を出て数歩歩いたところで振り返り「帰る」と戻ろうとする。
年を取ると散歩時に皆、「手押し車」(正式名称を知らない)を利用するようになる。私の妻もミロが重く抱いて歩くことができないため「手押し車」を購入して、乗せようとしたらしい。しかし、抱き上げられて車に乗ったミロはすぐに「あぶなーい!あぶなーい!」と叫び車の中で暴れて、結局は乗ることができなかったらしい。
実は小さな頃からそうなのである、まだ幼犬の頃、ドッグランに連れて行くと喜ぶだろうと車に乗せて少し離れた公園まで連れていったことがある。ミロは興奮して車の中を駆け回り、妻が抑えようとすると腕の中で激しくもがいて「あぶなーい!」を連発した。慣れさせようと何度かチャレンジしてはみたものの、結局は「あぶなーい!」で終わってしまった。
以降、病気などの特別な状態が生じない限りはケージに入れることもなく乗り物に乗せることもなく過ごしてきた。狭い場所が嫌いなのか、移動するその感覚が嫌いなのかはわからないが、とにかく”移動に利用されるもの”は嫌いである。
最近では高齢のためか、ひとりで置いてけぼりにしても「おーい」とは呼ばずに「にゃー」と猫のような叫び声を上げて家人を呼ぶようになった。家族で外食して戻ってきていると気配に気が付いて「にゃー」と鳴くのである、おかしいやら悲しいやらで笑ってしまう。
散歩の際に押し車に乗らないのは問題である、私の場合は動かなくなれば抱いて歩くことは苦ではないが、10Kg近くの肉塊を妻は抱いて歩くことができない。さりとて手押し車に乗せると「あぶなーい!」と叫ぶのである。
どうして「あぶなーい」なのかと言うと、普通にわんわん言っている分には、そう感じる事はないのであるが、対移動器具に対しては切迫感ある鳴き方をするためエマージェンシーわんわんに聞こえるのである。
以前、大病をして入院した際にケージ入れられて病院に運んだ記憶が残っているのかとも思ったが「あぶなーい!」はその前から叫んでいた。私的には車の窓から顔を出して毛を風にたなびかせながら、通り過ぎるみなさんに
笑顔を振りまくようなワンコになってほしかった。
今更「あぶなーい!」の叫びが軽いノリの「わん、わん、」に代わることがないことはわかっているが、車に乗せて遠くに連れていけなかったことが悔やまれる。海なし県の埼玉で育ったので海を見せてやりたかった、また山らしい山にも連れて行ったことがなかったので林や草原を駆け回らせてやりたかった。
「鳴いても連れて行けばいいじゃん」とおっしゃるかもしれないが、悲痛な声で「あぶなーい!」と連呼されれば、海や山より落ち着かせることを選ぶに決まっている。
しかし前述したように叫ぶ力も衰えてきて「あぶなーい!」が「にゃー」になりつつある、寂しい限りである。ミロ頑張って叫べ「あぶなーい!!」
と。