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_kei_
溶け出す想いと凍った心【毎週ショートショートnote:書庫冷凍】
真紀は寝室に戻り、ふぅーっと大きな息を一つ吐いてから、ベッドサイドにある小型冷蔵庫の扉を開けた。
上段にはビールが整然と並んでいた。右端の一本を取り出し、ゴクリと喉を鳴らしながら液体を体の奥に流し込む。いつもより苦く感じるのは、気のせいなのだろうか。
今度は下段に申し訳程度に備えられた冷凍室の棚を引っぱり出す。そこにはなぜか文庫本サイズのノートが唐突に入っていた。
1年前、憎しみを紙に焼き付けるように書き殴り、-10℃の世界に閉じ込めた・・・はずだったのに。
封印していた記憶を呼び戻しながら、ドレッサーの前に腰かけ、隠し引き出しに仕舞われていた書類を取り出した。
「まさか、まだあの女と続いていたなんてね」
ここには夫の不貞の証拠がたっぷりと揃っている。それらを眺めながら、真紀は自分の心が-10℃以上に冷えていくのを感じた。
「さぁ、これからどうやって復讐を始めましょうか」
鏡の向こうに、不敵な笑みが映っていた。
(403文字)
▼たらはかに(田原にか)さんの毎週ショートショートnoteに参加させていただきました。
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