コーヒー豆焙煎を開始、そして副業へ。
会社員の藤原裕樹さんは新婚旅行でアメリカのポートランドを訪れ、コーヒー文化と副業文化が根付く様子に感銘を受けました。そこから、どのような経緯で、週末副業焙煎士になったのでしょうか。第3回は、子育て仲間で藤原さんのコーヒーを愛するライターがその道のりを一緒に辿ります。
リモートの合間に息抜きとしてコーヒーを淹れ始める
帰国してしばらくは会社員として普通に働いていました。いよいよコーヒー豆焙煎を本格的に始めるようになったのは、コロナ禍がきっかけです。
実はその前から週に1回はリモートワークをしていたのですが、世界的なパンデミックを機にフルリモートに。当時1歳半だった長男も自宅保育でしたので、気晴らしに誰かと会ったり、外に出たりすることは、ほとんどできませんでした。しかも仕事が忙しいタイミングで、毎日ものすごい数のミーティングがスケジュールに入っていたんです。文字通り朝から夜まで休む間もなく、本当に気が狂いそうでした。
そんな時、ふと「コーヒーでもドリップしてみようかな」と思い立ちました。普段は、フレンチプレス(ガラスポットにコーヒー粉をセットしてお湯を注ぎ、コーヒー成分を抽出する方法)で簡単に済ませていたのです。
試しに、ペーパーフィルターに粉を入れ、お湯をじっくり手回しで注ぎながら、コーヒーを淹れてみました。すると、ミーティングの合間のたった数分なのに、すごい気晴らしになったんです。これはいいなと思いました。
味とコスパを考えて、本格的な焙煎機を購入
ドリップコーヒーを飲むようになってしばらくしたころ、「焙煎されたコーヒー粉を買い続けるのはもったいない」と思うようになりました。妻もコーヒーが好きだし、リモートはしばらく続きそう。せっかくなら、もっと美味しいコーヒーを飲みたいという思いが強くなって、ついにコーヒー豆焙煎に挑戦することにしたんです。
初めは小さなサイズの焙煎キットを購入しました。50gの豆を入れて、コンロで網を振りながら焙煎するシンプルなものでしたが、焙煎した豆を挽いてドリップで淹れてみると、めちゃくちゃ美味しかったんです。それを3、4か月続けるうちに、手振りでは物足りなくなり、もっとたくさんの豆を一度に焙煎できる焙煎機を買いたくなってきました。
とはいえ、お店でよく見かける焙煎機は、10㎏や20㎏のコーヒー豆を焙煎するための本格仕様。うちはマンションだから、そのサイズは大きすぎるし、値段も数百万円くらいします。ネットで調べてみると、1kgぐらいの量を焙煎できる小ぶりの機械がありました。これならマンションでも置けます。でも、40万円くらいしました。決して安くはありません。1 kg焙煎して、妻と2人だけで飲んだら、何杯で元が取れるのだろう……諦めかけましたが、ふと、ポートランドの副業文化を思い出したんです。
「そうだ、焙煎したコーヒー豆を、誰かに売れば良いんじゃないの?」
次は妻の説得です。まず、自分たち夫婦が飲むコーヒー豆を1年間買い続けたら、どれぐらいコストがかかるか計算しました。1人あたり2週間で1袋200g使うので、 1か月に2袋で3000円。妻も同じ量を飲むので、単純計算で2倍すると、コーヒー豆だけで月に6000円かかることが分かりました。
その計算を元に、じゃあどれくらい売れたらコーヒー豆と焙煎機の購入代金がペイできるのかということをシミュレーションしました。その結果、なんとかなりそうだということが分かったので、それを妻に伝えると、妻も「それなら良いんじゃない」と納得してくれました。焙煎機は台湾製。並行輸入していた個人から購入しましたが、到着まで4か月待ちということでした。
知り合いに背中を押され、ついに副業焙煎を開始
焙煎機を買う前から、実は副業としてECコンサルタントをしていました。なので、副業に対する抵抗感はなかったですね。会社も許してくれていましたし。でも本業は忙しいし、育児も手間がかかるし。焙煎機を買ったものの、焙煎したコーヒー豆を販売するまでには、なかなか至りませんでした。
きっかけは、ひょんなことからやってきました。焙煎機を買ってしばらく経ったころ、知り合いから「アパレルのポップアップイベントをやるから、そこでコーヒーを振舞ってくれない?」と声がかかったんです。
だったら、あらかじめ“看板”もあったほうがいいと、ブランド名を考え、オンラインショップを立ち上げることにしました。思っていたよりずっと大変で、めちゃくちゃ時間がかかりましたが、平日の夜や週末に時間を見つけて、イベントまでになんとかサイトを完成。そんなバタバタした感じで、僕の週末副業焙煎士のキャリアはスタートしたのです。