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note8 黄泉の国

#13 黄泉の国 原文

#14 黄泉の国(よみのくに) 解説


伊邪那岐命は、伊邪那美命にもう一度会いたいと思い、後を追って黄泉の国(よみのくに)に行かれました。
黄泉の国とは、「よもつくに」とも言います。その黄泉の国とは地下にある死者の住む国で、穢れた所とされています。つまり「死者の世界」です。

伊邪那岐命は黄泉の国に続く黄泉比良坂を下り、黄泉の国の扉の前にたどり着きます。伊邪那岐命が扉の向こうにいるのであろう伊邪那美命に声をかけると、扉の向こうから懐かしい伊邪那美命の声が返ってきました。
そこで伊邪那岐命は
「いとしい最愛の我が妻よ、私とあなたとで作った国は、まだ作り終わっていない。だから、一緒に帰ろう」
と言われます。神生みの最中でしたから、「まだ完成していない」と、奥様に言ったのです。
すると伊邪那美命は、
「ああ悔しい、なぜもっと早く来てくださらなかったのですか。私はもう黄泉の国の竈で煮炊きした食べ物を食べてしまったので、帰ることができません。(これを 黄泉戸喫 よもつへぐい と言います)しかし、いとしい私の夫が、わざわざ迎えにきてくれたのですから、なんとかしてご一緒に帰りたいと思います。しばらく黄泉の国の神と相談してみますので、その間私の姿を絶対にご覧にならないでください」
とおっしゃって御殿の中にお入りになりましたが、いつまでたっても出てこられません。とうとう伊邪那岐命は待ちきれなくなり、約束を破って、御殿の中にお入りになりました。
伊邪那美命が「絶対にご覧にならないでください」と言ったにもかかわらず、その約束を破ってしまったのです。
ところが、中は真っ暗で何も見えません。そこで、伊邪那岐命は、左耳のあたりの髪を束ねたところに刺していた清らかな櫛の端の太い歯を一本折りとって、これに一つ火を灯し、中をご覧にになると、伊邪那美命の身体には、ウジ虫がたかり、頭には大雷(おおいかづち)がおり、胸には火雷(ほのいかづち)がおり、腹には黒雷がおり、陰部にはさき雷がおり、左の手には若雷がおり、右の手には土雷がおり、左の足には鳴雷(なりいかづち)がおり、右の足には伏雷がおり、合わせて八種類の雷神(いかづちかみ)がゴロゴロの音をたてて出現していました。
伊邪那岐命はこれを見て恐れ驚きて逃げ帰られましたが、伊邪那美命は、
「私によくも辱(はじ)をかかせた」
と言って、しこめと呼ぶ黄泉の国の醜い女たちを遣わして追いかけさせたのです。そこで伊邪那岐命は、髪につけていた黒い木の蔓(つる)の輪を取って投げ捨てると、野葡萄の実がなりました。この蔓の輪は単なる飾りものではなく、輪の形になっていることから、「永遠なるもの」を象徴しているのです。
この野葡萄の実をしこめたちが取って食べている間に逃げました。しかしなお、しこめたちが追いかけてきたので、今度は右耳のあたりの髪を束ねたところに刺していた清らかな串の歯を折って投げ捨てると、竹の子になりました。これをしこめたちが引き抜いて食べている間にまた逃げのびました。
しかしながら、八種類の雷神が大勢の黄泉の国の兵士を引き連れて追いかけてきました。そこで伊邪那岐命は、腰に帯びている十掴みもある長い十つかの剣を抜いて、うしろ手で振りながら逃げました。
なお追いかけられて、とうとう黄泉の国と現実の世界との境界である黄泉比良坂の坂本まで来たときに、その坂本になっていた桃の実を三つ取り、待ち受けて投げつけたところ、黄泉の国の軍勢はことごとく逃げ帰ってしまったのです。
そこで伊邪那岐命は、その桃の実に
「あなたが私を助けたように、この葦原中国(あしはらのなかつくに)に生きているあらゆる人々が、つらい目にあって、苦しみ悩んでいる時に助けてあげてください」
と言われ、桃の実に意富加牟豆美命(おおかむづみのみこと)という神名を与えました。
葦原中国とは、高天原と黄泉の国の間の世界のことで、日本を指すこともあります。

最後には、伊邪那美命ご自身が追いかけて来られました。そこで伊邪那岐命は、千人もかかって引くほどの大きな岩をその黄泉比良坂に置いて出入口を塞いでしまいました。そして、その大岩を間に置いて、伊邪那岐命と伊邪那美命が向き合いながら別れの言葉を交わしたとき、伊邪那美命は、
「いとしい我が夫よ、このようなことをなさるならば、私はあなたの国の人々を、一日に千人殺します」
と言われました。
それに対して伊邪那岐命は、
「いとしい最愛の我が妻よ、あなたがその様なことをなさるならば、私は一日に千五百人の子を産むようにさせよう」
と言い返しました。
このようなわけで、人代では一日な必ず千人の人が死に、一日に必ず千五百人の人が産まれるようになったのです。
こういう次第で、その伊邪那美命を名づけて黄泉津大神(よもつおおかみ)と申します。また伊邪那岐命に追いついたので道敷大神(ちしきのおおかみ)とも申します。また、黄泉の坂を塞いだ道反之大神(ちがえしのおおかみ)と申し、さらに黄泉の国の出入口を塞いでおられる黄泉戸大神(よみとのおおかみ)とも申します。そして、その黄泉比良坂は今の島根県(出雲国)にある伊賦夜坂(きふやさか)という坂です。

ここまでが原文の解説です。

次回は、原文に出てきた よもつへぐい についての補足とそこから大嘗祭についてもお話ししたいと思います。

今回はここまでです。

ありがとうございます🌈

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