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【本の紹介】「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか?(今井むつみ著)

今回は私が読んだ本「何回説明しても伝わらないはなぜ起こるのか?」を紹介します。
仕事のストレスの原因の代表格ともいえる「説明しても伝わらない」についての本ですが、「嘘」にまつわるエピソードと絡めて書いてみました。
皆さんのお役にたてれば嬉しいです。


どんな本?

「あ、今、意図と異なる捉え方をされてしまった」という経験は、誰もが一度はお持ちなのではないでしょうか?

この本は、そんな「伝わらない」には、人間の認知のメカニズムに原因があると言います。そして、その原因を踏まえて、どのような姿勢でコミュニケーションをとっていくのか?ということを教えてくれる本です。
著者は本書の終章でこんなことを書いています。

いいコミュニケーションができなければ、ビジネスパーソンとして熟達しているとは言えない、といっても過言ではないくらい、コミュニケーションはビジネスにとって重要な基礎なのではないでしょうか。

終章 コミュニケーションを通してビジネスの熟達者になるために より

ビジネスパーソン向けに、著者自身が思い描く理想のコミュニケーションにも触れられている本ですので、仕事上で「伝わらない」を経験された方には「そうだったのか」という気づきをもたらしてくれます。

著者は認知科学、言語心理学、発達心理学を専門とする大学教授で、国際認知科学会(Cognitive Science Society)、日本認知科学会フェローを勤められています。

このため、認知についての説明は、事例も豊富で、かつ、とても分かりやすく、特に様々な「認知バイアス」の説明は興味深いものになっています。
・相関を因果と思い込む思考バイアス
・「小さな世界」の認知バイアス
・相対主義の認知バイアス
・AかBかのバイアス
・流暢性バイアス(相手の流暢さが引き起こす判断のゆがみ)

これらの認知バイアスをうまく回避・活用しながら、
「伝わらない」「分かり合えない」を
「伝わる」「分かり合える」に変えていこうと思える、そんな一冊です。

私の気づき

この本の中で、最も気になったのは、以下の文章でした。

ねじ曲げられた記憶に関して話しているときには、真実を述べていないにもかかわらず、本人に嘘をついているという自覚はありません。その記憶は本人にとっては「真実」なのです。

第2章  「話してもわからない」「言っても伝わらない」とき、いったい何が起きているのか? より

というのも、私が会社員時代に「え?なんで?」と最も疑問に思っていた事件(というのは言い過ぎかもですが)が「嘘をつく」という行為だったからです。

嘘をつかれると、誰しも「憤り」を感じるものです。私も同様でした。

明らかに事実と異なることは、こちら側が把握できるにも関わらず、嘘をついている人は「バレない」とでも思っているのだろうか??
と、嘘をつかれたことのある皆さんも、思ったことはありませんか?

さらに、私は仕事をするうえで「事実」を重要なファクターだと思っていたので嘘は「混乱のもと」としか捉えられず、非効率という感覚がありました。
さらに「子供じゃないんだから」という、少々、見下してしまっていたところもありました。
今、振り返ると「正義感」のようなものがあったんだと思います。

そして、著者の上記の引用を見て「頻繁にありえるエラーなのかも」という前提に立つことにしてみました。
嘘をつきたくてついている訳ではない、何らかの彼らなりの理由があって、結果的に嘘になっているならば、受け取り手はどういった言動をしていくのが良いのだろうか?と、考えてみました。

こういう時に「自分は嘘をつかない」という前提に立ってしまうと、対立構造(つまりは、決めつけ)にしかならないので、結論は出ません。

なので「自分も意図的ではない嘘をついている」という前提に立って考えてみます。

そうすると、どうでしょう。
・真実を言われても反論したくなる
・説得されるのはもっとイヤ
・先に私の考えを聴いてほしい
といった感覚が生まれました。

うーん、こういう感覚なのかぁと思うと、当時の事件の相手の方々に対してのアプローチでは、たいてい「事実整理」をしていたような記憶なので、少々まずい行動パターンだったなと思いました。

では、どうすればよかったか?というと、最後に記載した感覚の
「先に私の考えを聴いてほしい」
これを最初のアプローチとするのが、良さそうかな?と思いました。
意図的ではなく嘘をついてしまっている側からすると、何か目的があるはずで、その目的に沿った意見に耳を傾けることが、嘘をついている事実よりも大切なことなのではないでしょうか。
さらに、意図的な嘘なら、もっとこのアプローチが根本的な課題を解決しそうな気もしてきました。

とはいえ、嘘をつかれた側とすると、
「先に私の考え(=あなたは嘘をついたでしょう。認めなさいよ、的な考え)を聴いてほしい」
ということを、願ってしまいますよね。
きっと、その背景には「その嘘で私が被害を受けている」といった気持ちがあると思います。被害がないものであれば、きっとスルーできるでしょうから。

もし、嘘をつかれて憤りを感じているならば、憤りをそのまま表現するのではなく、まずは相手が嘘をつく目的から考えてみる、というのがよさそうなアプローチだと思います。
ぜひ、一度試してみてください。

いや、それでは嘘をつかれた自分の憤りの気持ちが収まらない・・・という場合には、別の第三者に入ってもらって、自分と彼らの気持ちの整理をしてもらう、というアプローチを検討してみるのはいかがでしょうか?

おすすめポイント

「嘘をつく」に遭遇した時のエピソードで満載になってしまいましたが
本書は、人の認知のメカニズムを理解して「少し立ち止まる」ことを誘発してくれる良書だと思います。

ですので、以下の方にお勧めです。
・やると言ったのにやらない部下に困っている管理職の方
・同僚や上司に「うまく伝わらない」を感じてストレスを感じている方

この本で「そういうことなのか」の後に、少し立ち止まって
「もし、自分がその認知バイアスがあるとしたら」という前提で考えると
「どう言ったら伝わるか」を考えられるようになると思いますよ。


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