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岡上淑子『はるかな旅: 岡上淑子作品集』(河出書房新社、2020年)を読みました。

先週から今週にかけての日経新聞「女性写真家の開拓精神十選」が素晴らしかったです。独創的な日本の女性写真家を紹介するシリーズでしたがその中で紹介されていたのがシュールリアリスティックなコラージュ作品を作り上げている岡上淑子さんでした。早速本書を入手し鑑賞しました。LIFE誌などの雑誌の切り抜きでつくられというたのが信じがたいほどの完成度と作品が醸し出す静謐さやなんとも言えない情念に魅了されました。戦後復興期のわずか7年ほどの間にこれだけのアートがつくられたというのが驚きです。それにしても日経のアート欄レベル高いな~

本書より…

国が負けて、女性が解放され、自由を探る時代になったと、若い私は単純に思っていました。コラージュは、そんな私の青春でした。
 それは、笑顔あふれる健康的な青春ばかりではありません。不気味な静寂だったり、執拗な憎悪だったり、冷酷な裁きだったり。女性が持つさまざまな心の綾というのでしょうか、それとも情念といいましょうか、そんなモノを、知らず知らずのうちに私は作品に蒔いていたのでした。女性の心のひだを視覚化すると、こんな辻褄の合わない光景になり、それが、そっとのぞいてみたいようなコラージュという作品になったにでしょうか。地底深く脈々と流れる地下水のように、揺れ動く心のひだは女のDNAにそっと刷り込まれ、脈々と受け継がれているのかもしれません。この中の1枚に貴女が共鳴したのでしたら、そのみなもとはいつの世か貴女が経験した青春だったのかもしれません。

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