西條 剛央『チームの力: 構造構成主義による”新”組織論』(ちくま新書、2015年)を読みました。
東日本大震災後に「ふんばろう東日本支援プロジェクト」でボランティア活動を組織化した著者による組織論。状況を俯瞰して本質を抽象しそれを実践知に結びつけているところに惹かれました。コミュニケーション一つをとってみても現場から生まれた具体的な方法論がありそれを原理原則に昇華させています。「正義と正義の闘い」はどこにでもありますがそれも個人がなぜそのような正義を持つようになったかという「語り」を共有することで組織を整えていくというのは、普段、正義と正義から生まれる戦争に悩んでいる私にとっては目から鱗でした。分権的に良い組織を作りたいと日々思っていますがそのための知恵をたくさん頂きました。
本書より…
そうした非建設的なやりとりは、同時に周囲の人を異様に消耗させる。そのため、「建設的なやり取りをするための7ヵ条」をつくって共有した。それは「すべての人間は肯定されたいと願っている」という“人間の原理”に支えられている。
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感謝は肯定である。
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理想の状態は、お互いに感謝の気持ちを伝えることで「肯定の循環」が起こり、それをエネルギーにチームが駆動していくことだ。
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チーム作りに役立つ原理が、“価値の原理”である。価値の原理とは、“すべての価値は目的や関心、欲望といったものに応じて(相関して)立ち現れる”というものだ。
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したがって、この文脈でいえば、チームの目的や理念を抜きに、どういうチーム編成がよいとか、どういう戦略がよいといったことを議論することはできない、ということだ。
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欲望により現実を歪んで把握していたならば、どんなに知性を巡らし、戦略を積み上げても、“正しく間違える”ことになる。
このことの恐ろしさを、経験を重ねてきたリーダー(経営者)は身をもって体感している。経営者には瞑想や禅に取り組む人が多いが、それは精神を明鏡止水に保つことで、自我や欲望から距離を置き、不安や怖れがない穏やかな状態から物事をみられるようにするためだ。それは、感性を整え、知性を最大化する方法でもあるのだ。
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「リーダーシップは、人のビジョンを高い視点へと持ち上げること、人のパフォーマンスを高いレベルに引き上げること、人格を通常の限界を超えて陶冶すること、である。」
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そこで、「その価値判断の根本にある関心は何か?」「その関心が生まれたきっかけは、何か?」とさかのぼって考えていく。言い換えれば「自分と異なる価値判断をしている人は、どのようなきっかけから、どのような関心を持ってそう判断しているのだろう?」と問いを立ててみるのだ。