松本 正彦『たばこ屋の娘』(青林工藝舎、2009年)を読みました。

劇画という新しいジャンルを開拓した松本正彦の作品集。社会の底辺の弱き者の繊細な感情を描くマンガに心が動きます。当時まったく評価されなかったこうした作品群が掲載されたのはアダルト雑誌だったという悲哀。松本さんはその後マンガをやめ切り絵作家になったとのこと。死の直前のようやくフランスなどでヨーロッパで評価されました。真に創造的なものはこうして生まれることもあるのですね。4畳半の木造アパートの部屋など私の親たちか少し上の世代が若かった頃の日本が描かれていますがそれは別の国のよう。世界や社会は変わるものなのですね。

本書より…

作品の掲載誌は、競輪場に言った人が帰りに買って電車で読んで、家に帰る前に捨てるような雑誌です。エロ本でないのは「リイドコミック」ぐらいでしたね。それ以外は純粋なマンガファンが読むものとは違いましたから、そういう点では大いに不満でした。エロ雑誌にこんな作品が載ってても、ストリップ劇場のコントみたいなもので誰も観なかったでしょう。出版社がクレームもつけずに使ってくれたのは不思議でしたね。

たばこ屋の娘

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