「ド田舎育ちのサッカー少年がJリーガーと対等になれた理由」6
郡市大会
2年生になった
1年生が入ってきたが3人だけなので相変わらず小さい部のままだった
3人とも私の1個上の先輩の弟だった
3人共S地区出身
3人共良いやつで可愛かった
新人戦やトレセンを経て1年時よりは実力が付いているのを実感していた
精神的にも少し大人になっていた
新年度になると毎年の流れとして
地元のフェスティバル→郡市大会→下越大会という日程をこなしていく。
地元のフェスティバルは優勝する事が出来てその勢いのまま郡市大会に入った。
郡市大会の出場チームはフェスティバルと同じ顔ぶれだが優勝する事は出来なかった
チームとして強いわけでは無かったし、スーパーな選手がいるわけでもないので安定感が無かった、郡市大会で負けた事により危機感が出て下越大会までの練習はとても充実した記憶がある。
そしていよいよ県大会をかけた下越大会が始まる
リベンジ
下越大会は予選トーナメント→決勝リーグという流れになっている。
郡市大会の結果で下越大会の組み合わせが決まる、郡市で優勝出来なかった私達は下越大会で強いチームと戦う事が事前に確定していたし心の準備もしていた
3つの予選トーナメントがあり
そこを勝ち抜いた3チームが決勝リーグに進めるレギュレーション。
私達が入った予選トーナメント最大の敵は新人戦0ー3で負けたあのH中だ。
順調に勝ち進めば
予選トーナメント決勝で当たる。
強いチームと戦う準備はしていたしリベンジしたいと強く思っていたが
「予選で当たるなよ」
と少し弱気にもなっていた
下越大会が近づくにつれ
「絶対勝って県大会に行く」
強い気持ちが持てた
いよいよ下越大会が始まった
私たちは苦戦しながらも勝ち抜き予選トーナメント決勝にたどり着いた
H中は順当に勝ち進んできた
予想通りH中と
決勝リーグをかけて戦う事になった。
下馬評では私達のチームは約20チーム中5、6番目くらいの評価だったように思う
H中は1、2番の評価だった。
私たちは0−3で負けたあの日から常に頭の中にはH中があった
次は必ず勝つと誓ってトレーニングをしてきた
その成果を見せる時が来た
試合が始まる
挨拶する整列の時点で凄い体格差だ
私達のチームは170センチ代なんていないちびっ子チーム
H中はごろごろいた記憶があるし180近い選手もいた
平均身長だと5センチ以上の違いがあったように思う
H中の監督はトレセンの監督で、試合に出ている選手のほとんどはトレセン選手だった
私達のチームは私を入れて2人だったと思う
これだけでチーム力の差は歴然だった。
キックオフ
予想通りH中がボールを保持しながらゴールに迫ってくる
この時私たちのフォーメーションは3−5−2
私はFW
3バックのサイド2人はスポ少からずっと一緒にやってきた2年生のNとD
センターは中学からサッカーを始めた運動神経抜群のN君
この3人を中心にギリギリの所で相手の攻撃を防いでいく
私たちは耐えながら隙を見てカウンターを仕掛けたいが上手くいかない
そして前半が終わる間際ついに1点取られてしまう
ハーフタイムベンチに戻ると、前回H中と試合をした時と雰囲気が違う
前回はもう負けた様に暗くなっていたが
今回は違った
「1点リードされたけどまだ負けてない、まずは1点取ろう!」
前向きな声を掛け合いながら後半のピッチに向かった
後半が始まった
前半と同じくボールを保持される苦しい展開だが3バックを中心に耐え続ける。
相変わらず私達の攻撃は上手く行かないが少し違和感を感じる
「ピッタリ付いていたマークが少し離れてきた」
攻め疲れという言葉がある
H中はずっと攻めていた
H中はゴールを奪うためにボールを動かす、マークを外す為にスプリントを繰り返し消耗していた。
攻めている時のDFはボールを奪われた時の準備をしなければいけないが、ずっと攻めているとその準備を怠ってしまう時がある
私はその瞬間を突くと決めた
しかし流石のH中だ集中がなかなか切れない
時間は残り1分
ついにその時が来た
H中からDFがボールを奪って先輩のM君(チーム1のテクニシャン、スルーパスが得意)にボールが渡った、その瞬間私のマークがボールウォッチャー(ボールだけを見る事)になった
「今だ」
私はピッチ左から中央にダイアゴナルランをしてマークを外した
M君はそれを見てスルーパス
キーパーが出てこれない絶妙な位置だ。
私がボールをタッチした時には後から相手DFが迫っていた
「ドリブルで運んで奪われたら終わりだ、ここから決める」
ペナルティーエリア外20メートル付近から右足を思い切り振り抜いた。
インステップキックで放たれたボールは無回転でゴールの遥か上に飛んでいく
「外した」
そう思った瞬間ボールがゴールに向かって急激に落ちていった
ボールはクロスバーを直撃しネットに吸い込まれた
ついにH中からゴールを奪った。
20年経った今でも鮮明にこのゴールの事を覚えている。
終了間際に追いつきそのまま後半終了の笛が鳴った
予選トーナメントは即PK戦だ
PK戦が始まる前H中は負けた様に肩を落としていた
私達はここまで来たから絶対に勝つと意気込んでいた
PK戦の結果私達は全員が決め、H中は外してしまい
PK戦で勝利する事が出来た
ジャイアントキリング達成だ。
0−3で負けた相手を8ヶ月後の本番で倒した。チーム一丸となってトレーニングに励んだ日々が報われた瞬間だった。
個人としても0−3で負けた日からガムシャラにトレーニングをしてきた
県トレセン選手と出会い視野が広がった
真剣にサッカーと向き合った日々で心も強くなり自分に自信を持つ事が出来た。
今日は少し自分を褒めてもいいかな
そんな事を考えながら勝利を喜んだ
予選トーナメントを勝ち進み次はいよいよ県大会をかけた決勝リーグ
弱小ちびっ子軍団は決勝リーグを勝ち抜き創部初の県大会に出場する事は出来るのか!?
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