現代の人事部門の課題
1. 中央集権的な管理の弊害
伝統的に人事部は強い権限を持ち、異動や評価を一方的に決めてきました。しかし、現場のニーズを把握せずに制度を押し付けると、社員のモチベーションが下がり、結果として組織の生産性が低下します。
2. 現場との距離感
現場からは「人事部が現場の実情を理解していない」という不満が多く、現場と経営との橋渡し役としての機能が不十分でした。
3. 業務量の過多
少人数の人事部門で多くの業務を抱えているため、本来の戦略的な人材マネジメントに時間を割けない現状があります。
解決策
1. HRBP(人事ビジネスパートナー)の導入
三井化学やドミノ・ピザが導入しているHRBPは、事業部門に張り付き、現場と経営をつなぐ役割を担います。HRBPは事業戦略を理解し、組織の課題に深く関与することで、単なる事務的な人事業務ではなく、価値あるパートナーとして貢献します。
2. 社内転職制度の導入(みずほFGの事例)
社員のキャリアシートをデータベース化し、社員自身が希望する部署に応募できる仕組みを作ることで、社員の自主的なキャリア形成を促進します。これにより、現場は必要な人材を迅速に確保でき、人事部は異動の直接管理から外れることで戦略的業務に集中できます。
3. 業務の取捨選択
味の素の藤江社長が提唱する「やらないことを決める」という方針は、人事部門の負担軽減に有効です。不要な業務を廃止し、外部委託やデジタル化を活用することで、人事部門は戦略的な人材活用に注力できるようになります。
まとめ
現代の人事部門に求められているのは、「管理者」から「支援者」への転換です。現場と経営の間に立ち、社員一人ひとりの成長を支援し、組織全体の最適化を図る存在へと進化することが求められています。また、人事部自らが変革を起こす気概を持ち、現場や経営陣と真摯に向き合うことで、組織全体の活性化が期待できます。