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うたうたい渡辺美里アルバムヒストリー~3rd. BREATH

チャプター1~steppin'nowシーズン
3rd 1987年7月15日 BREATH

サードアルバムは実験的というか、方向性の確認というか、他のアルバムとは一線を画すように思えます。セールス的には45万枚以上と、とてつもなく売れているのですが、渡辺美里成長期にしては、一度バネが縮むようなイメージです。このあと、メガヒットを連発するためのパワーをため込む時間、そんな位置づけです。
岡村靖幸が制作スタッフから外れ(本人がデビューで忙しかった?)、小室哲哉2曲、木根尚登1曲とTMネットワーク色も薄まる。しかし、そこへ後に超大物プロデューサーになる伊秩弘将、西平彰、清水信之、運命共同体的パートナー佐橋佳幸が本格的に加わります。新しい制作陣で今までと異なるテイストを落とし込んでみよう、渡辺美里本人もプロデューサーとして作りこんでみよう、という方向性を感じます。2021年視点で見ると、奇跡のような人員で囲まれたアルバム。当然、名曲も多数あり。本人が初の全曲作詞に挑みました。

1. 「BOYS CRIED〜あの時からかもしれない〜」
作詞/渡辺美里 作曲/伊秩弘将 編曲/西平彰
渡辺美里のアルバムは必ず1曲目に「全部持っていく」。こちらの期待だったりワクワクだったり、ドキドキだったり。全部です。始まりにして絶頂。このアルバムやべーよ、と開始1秒で全部持っていきます。ライブの演出から生まれた考えなのかもしれません。また、名言中の名言「Go ahead!」が生まれた瞬間の曲でもあります。
1992年、セルフカバーアルバム「HELLO LOVERS」を引っ提げた、全国ツアー「渡辺美里 '92 スタジアム伝説」では、かなりアレンジの入った、グルーブ感あふれるバージョンを披露。「HELLO LOVERS」に入り損ねたのかな?と思わせる完成度の高さでした。

2. 「HAPPY TOGETHER」
作詞/渡辺美里 作曲/佐橋佳幸 編曲/佐橋佳幸
これまたやべーよ、となる、とんでもない名曲。1970年代の骨太マッチョなアメリカンロックのようなカッコよさにしびれる。佐橋!すげー!あんたすげーよ!と唸る。個人的な渡辺美里楽曲ランキングのベスト5に入ります。2021年以降、「HELLO LOVERS 2」を作るなら、最も入れて頂きたい曲。ライジングサンロックフェスの1曲目で、この曲とともに渡辺美里が登場したら、石狩に地殻変動が起こり、北海道が変形してしまうくらいのパワーが。。。なんて妄想をしてしまいます。それぐらいとにかくカッコいい。うたうたい渡辺美里の真骨頂、ここにあり。

3. 「IT'S TOUGH」
作詞/渡辺美里 作曲/伊秩弘将 編曲/西平彰
このアルバムから唯一のシングルカット曲。アイコニックなフレーズから始まるメッセージ性の強い歌詞です。時はバブル前夜、「それでいいのかしら、ほら、あなたのことよ!」とパワフルなうたうたいを披露。普遍的なメッセージは2021年現在でも僕らの心に刺さるのです。

4. 「Milk Hallでおあいしましょう」
作詞/渡辺美里 作曲/佐橋佳幸 編曲/清水信之
おそらくこの歌詞を書いた渡辺美里は20歳ころ。若々しくも思い出に浸りつつも、新しい一歩を踏み出すために「明日天気になぁれ」です。もうアッパレです。とてもとても前向きな歌です。

5. 「BREATH」
作詞/渡辺美里 作曲/伊秩弘将 編曲/清水信之
アルバムタイトルナンバーにして、なかなか実験的。作詞家渡辺美里として、あまり使わない「あなた」と「わたし」が際立った仕上がりです。愛についてうたう、女性らしい歌です。

6. 「Richじゃなくても」
作詞/渡辺美里 作曲/渡辺美里 編曲/清水信之
とてもとてもエポックメイキングな楽曲です。なぜなら、今後の渡辺美里のスタイルを確立する、ホーンセクションの存在が試みられました。30年以上経過しても、そのスタイルは不動。華々しいビッグバンド形式の楽曲です。なおかつ、うたうたいとしても一皮むけたようなボリューム感ある仕上がり。ひたすら気持ちよくなれる、晴々としたうたいっぷりです。

7. 「BORN TO SKIP」
作詞/渡辺美里 作曲/木根尚登 編曲/清水信之
愛の決意表明です。「さよなら僕を愛せなかった友達、さよなら僕が愛さなかった人たち」ここまで赤裸々にうたいあげる当時20歳の女の子。作曲の木根尚登はTM NETWORKで「Time Passed Me By (夜の芝生)」「Fool On The Planet (青く揺れる惑星に立って)」を制作した頃と同時期。隠れ名曲をどしどし発表していた、アルバムアーティストには欠かせない重要人物です。

8. 「HERE COMES THE SUN〜ビートルズに会えなかった〜」
作詞/渡辺美里 作曲/小室哲哉 編曲/西平彰
1966年生まれの彼女。ビートルズの初来日した年でもあり、ビートルズに会えなかった彼女。そんな歌です。TM NETWORKがコーラスに参加。余談ですが世の中で「Wow wow」を一番美しく歌うのは宇都宮隆だと思います。1987年に20代前半だった世代にはヒーローもメサイアもいないのか。時はバブル前夜、明るく希望に満ち満ちた時代のように思えるが、暗い側面を垣間見たように思えます。

9. 「PAJAMA TIME」
作詞/渡辺美里 作曲/小室哲哉 編曲/清水信之
すごく根気よく、煮詰めて煮詰めて仕上げた歌詞のように思えます(想像)メロディに合わせて、言葉を並び替え、違う言葉に置き換えてみたり、足したり、引いたり、すごく「根気のいる作業なのよ」と本人は語る。(※この曲のこととは言ってません)タイトルと歌の内容がマッチしていないように思えますが、一人で布団の中でいろいろ考えていたのかな(想像)作詞家渡辺美里ここにありです。

10. 「風になれたら」
作詞/渡辺美里 作曲/佐橋佳幸 編曲/佐橋佳幸
前作「Lovin’you」の「言いだせないまま」と姉妹曲(勝手)。佐橋佳幸とスタジオで「こうかな?どうかな?」と話しながら煮詰めっていったイメージです。「ふわり」「ぽろん」といった言葉は、4年後の1991年「卒業」という曲で「さらさら」と「はらはら」へ昇天。また、この曲から「虹をみたかい」が生まれたようにも思えます(想像)

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