うたうたい渡辺美里アルバムヒストリー~6th. tokyo
【チャプター2~powerシーズン】
6th 1990年7月7日 tokyo
野球で言うなら4番バッターの登場。圧倒的な存在感があるアルバム。名盤中の大名盤です。大切な宝箱のような、30年以上経過した今でも、このジャケットを見るだけでときめいてしまいます。
発売されたのは1990年7月。逆算すると1989年終り頃から1990年春頃にレコーディングされた(推測)。日本がバブル経済の絶頂期でいろいろな意味で輝いていた時代。そんな光に満ちた社会環境と、前作「Flower bed」で海外武者修行をしてきた自信。それらが際限なく溢れたアルバムです。
当時24歳の渡辺美里が東京で何を感じ、僕たちに何を伝えたかったのか。作詞家としてもワンランクアップを果たした、金字塔たるべき名曲の数々。30年経過しても色褪せることなく、その力強いメッセージは僕たちを動かすのです。
1. 「Power -明日の子供-」
作詞/渡辺美里 作曲/小室哲哉 編曲/小室哲哉
名曲中の名曲がまたもやアルバム1曲目に。
小室哲哉軸で見ると、
TM NETWORKがTMNになる過渡期。
セルフカバー「DRESS」
ソロプロジェクト「Digitalian is eating breakfast」
その後の「RHYTHM RED」の間に位置する本作品。
「いろいろ作ったけど、これは美里に歌ってほしい!」
というイメージです(妄想)。
渡辺美里+小室哲哉の最高傑作だと思っています。
のちにエイベックスで小室哲哉と
一大帝国を築く久保こーじが
参加しているのもエポックです。
前作で大きく経験値を積んだグレイトフルな
ボーカルにさらに優しさが兼ね備えられました。
そう、本作は全て「優しい」のです。
作詞も秀逸すぎて震えが止まりません。
「夏が飛び立つように 季節の花が
足もとを飾るころ 逢えればいいね」
天才か!!!ジーニアスか!!!
「明日の子供達、光の子供達」は
2021年の40代くらい。
「風の中、まっすぐに歩いて」いるでしょうか。
2. 「サマータイム ブルース」
作詞/渡辺美里 作曲/渡辺美里 編曲/奈良部匠平
問答無用の無差別級チャンピオン。
渡辺美里楽曲ランキング31年連続1位で殿堂入り
(個人的)
人類史における楽曲ランキングでも31年連続1位
(個人的)
間違いなく人生において一番好きなうたです。
パイナップルロマンスで青春を持っていかれ、
サマータイムブルースで人生を持っていかれました。
抜群のイントロから「あっ、この曲絶対好き」と
誰もが思ったはず。
ギターの佐橋佳幸、神。
日本国民の琴線に触れるメロディラインは
渡辺美里作曲。
「ブルースを歌うにはまだ若すぎる」だった
渡辺美里が、彼女なりの表現方法で
うたいあげるブルースです。
「素敵」という言葉はこの歌のためにあるのでは
というくらい素敵です。
3. 「恋するパンクス」
作詞/渡辺美里 作曲/奈良部匠平 編曲/奈良部匠平
高校時代の渡辺美里本人をうたった歌と言われます。
ミスセブンティーンの審査会で
「好きなアーティストはセックスピストルズ」と言っただけあります。
さすがです。
「虹を見たかい」→「サマータイムブルース」→「恋するパンクス」→「Power -明日の子供-」と1年間で4枚のシングルをリリース。
その3枚目にあたる本作は歴代シングルの中でも
やや異色。
ここまでパンクロックテイストのシングルは
他にはありません。
ギターにバービーボーイズの
鬼神いまみちともたかを招集。
この頃のいまみちともたかは数多くのアーティストの
レコーディングに参加し、
スタジオアーティストとしても類まれな才能を発揮。
元米米CLUBの奈良部匠平も初参加。
今後もたくさんの作品に携わります。
浮かれ気味のバブル経済を皮肉るような歌詞は
まさしくパンクです。
4. 「POSITIVE DANCE」
作詞/渡辺美里 作曲/奈良部匠平 編曲/奈良部匠平
「この時代 動かしていくのは 錆びついた常識や力より
はみだしてる青春の方が強いはず」
ゾクゾクするようなメロディーラインに載せて
This is MISATO的な、ドンピシャな歌詞。
40代になった今でも仕事の指標として掲げています。
ダンサブルな本曲は、ライブでも
ジャネット・ジャクソンのリズムネイション
を彷彿とさせるパフォーマンスを発揮。
何でもできちゃう渡辺美里です。
5. 「虹をみたかい(tokyo mix)」
作詞/渡辺美里 作曲/岡村靖幸 編曲/岡村靖幸
あきれちゃうくらい、「すげーな」です。
こんな難しい歌をかっちりうたいあげる。
シンプルに「すげーな」です。
カラオケで歌ったことがある人なら
わかると思うけど、圧倒的難曲。
これをテレビの生歌でうたいあげる、女神降臨の
瞬間がありました。
1989年に夜のヒットスタジオに出演、
放送機材のトラブルで「ムーンライトダンス」を
きちんと歌いきれなかった事故がありました。
以下妄想です。
(マネージャー的な人)
夜ヒットから、この前のお詫びに
2曲歌っていいよってオファーあるよ
(渡辺美里)
ホント!?そしたら、パイナップルロマンスと
虹を見たかいにする!メドレーじゃいやよ、
2曲ともフルコーラス!
(本番/生放送)
「♪こぉんやはっこぉのばぁしょできみにあえてとてもうれしぃ
~パ・イ・ナ・ツ・プ・ルッ!~
~はぁじめてぇのてぇいすとおぶきす~
~ぶれぃきんなぉう、ぶれぃきんなぉう♪」
(日本国民)
。。。渡辺美里ってこんな感じ?すげーな。。。
(渡辺美里)
やってやったぜ!ふぉぉぉーっ!(内心)
このカタルシスを当時味わいたかった。
6. 「バースデイ」
作詞/渡辺美里 作曲/伊秩弘将 編曲/清水信之
都会で生きることの情景描写が秀逸。
こんな社会人に憧れました。
「いつの日か わたし あなたと違うやさしさ
選ぶでしょうか Wow」
「Wow」にこめられた想いが切ないです。
この3年後、同じ都会情景描写「さえない20代」
で切なさはさらに加速します。
7. 「Boys kiss Girls」
作詞/渡辺美里 作曲/伊秩弘将 編曲/清水信之
歌謡曲はいつからJ-POPと呼ばれるようになったのか。
(J-WAVEが命名?)
その中間的な立ち位置が本作と思います。
伊秩弘将によるキャッチーなメロディを
清水信之が王道歌謡曲に昇華。
こんな名曲が「サマータイムブルース」のカップリング
としてシングルに収録されるとは!
渡辺美里の勢いが感じられます。
当時、明治生命のCMソングとしてテレビで流れていました。
8. 「遅れてきた夏休み」
作詞/渡辺美里 作曲/渡辺美里 編曲/清水信之
たいせつな人へのお手紙です。
女性より男性の方に人気があると思われます。
作曲しながら歌詞をつけていくのか、その逆なのか、
制作過程をきいてみたいです。
8月の昼下がりをこんなにも魅力的に表現。
晴れてるよね、入道雲見えるよね、縁側だよね、
かき氷だよね、風鈴鳴ってるね、セミが鳴いてるよね、
太陽がぎらぎらだよね、
いくつもの情景が浮かび上がります。
9. 「ナイフとフォーク」
作詞/渡辺美里 作曲/渡辺美里 編曲/奈良部匠平
この曲はいわゆる舞台。演劇です。
きみとぼくがナイフとフォーク、ですが
ちょっと皮肉っぽくも聴こえる歌です。
「愛がたりなくなって
言葉のナイフとフォーク
きみを傷つける
キャンセルされたヒューマニティ」
ここのシャウトが全てだと思います。
この曲以外にも言えるのですが
渡辺美里はほとんどの歌で
「I=ぼく、You=きみ」
男女問わず普遍的に好まれる要因の一つです。
「I=わたし、You=あなた」もあるけれど稀。
その違いをずっと考えているけど、わかりません。
この影響なのか、40代を越えた自分も
いまだにぼくは「ぼく」と言ってます。
10. 「Tokyo」
作詞/渡辺美里 作曲/小室哲哉 編曲/小室哲哉
「TOKYO三部作」の第2作(勝手)。
小室哲哉がTM NETWORKからTMNに改名した際に
「TM NETWORKだからこういったテイストの歌を
歌わなきゃいけない。
その固定概念を壊したくて改名した」
と言ってました。
TMNの一発目のシングル「TIME TO COUNT DOWN」で
当時の僕は度肝を抜かれました。
ギターとドラムがガンガンに鳴る、ハードロックのような激しさ。
これが固定概念を壊すということか!
おそらくこの「Tokyo」も小室哲哉がTMNETWORKとして
やりたかった流れ、ある意味実験的な作品のように思えます。
唸りをあげるシンクラビア、宇都宮隆のコーラス。
力の入れようが違います。
そして、そこに20世紀都市Tokyoを描く渡辺美里。
アルバムタイトルナンバーたる所以です。
「Tokyo calling」で嘆き、
「Tokyo」で愛を叫び、
「東京生活」で喜びを。
11. 「Oh! ダーリン」
作詞/渡辺美里 作曲/渡辺美里 編曲/奈良部匠平
渡辺美里のクリスマスソングです。
「クリスマスまで待てない」
「真夏のサンタクロース」
「クリスマスはどうするの」
などクリスマス表題作がありますが
最初にクリスマスが歌詞に登場したのは
前作アルバム「Flower bed」収録「White Days」だったはずです。
夏のイメージが強い渡辺美里ですが、
冬もきっちりうたいあげているのです。
12. 「元気だしなよ」
作詞/渡辺美里 作曲/渡辺美里・佐橋佳幸 編曲/佐橋佳幸
出ました!隠れ名曲!
ライブで歌われたことないはずです。
ゆえに隠れ名曲。
3枚目のアルバム「BREATH」収録「HAPPY TOGETHER」
5枚目のアルバム「Flower bed」収録「NEWS」
これらの姉妹曲という位置づけ(勝手)
バブル真っ盛りでイケイケの日本、
一方でDCブランド&プールバー
に染まる日本男児の不甲斐なさ。
「そういうことじゃないでしょ!ほら!」
「虹色の夢、見せなさい!語りなさい!」と
元気がない男性諸君(本人は元気あるつもりかも)
に向けた応援ソングです。
ラジオで「フレー、フレー、ちゃっちゃっちゃ!でパンと終る感じ。
夢から覚めるような瞬間の曲にしたかったの」と語っていたのが
強く印象に残ってます。
なかなかの「S」っぷりも素敵。