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うたうたい渡辺美里アルバムヒストリー~4th. ribbon

【チャプター2~powerシーズン】
4th 1988年5月28日 ribbon

渡辺美里がメジャーシーンに躍り出たアルバム。
キャッチコピーは「戦後最大のポップアルバム」。
その名に恥じぬどころか、それを超越する、ベストアルバムとも呼べる完成度。ここまでの3枚を踏まえ、日本のミュージックシーンでの存在感を築き上げ、一気に加速し「powerシーズン」期(勝手に命名)に入っていきます。
収録曲も名曲揃い、参加スタッフも今後の渡辺美里と長く付き合っていくメンバーが多数。TMNETWORK、岡村靖幸、大江千里、佐橋佳幸、伊秩弘将、清水信之、有賀啓雄、80年代~90年代の日本音楽界で大活躍する、どこかで必ず目にする、耳にする、最強の布陣で作られたアルバムです。
タイトルは「ribbon」という女性名詞でありながらも、力強く、凛々しく、胸をはって前を向いていく、全曲を通してそんな姿勢が感じられます。

蛇足ですが、岡村靖幸の大名盤アルバム「家庭教師」(1990年発売)に収録された大名曲「ペンション」という歌の中に「ねぇリボン」と呼びかけるフレーズがあるのですが、このアルバムのことを指しているのか、まったく関係ないのか。とてもとても美しい謎です。

1. 「センチメンタル カンガルー」
作詞/渡辺美里 作曲/佐橋佳幸 編曲/佐橋佳幸
めちゃめちゃカッコいいギターで始まり、ホーンアレンジでボリュームを一気に膨らます、またまたライブの1曲目にぴったりなスタートです。「リボンが風に揺れるサマーデイズ~」渡辺美里の代名詞でもある、「夏うた」の始まりです。僕が初めて「渡辺美里」を知ったのは小学校6年生。収録曲センチメンタルカンガルーをバックに、ひまわりの中で微笑む、UCC缶コーヒーのテレビCMです。この時は「こんな人がいるんだぁ」くらいの感想でしたが、しっかりと記憶に。それくらいキャッチーなサビが印象的です。

2. 「恋したっていいじゃない」
作詞/渡辺美里 作曲/伊秩弘将 編曲/清水信之
アップテンポなロックナンバー。サビは1音1語の日本語歌詞法則を超越する迫力。演奏は3名のみで完成、かつDTAEなバックコーラスが3名。楽しい中でレコーディングされた雰囲気が聴き手にも伝わります。「ダーリン」という呼び名が素敵に響く。渡辺美里の「ダーリン」初登場です。

3. 「さくらの花の咲くころに」
作詞/渡辺美里 作曲/木根尚登 編曲/清水信之
4曲目「Believe」、5曲目「シャララ」と3曲セットで1作品としたい。いずれも凛とした生き方を、うたうたいとして僕らに伝えてくれる、若干22歳の渡辺美里です。本曲はキネバラ。感傷に浸りつつも前向きな気持ちをまっすぐにうたいあげる、完成度マックスな作品です。1991年リリースの「卒業」とともに是非。

4. 「Believe(Remix Version)」
作詞/渡辺美里 作曲/小室哲哉 編曲/大村雅朗
時系列では前作「BREATH」に収録されてもおかしくなかったのですが、コンセプトが異なるという理由で「ribbon」に。このエピソードからもわかるように、やはり「BREATH」は実験的な作品だったのではと思います。
転調に次ぐ転調ですが、きっちり歌う、歌うたい渡辺美里の真骨頂。とても強度のある、ガッチリとした1曲です。小学校の音楽の教科書に入れて頂きたい。

5. 「シャララ」
作詞/渡辺美里 作曲/岡村靖幸 編曲/佐橋佳幸・西平彰
岡村靖幸のメロディーを佐橋・西平の両御大がブラッシュアップ。「いつもこころだけはさびついていないよ」22歳の女の子に未だに励まされます。「空にのびるビルディング」は声に出して言いたい日本語でランクイン(独自)

6. 「19才の秘かな欲望(The Lover Soul Version)」
作詞/戸沢暢美 作曲/岡村靖幸 編曲/佐橋佳幸
セカンドアルバム「Lovin’you」に収録されたものをセルフカバー。今回は佐橋佳幸が編曲を行い、骨太ロックンロールがさらに加速。後半のシャウトはジャニス・ジョプリンが憑依したかのような迫力で圧倒。何度聴いても鳥肌モノ。この7年後、1995年の西武スタジアムライブ「She loves you 1995 Summer 10th Anniversary」では、より過激なステージを披露しました。当時、衛星放送WOWOWが完全生中継を決定し、即加入。マイクなしでスタンド席の最後列までシャウトを響かせた瞬間、「こんなことがあっていいのか!?何がどうなっているんだ!?」と日本中がざわついた(はず)。圧巻のパフォーマンスは日本ミュージックシーンの年表に間違いなく太字で載る、大事件でした。すごい。本当にすごい。

7. 「彼女の彼」
作詞/渡辺美里 作曲/佐橋佳幸 編曲/佐橋佳幸
荒々しいギターのリフで始まる夏歌。ギターの音色一本で夏を表現する佐橋佳幸は神です。楽曲のイメージと反して、「恋人のふり」が切なすぎる。「君のリボンに見とれてたら」と歌う岡村靖幸の「友人のふり」はアンサーソング的位置づけ(かな?)

8. 「ぼくでなくっちゃ」
作詞/渡辺美里 作曲/渡辺美里 編曲/清水信之
イメージよりもあまり作曲をしない渡辺美里の貴重な作品。「ぼくでなくっちゃ」と自分自身に言い聞かせる、切ない歌詞。アルバム「Lovin’you」収録曲「君はクロール」同様、前衛的な、アーティスティックな楽曲です。

9. 「Tokyo Calling」
作詞/渡辺美里 作曲/伊秩弘将 編曲/清水信之
京都出身の渡辺美里が東京について歌う、「TOKYO三部作」の第1作(勝手)。時はバブル経済絶頂期。そんな東京に22歳の彼女は何を感じたのか。マクロ的問題提起です。「あの頃」のキラキラした思い出を残すためには何をすべきなのか。33年後の現在でも同じ問題は存在するのです。

10. 「悲しいね(Remix Version)」
作詞/渡辺美里 作曲/小室哲哉 編曲/小室哲哉
30年以上経っても色褪せることのない、名曲中の名曲。小室哲哉も作曲、編曲、シンセ演奏と力を入れている。「悲しいね」とつらいことがあった人に寄り添い、前を向くための歌です。「君に泣き顔みせないように、後ろ向きで手をふるのはなぜ」。。。号泣。姉妹曲(勝手)「ムーンライトダンス」がこの物語を完結させるように思えます。

11. 「10 years」
作詞/渡辺美里 作曲/大江千里 編曲/有賀啓雄
渡辺美里の代表曲でもあり、大好きな歌の1つです。渡辺美里楽曲ランキングでトップ10入りは間違いない名曲です。「あのころは何にでもなれる気がした」、そんな自分に今は応えられているのか、常に自問自答。
1989年「SUPER Flower bed BALL '89 秋 史上最大の学園祭」東京ドーム公演でのパフォーマンスが最強と思っていましたが、2021年公式Yotubeで公開されたバージョンが、それを越えました。2011年からちょうど10年、たくさんの人の、たくさんの思いが溢れる歌となりました。


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