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うたうたい渡辺美里アルバムヒストリー~5th. Flower bed

【チャプター2~powerシーズン】
5th 1989年7月1日 Flower bed

前作「ribbon」において、日本のミュージックシーンに確固たるポジションを築いた渡辺美里が、新たな可能性と成長を求めて作り上げた意欲作。あえてコンセプトアルバムとして定義したいと思います。
最初から最後まで通して、一つの物語というか舞台、映画を見ているような感覚。渡辺美里もかなり忙しく毎日を過ごしているであろう中、ここまでの完成度に仕上げるあたり、超人レベルです。
心と身体にキレイに染み渡る極上のシャワーを浴びているような気持ちになれる、「心やさぐれ時」にいつも聴いてリセットしてます。
ニューヨーク、ロサンゼルスでレコーディングを行い、音質的にも大幅にグレードアップ。前年にTM NETWORKが大名盤「CAROL 」を海外レコーディングでリリース。それに続くかの如く、今までとは全く異なる世界観が広がる。「うたうたい」としてのパワーも魅力も豊穣さも、圧倒的にレベルアップ。本アルバムをもって、アレサ・フランクリンに次ぐ、「神の声」を手に入れたと思ってます。

1. 「NEWS」
作詞/渡辺美里 作曲/佐橋佳幸 編曲/清水信之
「みさとちゃーん」というオープンニングに続く、圧倒的なホーンセクション(このギャップが最高)そしてそれを凌駕するパワフルかつハイグレードなボーカル。しびれます。やばいくらいしびれます。社会風刺的な詞は当時のバブル経済真っただ中の日本へのメッセージ。
そして「きみの中を流れさせて」です。
こんないい女いる!?当時23歳ですよ。
やっぱりやっぱりアルバム1曲目で全部持っていきます。
ライブではちょいちょい歌詞をアレンジするのもまた素敵。
PVの渡辺美里は史上最強にキュートです。
以下、妄想です。
「日本から女の子がレコーディングに来るらしいぜ」
「女の子?何歳?」
「23歳」
「アイドルか何かか?」
「たぶんな」
「渡辺美里ですー、よろしくお願いしますー」
「ナイストゥミーチュー(おいおい、子供じゃないか、俺たち一流だぜ)」
「レコーディングはじめまーす」
「♪みさとちゃーん♪」
  「おいおい、まいったな。。。」
「♪おふぃすぢゅうのだぁれもかぁれもがいちばんのぉぉぉぉーー♪」
  「。。。まじか、こいつまじか、アレサ・フランクリンじゃねーか!」
「♪L.O.V.E.したがもつれちゃうぅぅぅーー♪アアアアッ♪」
  「ちょっと待て、ジャニス・ジョプリンの生まれ変わりか!」
    「やべえ、本物だ、負けてらんねーぜ、俺たち一流だぜ、いくぜ」
      「おう!やるぜ!スウィングするぜ!」
        「♪パラララーッ、パッパパラッパー♪パラッパパラッパ」
※完全な妄想です。

2. 「やるじゃん女の子」
作詞/渡辺美里 作曲/渡辺美里 編曲/清水信之
渡辺美里の代名詞的な楽曲。人間誰でも持っている、外面的自信、強さとその裏にある、内面的、シャイな、内気な弱い部分を自身の作曲に載せてうたいあげる。魔法の言葉「やるじゃん」です。言いたいし、言われたいし、送りたいし、送られたい。渡辺美里のLINEスタンプができたら、一番人気はきっと、「やるじゃん」スタンプ。欲しい!でも「Go ahead!」も捨てがたい!

3. 「一瞬の夏」
作詞/渡辺美里 作曲/伊秩弘将 編曲/清水信之
渡辺美里の夏うたは数多くある中でも、一服の清涼剤のような、涼しい木陰のような歌です。清水信之のシンセプログラムがとても心地よくて、いい意味での透明感に溢れます。清水信之が手掛けた中でも前作「ribbon」の「Tokyo calling」とは全く異なる、とても優しい気持ちになれる一曲です。

4. 「跳べ模型ヒコーキ」
作詞/渡辺美里 作曲/岡村靖幸 編曲/清水信之
岡村靖幸作曲は本作で2曲のみ(本人が「だいすき」のスマッシュヒットで人気とともに忙しくなった?)大名曲です。2人の恋はうまくいかなかった(飛ばなかった)けれど、今でもきみが好きなのです、という切ない想い。「一瞬の夏」からそのまま続くラブレターのような物語です。

5. 「ムーンライトダンス」
作詞/渡辺美里 作曲/小室哲哉 編曲/小室哲哉
僕が渡辺美里の歌っている姿を初めて見たのがこの曲です。TM NETWORKが「夜のヒットスタジオ」という歌番組に出演するので見ていると、渡辺美里がいました。小室哲哉プロデュースの「ムーンライトダンス」を歌うと。しかも小室哲哉がキーボードを弾くと。当時の正直な感想は「何だか辛そうだな」です。約30年後、いろいろ調べると放送機材トラブルがあったと!メロディーとベース音がズレてしまう!なんと!そのようなトラブルの中でもきっちり歌い上げる、日本のうたうたい渡辺美里。すごいです。
※映像を見ると、小室哲哉がキーボード片手にスタッフに手でバツ印を作って、何かを必死にアピールしている様が見えます。当時は全く気づきませんでした。
よくよく歌詞を眺めるととてもとても素敵な歌です。前作「ribbon」に収録された「悲しいね」の物語の続編のようにも思えます。「あの夏の日の輝きはどこへ行ってしまったの 全てが美しく燃えて やさしい風に抱かれた」
誰もが思春期にきっと経験する「あのキラキラした瞬間」です。小説でも映画でも題材としてあがるけど、ピンとくるものに巡り合うのは稀だと思います。ムーンライトダンスは文句なしストライク判定です。

6. 「彼女が髪を切った理由」
作詞/渡辺美里 作曲/佐橋佳幸 編曲/清水信之
ラジオで「これはね、失恋した友達のことを曲にしたの」と語っていました。「NEWS」同様、コンセプトアルバムらしい、歌詞も含めてハイレベルな完成度の高いポップスです。

7. 「パイナップルロマンス」
作詞/渡辺美里 作曲/佐橋佳幸 編曲/佐橋佳幸
僕が渡辺美里のファンになった、青春を全部持っていかれた、うたうたいの魂の1曲。いわゆる伝説の1989年、雨の西武球場ライブ。
1989年12月31日、北海道で開局間もないTVH放送(テレビ東京系)が紅白歌合戦の裏でいろいろなアーティストのライブ映像を流す、という番組を放送していました。
中学1年生だった僕は年末年始を過ごすために祖父母の家へ。もちろん居間では紅白歌合戦。興味のなかった僕は2階の別テレビでチャンネルをTVHへ。TM NETWORKを目当てで見ておりました。
そこで流れたのが「パイナップルロマンス」。大雨の西武球場で激しく歌う渡辺美里がいました。鳥肌たちっぱなし。もう完全に虜です。
「UCC缶コーヒーのCMの人だよね?夜ヒットでムーンライトダンスの人だよね?えっ???マジ???全然ちがうじゃん。。。えっ???えっ???」
です。
「すごい大人がいる。」と思いました。
渡辺美里に女性を感じたことはなく、男女を超越したような存在として、すごい大人がいる。当時直感的にそう思いましたし、今でもそうです。
映像は曲のラスト「パ・イ・ナ・ツ・プ・ル!」で終わったので、その時はライブの詳細はわかりませんでしたが、後々お小遣いをためてライブビデオを購入し、さらに涙のドラマがありました。
ドラムとベースに「TOTO」のポーカロ兄弟を迎えるという超豪華レコーディング。ジェフ・ポーカロに「みさと、この歌はどんな内容なんだい」と聞かれ、「不思議な世界、トワイライトな世界」って答えたの、とラジオで語っていました。渡辺美里、佐橋佳幸、清水信之の同窓トリオでTOTOとセッション。武者修行のようであります。
毎週土曜日に放送していたレギュラーラジオ番組「虹をみたかい」で月に1度、洋楽特集をやろうとなったときの1回目は「TOTO」でした。それを聴いてレコード屋さんに「TOTO」のCDを買いに行った思い出があります。

8. 「グッドバイ」
作詞/渡辺美里 作曲/伊秩弘将 編曲/清水信之
おそらく本アルバムで最もビッグネーム、スティーブ・フェローンがドラムで参加。彼の参加作品を見ると大御所ばかりが並びます。
刹那的な16、17歳をうたいます。それもまた思春期当時は激しく共感しておりました。

9. 「冷たいミルク」
作詞/渡辺美里 作曲/岡村靖幸 編曲/清水信之
「HELLO LOVERS 2」が制作されるなら是非入れて頂きたい楽曲。岡村靖幸の天才的なメロディーをきっちり歌い、最高の1曲に。個人的には渡辺美里×岡村靖幸で最も好きな歌です。レコーディングの際、大御所ミュージシャンに臆することなく、23歳の女の子は存在感をがっちりと残し、この曲をブルースの領域までもっていきます。

10. 「White Days」
作詞/渡辺美里 作曲/伊秩弘将 編曲/清水信之
かなり洋楽寄りの1曲です。ゴスペルを思わせる歌詞とサウンド。「絶望したことありますか」と真っ暗な状態から始まり、徐々に神様への嘆きへと加速していく。ソウルフルなボーカルは完全に前作から一皮むけた力強さと、全てを包み込むような魅力が溢れます。

11. 「すき」
作詞/渡辺美里 作曲/大江千里 編曲/有賀啓雄
THE名曲です。シンプルなタイトルが素敵です。ちょっとした田舎駅の情景が浮かび上がり、里帰りするような歌。
「いつからかこの街で迷っていたよ 無口な激しさのぶんだけ」と恋愛ソング(?)の中でもちょっとしたスパイスを入れるあたり、作詞家として物凄い熟考を感じます。前記した西武球場ライブで大雨の中、「二週間雨が降ってない」と歌う姿は、切なすぎる隠れた名シーン。
都会とは相反する風景の本作は、次回作アルバム「Tokyo」へとつながる大事な立ち位置なのかもしれません。


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