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【読書ノート】カリブ海の秘密 by アガサ・クリスティー
アガサ・クリスティーの解説本(クリスティを読む!by大矢博子)に触発され、クリスティーの本を図書館で何冊か借り込んで、読んでいます。
この「カリブ海の秘密」は、ミス・マープルシリーズの最後のほうの作品で、特徴的な点はミス・マープルが西インド諸島へバカンス(という名前の療養)へ行き、その宿泊先で起こる殺人事件を解決していくところ。いつもは地元のセント・メアリ・ミード村(もしくは近郊の町や市街など)の中で巻き起こる騒動が中心なので、舞台が遠い海外のリゾート地というのが珍しいのです。
そして、この本ではミス・マープルに相棒が出来るんです。その相棒ことラフィール氏は、大富豪で半身不随で「皺くちゃの猛禽類のような顔をしている」じいさん。金持ちで高い地位もあり、人を顎で使い、言葉も悪くて癇癪持ち。少し離れた場所にいるミス・パープルに「おい!そこの人!」なんて呼んだりして、めちゃ感じ悪いジジイです笑
普通に過ごしていたら絶対に仲良くなったりはしない2人が、リゾートに似合わない連続殺人事件が起ることで、解決に向けて段々相手の資質を見出し、協力し合うようになります。
その2人の絡みがある箇所が良い!楽しいバディ小説を読んでいるようなんです。
ラフィール氏は、最初はただのいけすかない金持ちのジジイだったのが、ミス・マープルと心を交わしていくうちに、段々人間味が出てくる。
好きな場面のひとつ。夜中に非常事態が起こり、ミス・マープルがラフィール氏のバンガローに入って(鍵はかかってないの?)、いびきをかいてぐっすり眠っているラフィール氏を叩き起して熱弁します。
犯人がわかった!これからまだ殺人が行われるかもしれない。だからあなたのヘルプが必要なの!
今までぐっすり眠ってたラフィール氏からしたら、「はぁ?!」的な状況です笑
ラフィール氏の返事を以下に抜粋します。
「そんなふうに話すのは勝手だがね。あんたはいま"わたしたち"といったな?このわしにいったい何ができると思う?わしは助けなしでは歩くこともできないんだぞ。あんたとわしとでどうやって殺人を防ぎとめようというんだ?あんたはよぼよぼばあさんだし、わしは廃人同様だよ」
ミス・マープルのことを「よぼよぼばあさん」とか言ってめちゃ失礼なのですが、2人はすでに信頼できる相棒みたいな感じになっているので、ラフィール氏が何を言っても、もう感じ悪くは聞こえないのですね〜これが。2人の掛け合いが楽しくて、もう読んでて笑っちゃうこと間違いなし。
この2人の心の交流がこの本の一番の醍醐味かなと思います。巻末の解説によると、ミス・マープルはこの本の時点では少なくとも78歳になっているとのこと。だとするとラフィール氏は80代かな。
最後の空港でのお別れの場面。ラフィール氏が最後に一言だけミス・マープルにラテン語の言葉を送ります。ミス・マープルが「ラテン語はあまりわからない」と言い、ラフィール氏が「いや、君はわかってるはずだ」的なことを言います。
私の感想。うわー、ラフィール氏、格好良すぎん?
このような、教養が求められる大人の会話、好きです。一瞬、ラテン語勉強しよっか?と思いましたもん笑
バディ小説が好きな方には特におすすめかな。読んでてちょっと元気になれます。
秋の夜長にクリスティ、おすすめです。