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【読書ノート】マリアビートル by 伊坂幸太郎

前回「777(トリプルセブン)」を読んだ際に、その前作である「マリアビートル」を再読しておけば良かった〜と思ったので、反省も兼ね、もう一度読んでみましたよ。

割と軽めに読める「777」と比べると前作である「マリアビートル」のほうが少し重めでした。何故なら、そうとうに悪質な悪意のある人間が登場するので、途中で嫌〜な気持ちになってくるのです。しかもその人物は中学生だったりして。ちなみに、その嫌なヤツの名前(苗字)は王子(おうじ)笑

タイトル「マリアビートル」は(てんとう虫🐞)を意味しています。英語でてんとう虫はlady beetle (またはlady bug)だそうで、そのladyというのはマリア様を表しているとのことです。

この本は、てんとう虫というコードネームを持つ殺し屋の七尾が主人公です。次作の「777」同様、数多くの殺し屋が登場します(作中では、"業者"と呼ばれる)。蜜柑(みかん)、檸檬(レモン)、狼、あさがお、スズメバチ、など。物語の終盤では、あらアナタも業者だったの?なんていうサプライズもあります。

物語の概要は、一言で言うと、東京発盛岡着の東北新幹線「はやて」の中で起こる、業者と呼ばれる殺し屋たちの戦い。それぞれ別々のミッションを持つ殺し屋たちが、新幹線の中で他の業者たちの存在や思惑に気づき、右往左往。カオスな現場はどのような結末に着地するのか?!

伊坂幸太郎の物語は、登場人物のセリフややりとりにユーモアがあって面白いのですが、私が今回すごい好きかもと思った人物はレモンです。レモンとみかんの殺し屋コンビはとても能力が高い業者として業界で一目置かれています。みかんは細かいところまでキチンとしたいタイプ。レモンは仕事はできるが、全体的に大雑把で、失敗しても認めない面倒くさいタイプ。レモンは多分友達もいなくて、唯一の趣味は「機関車トーマス」のアニメで、トーマスの全機関車の名前と性格をそらで言うことができ、なにかにつけて、「おまえはパーシーみたいな奴だ」とか、「トーマスを見習え」とか言ってます。

実際の生活でレモンみたいな人が友達だったり家族だったりしたら、恐ろしく面倒くさいと思うのですが、それでもレモンが気に入りました。みかんとのやりとりもいちいち面白くて、和みました。なんだか喧嘩腰のやりとりも多いのですが、2人の絆や信頼関係が深いことが段々見えてきて、終盤でぐっとくる場面がありました。

みかんとレモンの章は「果物」笑
こういうユーモア好き

レモン🍋って果物だっけ?と思い調べたら、果物でした。そっか。でもこの殺し屋の檸檬だったら、「レモンは果物じゃねぇよ。だって酸っぱいだろ」とか言いそう笑

また、主人公のてんとう虫は、お人よしで良い人(殺し屋だけど笑)で憎めないですね。「777」でも相当不運に見舞われて可哀想なシーンが沢山ありましたが、「マリアビートル」でも、もれなく不運続きで笑ってしまいます。彼のミッションは、「東京駅で新幹線に乗り込み、小さめの黒いトランクを盗み、上野駅で下車すること」。

無事にスーツケースを確保できたのに、これでもかと邪魔が入り、もちろん上野駅では下車できないばかりか、大宮でも仙台でも下車を阻まれ、一ノ関でも水沢江刺でも車中に留まる。

最終駅の盛岡で果たしててんとう虫は下車できるのか?!ミッションはクリアできたのか??
気になる方は、是非お手にとって見て下さい。

Wikipediaの英語版には、「ブラックユーモアスリラー」と紹介されていましたが、日本人の感覚からすると、どちらかと言えば「コメディアクション」に近いかな。しかもちょっとファンタジー系?

新幹線の中(とプラットフォーム)だけで完結する物語。夏休みの読書や旅のお供に良いかもしれません。







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