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【読書ノート】グラスホッパー by 伊坂幸太郎

伊坂幸太郎の「777(トリプルセブン)」を読んだ後に、その前作の「マリアビートル」を再読したら面白さが倍になったので、またその前の作品「グラスホッパー」を読んでみました。こちらも再読です。

確か以前「グラスホッパー」を読んだのは10年程前だったような。その時期は、続けて伊坂さんの本を読み漁りハマった時期なのですが、10年経つと、結構内容を忘れてますね。

「グラスホッパー」の主人公の鈴木は元数学教師で、妻を事故で亡くしています。事故といっても、裏社会に属する組織のボンボンの危険運転に巻き込まれ亡くなっており、鈴木は妻の仇をうつ為に教師を辞め、その闇の組織にアルバイトとして潜入します。

どう見ても悪いことができなさそうな鈴木はやっぱり身バレしてしまいそうになるのですが、その矢先、妻の仇である男が車で轢き殺されてしまいます。実は、それは「押し屋」(歩道などで対象人物を押して、車に轢かせるわざ技を持つ殺し屋)の仕業で、ひょんなことから、鈴木は「あさがお」という名前を持つ押し屋を追いかけることになり、その最中に何人もの殺し屋や業者に遭遇し、揉め事に巻き込まれつつ物語は進んでいきます。

この本にも様々な殺し屋が登場します。くじら、あさがお、せみ、など。ここでは敢えてひらがなで記載していますが、本の中では漢字表記です。くじらは、人を自殺させる殺し屋で、せみは依頼されたら誰でも何人でも殺すナイフの使い手で、あさがおは、「伝説の押し屋」(今までは、対象を押して車に轢かせる殺し屋がいるらしい、と業界では都市伝説化していたのが、「押し屋はやはり存在した!」と今回バレるわけですね)。

小説「マリアビートル」が「動」なら、小説「グラスホッパー」は「静」だなと感じました。
殺し屋や業者がたくさん登場し、殺人、拉致、監禁など物騒なことがどんどん起こりますが、それでも静かな雰囲気を持つ小説です。

静かで少し閉塞感があって、、、これは鈴木の心の温度というか心持ちが小説の空気感になっている感じです。

この次の作品「マリアビートル」には脇役として鈴木が登場します。そちらでは鈴木が喋る場面が少ないので、正体がミステリアスな感じで描かれていますが、まず「グラスホッパー」を読んでから「マリアビートル」を読めば、鈴木の登場に嬉しくなると思います。

シリーズ物は、やはり順番通りに読むと物語に物語が重なって面白さが桁違いになることが多いので、最初から一巻ずつ読むのは大事だなと再確認しました。でも、今回読んだように、最新刊を読んで気に入って→前作を読む(再読)→気に入ったので、そのまた前作を読む(再読)という読書の流れでもすごく楽しめました。

これはまさにあれですね。最初に結末が提示されて、少しずつ場面が巻き戻されて段々全容が明らかになる、っていう技巧を用いた小説とか映画がありますよね。ぱっと思い出せるのはジェフリー・ディーバーの「オクトーバー・リスト」とか。それと同じような面白さ。

まとめ。読んで気に入った小説がシリーズ物だったら、ひとつずつ遡るか、もしくは第一弾からひとつずつ読んでいくか、どちらかで読んでみること。面白さの爆発が体験出来ます(*個人調べ)。

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