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主催と登壇を200回、のべ8千人と出会い見つけた「場づくりのコペルニクス的転回」/テラロック主宰・寺西康博
ついに見つけてしまいました…。
ずっと探し求めていた「見えていなかった世界に気づく場」のつくりかたを。
この発見に至るまでの9年間、紆余曲折ありました。そもそも、「なぜ場づくりをやってきたのか」を私自身が正確に理解するには、「テラロック」を含めたこれまでの歩みを振り返る必要がありました。
自分が何を知っているのかを知り、自分が何を知らないのかを知っていないということを知ること。それこそが真の知識です。
「地動説」を説いたポーランド出身の天文学者
▽「かけ離れた人」に気づかされたこと
2014年、本省出向時代に投げかけられた次の言葉が、私の生き方を大きく変化させました。
・都内の児童養護施設を訪れたとき、少年たちの世話をする夫婦が語った「生まれながらに不良行為をする子どもはいない。すべては環境がつくる」
・家に居場所がなく、外の世界で懸命に生きる若者が吐露した「誰も自分を見ていなかった。周囲に必要とされていないことが辛かった」
これらの言葉から、私はこれまで「自分にとって居心地が良い世界」しか見てこなかったことに気づかされました。ごく自然に、多くの人や事象を自分の思考の外に置いていたのです。
「このままの生き方ではダメだ」と強く思い地元の香川県に戻ったものの、何をすれば良いのか見当がつきません。
思いめぐらすと、私の心に火を灯してくれた先述の夫婦や若者は、私と価値観や見えている世界がかけ離れた人でした。
しかし、職場と自宅を往復する生活の中で、そのような人と出会い語らうことはめったにありません。
「組織の外に出なくては」おぼろげながら自分が何をすべきか見えたように感じました。
地元に戻った2015年が、「地方創生元年」と位置づけられた年だったことは思いがけない幸運でした。
職場で、地方創生を支援する若手職員のプロジェクトチームが立ち上がり、そのリーダーになったのです。
プロジェクトチームの活動で、地方自治体の若手職員と対話を重ねました。そして「他の自治体と横のつながりがない」「本音で未来を議論できる場がない」という共通の課題が浮かび上がりました。
「半歩でも良い。今できることをやってみよう」と、2016年12月に若手公務員60名を集めたフォーラムを開催しました。
場の価値に手ごたえがあった一方で、公務員だけでつながることに少しの違和感がありました。
今にして思えば、自分がやりたい「価値観がかけ離れた人たちがつながる場ではないのでは」と疑問を感じていたのかもしれません。
▽何ももたない、できない自分と向き合う
このとき、組織内の仕事と人間関係ばかりに注力してきた30歳の公務員。公務員以外の人とのつながりは数えられるほどしかありません。
せめて仕事で関わる外部組織の人たちの役に立とうと必死になって自分にできることを探しました。
しかし、「自分は何ももっていないから、どうせできることはない」とやるせない気持ちにもなりました。結果、負の感情から目をそむけ組織内のことばかりを考えていました。
2017年の夏、ふと「多様な人と関わるには、同じ目標を共有するプロジェクトをつくれば良いのでは」と思い立ちました。
とはいえ、事業立案経験の乏しい自分に何ができるのか。もんもんとした日々を過ごす中で、内閣府が開催する「地方創生☆政策アイデアコンテスト」のことを知りました。
「これに取り組むことで道が拓けるかもしれない」。そう思い、「コンテストに挑むべき理由」をまとめた大学生向けの資料を作成し、香川大学に持ち込みました。
学生に向かって「君たちは日本一になるんだ!日本一になりたい人は、後から連絡してくれ!」と血走った目でまくしたてました。
誰からも連絡がなく一週間が経ちました。「ダメか…」とあきらめかけたとき、4人の学生が「一緒にやりたい」と連絡をくれたのです。
それからプロジェクトチームの熱意ある若手職員たちと、業務後や休日などプライベートの時間を使い、学生とプランを練り上げました。
2017年12月、東京大学で開催された最終審査会で香川大学生が発表した政策プランが全国からの応募647件の頂点に輝きました。
受賞後、笠井雅貴さんの尽力により事業実現に向けたシンポジウムを開催すると、地元企業の経営者がプランに共感し、保有する空き家を提供してくれることに。空き家のリノベーションを学生が手伝い、民泊物件として営業が開始されました。
そのとき、「必要なものは肩書やスキルではなく、情熱だ」と気がつきました。
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▽自分にしかつくれない場を探して
そして、2018年2月25日に多様な登壇者を招いて開催した第2回若手公務員向けフォーラムが、私にとって場づくりの原点となりました。
会の冒頭、休日に集まった170名の参加者に向かって、私は「意識が変わり、行動が変わる場にしたい」とスピーチしました。
ありきたりの言葉ですが、6年経った今でも、何人かから「あのフォーラムが自分の人生の転機になった」と言われます。
その一人、山形県西川町の町長になった菅野大志さんは、登壇者の脇雅昭さん(よんなな会主宰)の言葉に感化されたと言います。
菅野さんをはじめ「あの日が人生の転機になった」と自認する当時の参加者たちが、毎年2月25日を「第二の誕生日」と銘打ち、つい先日は6回目の「第二の誕生日」を祝いました。
私にとって原点であり、「場」がもつ力を信じる理由にもなっています。
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2018年12月、新たなチームを組み、ふたたびのぞんだ「地方創生☆政策アイデアコンテスト2018」で応募総数604件のうち第1位となりました。
前年のプロジェクトと比較して、産学官金のより多様な主体を巻き込み、プロジェクトを進めました。
構想を描き、それに共感するメンバーでチームを作り、情熱をもってプロジェクトを進める。自分にできることがやっと見つかった気がしました。
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このような組織での活動が40回以上報道され、のべ3千人への講演などを通して、少しずつ組織外の交友関係が広がっていきました。
立場や感性が離れた人たちと対話をすることで、世界と自分をより豊かに多面的に眺められるようになりました。
いつしか「自分にしかつくれない、異質な人たちと対話や交流する場をつくりたい」と思うようになりました。
組織では通常「再現性」と「引き継ぎ」が求められます。しかし、個の圧倒的なエネルギーにより生み出された空間やプロジェクトには再現性がないように感じていました。そのような混沌として再現性がない場に心ひかれました。
▽肩書を脱ぐ恐怖の先に
「組織ではなく個人として、やりたいことを追求しよう」と考えたものの、個人で活動することへのためらいがありました。
これまで組織で積み上げてきた信用を失う不安。周囲から冷笑や揶揄(やゆ)されることも容易に想像できました。
周りからすれば大したことのない一歩でも、公務員の肩書でのみ活動していた私にとっては「傷つくリスクがあったとしても、勇気をもって一歩を踏み出すしかない」と自らを奮い立たせなければできない決断でした。
敬愛する二人、真鍋康正さんと浜谷栄彦さんの協力を得て、2019年7月に「オープンイノベーション地域交流会」を高松市で開催しました。
集まった80名に冒頭から私が「主体性ある個人が価値観や感性をぶつけ合い、認識のリフレームが起こる場」などと早口で熱く語っていたところ、真鍋さんは「ちょっとよくわからない。寺西くんがやろうとしていることはロックなのだから、会の名前も寺西ロックフェスティバル、『テラロック』でいいんじゃない」と提案してくれました。
肩書を脱いで飛び込んだ先に「テラロック」という新たな居場所が見つかりました。
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定員40名で参加者80名。定員とは…
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そこから、まちづくり、働き方、観光、金融、挑戦などのテーマを設け、毎回、予定調和なしの熱い議論が交わされてきました。香川県内でこれまで12回開催し、750人が参加しました。
会に参加した大学生から「どう生きていくか考えるようになり、希望の職業が変わった」と連絡がありました。
参加して価値観が変わったと言われることがあり、手ごたえを感じていました。
派生イベントやコラボイベントを次々と開催し、のべ2千人以上と向き合ってきました。
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勇気をもって一歩を踏み出した先には、全く想像していなかった世界がありました。
共同通信社、時事通信社の記事にはじまり、KSB瀬戸内海放送、読売新聞、日本経済新聞、朝日新聞などが「テラロック」の活動を報じてくれました。
そして、私の座右の書である橋本卓典さん著「捨てられる銀行」シリーズ(講談社現代新書)第4弾に活動が紹介されたのです。
その後も、「先端教育」や「無花果」など多様な媒体に掲載されたことで「テラロック」の認知度が徐々に高まっていきました。
なにより、無償の運営メンバーとの出会いは何ものにも代え難いものでした。
また、会の価値を初期から高く評価してくれた山田邦明さんと藤田圭一郎さんとは何度も一緒に場をつくりました。
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テラロックTシャツは村上モリローさんがつくってくれました。そして、上村一郎さん(東かがわ市長)の元でいま働いています。
テラロックを通して豊かな人間関係が生まれたのです。
▽場づくりへのエネルギー減少の正体
2020年4月から6月に週一回、「KSBスーパーJ チャンネル」のニュースコメンテーターを経験。地元情報誌「ナイスタウン」では、まちづくりを考える連載を19回続けました。
NHK高松放送局の新たな取り組み「CO-LIVE」に1年間参加し、特別番組が放送されました。誰もが楽しめるツアーの組成にも関わるなど、何かにせき立てられるように地域活動にのめり込んでいきました。
いつしか「公務員ができることの枠を、自分が拡張させなければならない」と謎の使命感をもち活動するようになっていました。
テラロックでやりたいことは、ロックンロール。私は「熱狂と揺さぶる」ことだと解釈しています。
熱狂をつくりだし固定観念を揺さぶる。「見えていなかった世界に気づく場を提供したい」と考え行動してきました。
その先に、他者に優しい社会があると信じているからです。
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「場」の主催、登壇をがむしゃらに繰り返して200回、のべ8千人と出会いました。ふと我にかえったとき、場づくりに対する自分のエネルギーの総量が減っていることに気がつきました。
エネルギー減少の正体がわかったのは、1月に講義を担当した人材育成プログラムの場でした。
あまり深く考えずに新たな形式に挑戦してみようと、講演の後、私がモデレーターとなり受講生全員がリレー型で登壇するトークセッションを実施しました。
急な登壇に困惑する受講生。緊張が押しよせるなか、他者に何かを語るため自己の内面と必死に向き合う。
しぼり出した言葉で、自分が気づいていなかった感情に出会う。ある女性は「今まで模索してもわからなかった、自分が求めていることを見つけた」と語りました。
個々の内面の変化そして熱を帯びた言葉は、他者の感情を揺さぶり熱量は伝播します。
気がつけば変化がまた別の変化を引き起こし、時間あたりの変化率はこれまで感じたことのない総量に達しました。
私は気持ちの高揚を抑えられませんでした。
「これって、私が追い求めていた、見えていなかった世界に気づく場じゃないか」
この変化率は、登壇者と聴講者の境界をなくしたことで生まれました。テラロックで「固定観念を揺さぶる」と言いながら、私自身が、登壇者と聴講者の役割を固定化させていたのです。
そのことを認識できないまま会を重ねることで積み上がった違和感こそが、エネルギー減少の正体でした。
▽一緒に「見えていなかった世界に気づく場」をつくりたい
ついに「見えていなかった世界に気づく場」のつくりかたを見つけたのです。これからはとことん実践していきたいと思っています。
先日は、高知県内の自治体職員向け研修で、受講生らによるトークセッションを取り入れました。
トークセッションというアウトプットに向け、講演から何かを得ようと集中している姿が印象的でした。
恥ずかしげもなく「私にしかできないことがあるかも」と思っています。
これまでたくさんの人から機会をもらえたことで、私自身が多くのコミュニティーにとって「異質」で「価値観が離れた存在」になり得るかもしれません。
また、谷益美さんらに場づくりを学び、数多くの場でモデレーターをしてきた経験から、場の熱量を高める「熱量モデレート」ともいうべき(謎)スタイルを確立しました。
今後は、自ら会を主催するだけではなく、様々なコミュニティーに出かけていき、一緒に「見えていなかった世界に気づく場」をつくりたいです。
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