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FOMC据え置きで、ドル全面高から円安相場への移行が始まる!

11/1のFOMC会合において、2会合連続で政策金利の据え置きが決定されたことで、米国の利上げ終了が近づいたとの見方が強まり、ドル全面高相場にも変化の兆しが見られる。今後の為替相場動向を探った。


1.米国経済動向

米国の第3四半期(7-9月)GDP成長率は前期比年率4.9%と、市場予想(4.3%)を上回る高成長を記録した一方、物価動向に関しては、インフレ率低下の方向が継続している。パウエル議長は、今後のインフレへの警戒を緩めない姿勢を示しつつも、労働市場の需給緩和や平均時給の鎮静化を認めている。その結果、今まで一本調子に上昇を続けてきたドル相場にも変化の兆しが見られる。

2.ドル全面高から、メキシコペソ・南アフリカランド高円安相場への移行

米国の長期金利上昇に歯止めがかかることで、米国を上回る高金利国で、経済ファンダメンタルズの良好な国の通貨が反転上昇する動きが見られる。特に、政策金利が11.25%でインフレ率が依然中銀目標の4%を上回っているメキシコペソは、高い実質金利を背景に今週に入り、反転上昇に転じている。また、政策金利が8.25%で金相場との相関の高い南アフリカランドも今週に入り、大きく反転上昇の動きを見せている。
もちろん、米国の政策金利引き上げが終了しても、インフレ率が政策目標の2%を上回り、好調な雇用環境や高いGDP成長率に鑑みるに、利下げ局面入りは全く見通せない状況にある。一方、米国とは異なり実質金利がまだマイナスのユーロや経済ファンダメンタルズが米国ほど堅固ではない多くの新興国通貨は、まだ下落リスクを抱えており、全面的なドル高相場が終了しても、ドル安相場に移行するわけではないことには留意したい。特に、依然、大規模金融緩和を続け、金融正常化への道筋が見えない日本円は対ドルで上昇トレンド入りすることは見通せず、当面、緩やかな円安トレンドが継続するものと予想する。

3.メキシコペソ円相場と南アフリカランド円相場の行方

メキシコペソ円は、図表1の通り、今年の7月以降、もみ合い相場を続けてきたが、今週に入り、底打ちの兆しが見られる。当面、今年8月に付けた8円80銭レベルを目指して上昇トレンドに入るものと予想する。金産出国である南アフリカでは、10/7のパレスチナ紛争勃発以降、地政学リスクの高まりを受け、金相場上昇の恩恵を受けており、南アフリカランドも図表2の通り、対円で大きく上昇傾向に入っている。今後は、昨年の高値8円80銭に向けて上昇傾向を辿ることが想定される。

(図表1 メキシコペソ円チャート 右軸:単位 円 Trading Viewからの引用)
(図表2 南アフリカランド円推移チャート 右軸:単位 円 Trading Viewからの引用)

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20231102執筆 チーフストラテジスト 林 哲久


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