見出し画像

内憂外患の日経平均株価!

1/24、日本銀行(日銀)が、半年ぶりに政策金利を引き上げた。更に、1/27、米国のナスダック市場が急落すると、日経平均株価も、1/28、一時39,000円台割れまで急落となった。内憂外患の日経平均株価の現状と今後を占った。


1.開き直る植田日銀総裁

植田総裁は、政策変更後の記者会見において、「政策変更は、景気動向は考慮せず、物価動向に基づいて判断する」と発言した。これは、利上げにより、景気が失速し、日経平均株価が急落しても、日銀は関知せず、政府の責任であると言っているのと等しい。一方の石破政権は、税収増の国民への還元に後ろ向きであるため、当面個人消費が上向くことは望み薄である。その一方、吉野屋など大手外食チェーンは、今年の出店計画を、賃料上昇・物価高・人件費増・人手不足を理由に軒並み半減させると発表している。日本経済は、当面、需要と供給両面でボトルネック状態に陥り、景気下振れが懸念される状況にある。

2.トランプ関税+DeepSeekショック

2/1からメキシコ・カナダへの25%関税が発動される公算が大きくなっている。メキシコ・カナダで生産した自動車を米国へ多く輸出する、日系自動車メーカーの業績への悪影響が懸念される。加えて、中国のAIモデルDeepSeekが全米で人気を博しているとの報道から、米国における巨額なAI投資バブルが破裂するのではないかとの懸念が広がり、ナスダック指数は1/27、3%以上急落した。先週米国での巨額AI投資を発表したソフトバンク・グループの株価も1/28急反落となっている。米中対立の激化による対中半導体輸出規制の強化が、日本の半導体企業の対中輸出にも悪影響を及ぼしており、世界的なサプライチェーンの分断や保護主義化の流れが、これまでグローバル化の進展の恩恵を受けてきた、日本の輸出企業にダメージを与え始めており、円安にもかかわらず輸出数量が伸びない状況が続いている。

3.耐性を増す日本企業

日本企業の内部留保は、600兆円を超え、過去30年で4倍以上に増加したことで、日銀の利上げに対する耐性が増し、0.25%の利上げによる企業収益の下振れ効果は、0.7%減に留まる。設備投資の減少に対する悪影響も、30年前より半減している。長く続いたゼロ金利政策が、企業の新陳代謝や債務リストラを遅らせてきた弊害もあり、今後インフレの時代が定着することで、企業の競争力強化への取り組みを本格化させる効果も期待できる。

4.日本の個人投資家に見向きもされない日本株

昨年、日経平均株価は、史上最高値の42,000円台を付けたが、個人投資家は全体として売り越しとなっている。買い越しは、事業法人の自社株買いのみという寂しい状態となっている。特に、昨年7月の日銀の利上げ後の日経平均大暴落のトラウマから、個人投資家の日本株に対する投信マインドは冷え込んでいる。日本経済の下支えに消極的な日銀の金融引き締め政策と、減税に後ろ向きな石破政権の財政緊縮政策が存続する間は、企業の自助努力だけでは投資家の日本株への投資マインドを喚起することは難しい。
トランプ政権による自国第一主義は、他国に課す関税の原資を国民に還元しつつ、原油増産によりインフレ率を低下させることで、FRB(連邦準備制度理事会)に利下げを促す、国民生活に寄り添った政策である。これとは、明らかに真逆な政策が日本で採られる限り、日本株が米国株に劣後する状況が長期化しよう。

⦅図表 日経平均株価週次推移チャート(ローソク足) 右軸:単位 円 S&P500指数 週次推移チャート(折れ線) ⦆

情報は、X(旧Twitter)にて公開中

前回の記事はこちら

2025年1月28日執筆 チーフストラテジスト 林 哲久





いいなと思ったら応援しよう!