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エブリシングラリーの終わり?!

8/5日経平均株価は、一日で4,451円下げ、1987年のブラックマンデーを上回る史上最大の下げ幅を記録した。きっかけは、日本銀行(以下、日銀)の突然のタカ派転換による金融引き締め観測である。これが円高・株安の共振相場をもたらし、最終的には、リスク資産全般の利益確定売りを誘発、米国株式、商品市況、暗号資産などあらゆる金融資産が下落するリスクオフ相場となった。エブリシングラリー終了後、上昇基調を回復しやすい資産、しにくい資産を解説した。


1.植田総裁の豹変が円高・株安を加速

7/31の植田総裁の豹変が、今まで金融緩和政策の長期化を見込んだ円キャリー取引や株買い取引を積み上げてきた市場参加者の市場心理に冷や水を浴びせ、円買戻し、日本株売りを加速させた。更に、予想以上の7月米雇用統計の鈍化が米株売りを誘発し、8/5の日経平均株価の暴落に繋がった。

2.商品市況や暗号資産にも利益確定売りが波及

米国の利下げ観測の台頭は、金などの金利を生まない資産にはプラス要因となり、リスク選好の高まりはビットコインなどの暗号資産を押し上げる効果を持つ。しかし世界的な株式市場の急落や円キャリー取引の巻き戻しが起こると、含み益が存在する資産への利益確定売りが広がるリスクオフ相場が発生することがある。今回は、すべての金融資産が調整売りを受ける展開となり、春先からのエブリシングラリー相場はいったん終了することとなった。

3.セリングクライマックスを迎えた日経平均株価

8/5日経平均株価は、図表1の通り、31,458円まで下落し年初からの上げをすべて吐き出す急落となった。日銀のスタンス変更により市場心理が急激に悪化したことが原因である。しかし、7月の高値から10,000円以上下落したことで、8/5の下げがセリングクライマックスであった公算が大きい。その一方で、今回のパニック売りを起こした日銀の金融政策が再転換しない限り、日経平均株価は、簡単には上昇基調に回帰しにくく、もみ合い相場に入るものと予想する。

(図表1 日経平均株価週次推移チャート 右軸:単位 円 Trading View提供のチャート)

4.今後回復しやすい金融資産とは

米国の雇用鈍化は、ハリケーンの影響による一時的な鈍化との見方もあり、9月発表の雇用統計次第では、現在の行き過ぎた利下げ観測が修正される可能性がある。その結果、米国長期金利が4%台を回復することは十分に考えられる。一方、日本の長期金利については、日銀による国債買い入れ減額幅が市場予想を大幅に下回る4,000億円に留まったことや、今月の日経平均株価の急落による市場心理の悪化を受けて、当面、1%を回復することは難しい状況にある。
今後日本経済がデフレモードに戻ってしまえば、日本の内需企業は、益々成長先を海外に求めるグローバル化の動きを加速させることになり、対外直接投資を活発化させることで、ドル円相場を下支えることになろう。図表2の通り、一時的に141円台まで急落したドル円相場は、8/6には146円近辺まで急反騰している。
また、一時的に下落した金に関しても、中東情勢の緊迫化など地政学リスクの高まりを背景とした質への逃避が継続することを考慮に入れると、調整一巡後は、上昇トレンドに回帰する可能性が高い。このように今回のリスクオフ相場が一巡した後は、本来のファンダメンタルズや需給を反映した動きに戻る傾向が強く、金買い円売りのクロストレードは上昇トレンドに回帰するものと予想する。

(図表2 ドル円日次推移チャート 右軸:単位 円 Trading View提供のチャート)

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20240806執筆 チーフストラテジスト 林 哲久




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